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上司に「最低な人間です」と誹謗中傷メールを送った部下に対する降格処分は認められる?認められない?

2024.10.04

こんにちは。

弁護士の林 孝匡です。

宇宙イチわかりやすい法律解説を目指しています。

――部下のXさんから何とメールが届いたんですか?

Y部長
「『ご自分の保身のためだけに、お仕事されるんですね』『最低な人間です』とメールがきました……」

――なかなかパンチの効いた部下ですね!

Xさんの業務拒否などもあり、会社はXさんを降格処分としました。そして、これに納得できない部下が提訴。

降格処分はOK?NG?果たして裁判所の判断は!(東京高裁 R4.9.22)

以下、わかりやすく解説します。

※ 実際の判決を基に構成
※ 判決の本質を損なわないようフランクな会話に変換
※ 争いを一部抜粋して簡略化

登場人物

▼ 会社

物流アウトソーシング業務、マタニティ市場のマーケティングなどを行っている会社

▼ Xさん

・女性(正社員)
・メディア企画事業部で勤務
・おもに4人体制(Y部長、Xさん、あと2名)

部下のXさんは仕事が超デキたようです。入社して1年ほど経ったころには優秀社員表彰を受け、次長職に昇格するというマッハ昇進っぷりです。

Y部長と衝突

Xさんは「自分の業務量が多い……」と感じていました。というのも、Y部長が昼前に出勤し、早い時間に退社することが多かったからです。そのしわ寄せが部下にきていたのでしょう。

Xさんは不満をYさんにぶつけ、役員のZ専務にも抗議。

Z専務には以下のように窮状を訴えていました。


「Y部長と考え方・方針が違いすぎており、今後協調して業務をこなすことは困難です」「既存業務に追われており、私ともう1人の社員の2名体制では営業活動がままならないです」


しかし、これといった改善がなされず、Xさんは不満を募らせていきました。そして、だんだんとXさんとY部長の関係は悪化していきます。

誹謗中傷メール

不満が頂点に達したのでしょう。

ある日、Xさんは、Y部長が取引先に送信したメールに激怒。

Y部長へ ↓ こんなメールを送信しました。かなりブチギレています。


「何も状況がわかっていない状況で、その場しのぎのメールを送るの辞めて頂けませんか。内容を把握し、現状の配布状況を見て、お知らせすべき案件です。いつもそういう風に、都合よくしゃしゃり出てきて、肝心のクレーム処理の時だけ、人任せにするのは、人間的に最低です。私がメールしていないということは、今日お知らせする必要がないからです。本当に、部のお考えではなく、ご自分の保身のためだけに、お仕事されるんですね。最低な人間です」(原文ママ)


(判決文より引用)

ブチギレすぎて人格非難にまで発展していますね……。

ちなみに、この頃からXさんは、Y部長とのトラブルなどが原因で精神に不調を来たしていました。

新規開拓を拒否

こちらもバチバチにケンカしています。↓ Xさんが新規開拓を拒否した時のY部長との会話です。

Y部長
「新規開拓は頑張ってくださいよ」

Xさん
「私たち、やりませんよ」

Y部長
「業務命令です」

Xさん
「都合がいいこと言わないでくださいよ」

ーーその後のやり取りの中でーー

Xさん
「いいえ、私はしませんよ。全くしませんよ」
「いえ、やりません。やりません!」

一連の会話の中で、Xさんは「業務過多である」「仕事をしないY部長と一緒に仕事をするのが嫌である」「Y部長のことを見るのも嫌である」旨述べていました。

コンプライアンス委員会

その後、コンプライアンス委員会が開かれ、委員がXさんへ事実確認を行いました。

降格処分

コンプライアンス委員会から約1週間後、Xさんに「次長職を解く」との降格処分が出されます。この処分でXさんは減給されました(35万円 → 28万円)。

解雇

降格処分から約6か月後、Xさんは解雇されます。これに納得できないXさんは労働審判を起こし、その結果「解雇は無効(Xさんは社員としての地位を有する)」との和解が成立。

解雇を免れたXさんは「降格処分は無効。賃金を支払え。慰謝料も支払え」と提訴。

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