エイベックスが転換期を迎えています。
2018年に看板アーティストである安室奈美恵が引退。2020年にAAA(トリプル・エー)も活動を休止しました。2022年には、会えるARアーティストとして女性に人気だったARPも活動休止を宣言しています。
K-POPの盛り上がりやAdoなどの歌い手が活動の場を広げるなど、ミュージックシーンは様変わりしました。エイベックスは時代に適した新人の発掘と育成を強化。XGという強力なグループを世に送り出すことに成功しています。
大型イベントがない今期は減収で着地か?
エイベックスは安室奈美恵が引退する直前である、2018年3月期の売上高が1633億円でした。AAAが活動を休止し、さらにコロナ禍でライブ活動が十分にできなかった2021年3月期の売上高は815億円。最盛期の半分以下にまで落ち込みました。
2021年3月期は62億円もの営業赤字を計上。本社ビルを売却して荒波を乗り超えました。
ライブ活動が再開できるようになると業績は回復。2024年3月期の売上高は1333億円でした。
※決算短信より筆者作成
ただし、今期(2025年3月期)は苦戦が予想されます。2025年3月期第1四半期の売上高は、前年同期間比20.1%減の255億円でした。大幅な減収で12億円の営業損失を計上しています。
エイベックスは今期の通期売上予想を開示していません。
2023年は2月から6月にかけて「東方神起 LIVE TOUR 2023 ~CLASSYC~」が行われました。東方神起3年半ぶりの全国ツアーで、30万人を動員しています。
浜崎あゆみの25周年を記念した初の47都道府県ツアー「ayumi hamasaki 25th Anniversary Live Tour」も12万人を動員しました。
前期は大型のライブツアーがあったため、売上高が大きく押し上げられていたのです。
それはつまり、安室奈美恵やAAAなき後のエイベックスが、現状で稼ぎだせるポテンシャルの天井付近であると捉えることもできるのです。
世界攻略を見据えたXGの「WOKE UP」は4か国で首位獲得
中期経営計画である「avex vision 2027」において、重点戦略を「多様な地域・多様な分野で
“愛される”IPの発掘・育成を目指す」としています。音楽事業におけるIPとは、アーティストを指します。エイベックスは優れたアーティストを発掘して育成するため、マネジメントへの投資を加速しているのです。
重点戦略を進める施策の一つに、「グローバルを見据えた連続性のあるオリジナルIP開発」があります。
この取り組みが形になったようなアーティストがXG。2022年3月に「Tippy Toes」でデビューした日本人による7人組のガールズグループです。
このグループが2024年5月にリリースした「WOKE UP」は、ビルボードの日本の楽曲をランキング化したJapan Songs(国別チャート)で、3週連続4か国(アメリカ、ブラジル、南アフリカ、シンガポール)で首位を獲得しました。
「WOKE UP」のミュージック・ビデオのYouTube再生回数はリリースからわずか2週間で1200万回を突破。リリース直後から話題となり、アメリカのYouTube急上昇チャートで1位にランクインしています。
海外でヒットしている日本の音楽といえば、Creepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」やYOASOBI「アイドル」、こっちのけんと「はいよろこんで」をイメージする人が多いかもしれません。
これらの楽曲は日本のテレビやラジオなどでも頻繁に流れていますが、XGの曲が取り上げられることはほとんどありません。XGは日本での知名度が高くないのです。
これは、XGの活動拠点が韓国であり、歌詞は英語で歌われるというその特殊性によるもの。J-POPやK-POPとは一線を画すアーティストだと言えるでしょう。