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多くの企業で就業者の高齢化が深刻化、若年層から「選ばれる会社」としての差別化が必須に

2024.10.03

人手不足は、今や企業経営にとって最重要課題の一つとなってきた。有効求人倍率の低下や就業者数の増加など、緩やかながら改善を示す傾向が見られるものの雇用のミスマッチもあり、人手不足倒産は過去最多ペースで推移している。

実際、建設・物流業における「2024年問題」、団塊の世代が後期高齢者になることでさらなる労働力不足が予想される「2025年問題」など、解決すべき課題は山積しており、事業の継続・発展のために省力化や合理化などの投資が急がれる。

そんな中、帝国データバンクから2024年7月次における雇用の過不足状況調査の結果が発表されたので、同社リリースを元に概要をお伝えする。同社ではこの調査を2006年5月より毎月実施している。

人手不足の割合は正社員で51.0%と高止まり、非正社員でも同様の傾向

2024年7月時点における全業種の従業員の過不足状況について、正社員が「不足」と感じている企業の割合は51.0%だった。前年同月比で0.4ポイント低下したが、依然として5割を上回るなど高止まりが続いた。

また、非正社員では28.8%だった。前年同月から1.7ポイント低下しており、7月としては2年ぶりに3割を下回ったことになる。

■正社員・業種別:ITエンジニア不足の「情報サービス」が71.9%でトップ、唯一の7割超

正社員の人手不足割合を業種別にみると、主にIT企業が当てはまる「情報サービス」が71.9%でトップだった。唯一の7割超となり、人手不足感が際立っている。

月次ベースの推移でみると、8割に迫った2024年の年初からは若干の低下傾向にあるものの、依然として7割を上回る高水準で推移している。当業界は旺盛なDX需要によって景況感も好調であり、今後も堅調な需要な拡大にともない人手不足は長引くと見込まれる。

企業からは「ソフト開発案件は首都圏を中心とした案件が地域に向けても多く出ているが、スキルマッチした要員が不足しており受注に至らない」(新潟県)や「人手不足が原因で、引き合いも増えているなかでお断りすることも多く、新しいことにチャレンジする時間も確保できない」(香川県)といった声が数多く聞かれた。

その他、7業種が6割台となった。特に、時間外労働の上限規制が強化された、いわゆる「2024年問題」に直面している「建設」は、69.5%で7割に迫る水準だった。

企業からは「大規模工場や大型再開発事業の影響で、地場の建設業者は大変な状況」(北海道)や「大阪府の建設業者全般を見渡すと万博工事の影響により、人手不足や資材の高騰に悩まされている業者が大多数」(大阪府)といった、各地の異なる事情を反映した声が届いている。

また、若年層の不足が顕著な自動車整備や警備などが当てはまる「メンテナンス・警備・検査」(65.9%)や、訪日客が過去最多の勢いをみせインバウンド需要が好調な「旅館・ホテル」(65.3%)、トラック・軽貨物などの「運輸・倉庫」(63.4%)においても人手不足は深刻となっている。

■非正社員・業種別:「飲食店」がトップも、前年同月から大幅に低下

非正社員の人手不足割合を業種別にみると、「飲食店」は67.5%となった。業種別のトップで引き続き高水準で推移しているものの、前年同月から16.0ポイント低下となり、人手不足は改善傾向を示している。

総務省「労働力調査」では「飲食店」の就業者数は大きく変化していないなかで、省力化・合理化投資の効果によって人手不足割合が低下したと考えられる。

次いで、スーパーマーケットや百貨店が含まれる「各種商品小売」(65.1%)も6割台で続いた。その他にも、派遣人材の不足が聞かれる「人材派遣・紹介」(58.6%)、正社員同様に人手不足感が強い「メンテナンス・警備・検査」(55.3%)や「旅館・ホテル」(51.6%)など4業種が5割台となった。

就業者の高齢化が深刻、若年層の呼び込みへ「選ばれる会社」としての差別化が必須

人手不足割合は正社員では51.0%、非正社員では28.8%となった。いずれも直近では前年同月比で低下したが、高水準で推移している。人手不足が深刻な業種のなかには、緩和に転じているケースもあるものの、依然として上位10業種の顔ぶれは大きく変わっていない。

こうしたなか、人手不足倒産は急増傾向にある。2024年上半期(1-6月)は182件が発生し、過去最多を大幅に上回るペースで推移している[1]。そのうち建設業は53件、物流業は27件とそれぞれ増加が顕著で、「2024年問題」が直撃した結果となった。両業種とも人手不足が一因となってオペレーションが回らなくなり、業績が維持できず倒産に追い込まれるケースが続出した。

さらに、就業者の高齢化も追い打ちをかける。総務省「労働力調査」をみると、就業者数のなかで一般的に「定年」の区切りとなる60歳以上の割合は21.8%となり、統計開始以降で過去最高を記録した。

一方で、20-34歳の割合は23.2%となり年々低下し、近い段階で60歳以上の割合を下回る可能性が高い。「2024年問題」に直面する建設・物流業に代表されるような、高齢にともない現場の就労が難しくなりやすい業種では、若い就業者の確保が急がれる。

こうしたなか、同調査では2023年時点の転職等希望者は1035万人となり、過去最多を記録するなど転職市場は活況を呈している。労働市場の流動化が進めば、より魅力のある企業へ労働力移動が活発化し、労働者から「選ばれる会社」としての勝敗がこれまで以上に鮮明になるだろう。

業界を問わず、人材の流出を防ぐには自社でしか得られないスキルや経験、給与水準などの差別化が欠かせない。企業にとって最も重要な経営資源ともいえる人材の確保・定着に向け、企業の人事戦略は一層重要性が増していると言える。

関連情報
https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/p240812.html

構成/清水眞希

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