「あなたは他人との距離感は適切ですか?」と問われたとき、「私は大丈夫」と自信を持って言うことはできますか?
ほとんどの人が、「自信がない』、もしくは「特に気にしてはいないけれど適切かどうかはわからない」のではないでしょうか。
円滑なコミュニケーションのために、他人との適切な距離感を保つことは大切です。今回は、距離感とはどのようなものなのか、そして適切な距離感を保つ方法をお伝えします。
距離感とは
他人との距離感には、物理的距離と心理的距離がありますが、この2つはほぼ同じ関係にあるとされています。
まずは、物理的距離と心理的距離のどちらにも関係するパーソナルスペースについて説明します。
パーソナルスペースとは
人と会話などコミュニケーションを取っているとき、物理的に「この人、なんか近い」と不快に思うことはないでしょうか。その不快さは、自分のパーソナルスペースに侵入されたことで感じることが多いのです。
パーソナルスペースとは、自分の縄張り空間のことを指します。縄張りという言葉通り、そのスペースに侵入していいのは心を許した、親密な人だけ。親密さによって侵入を許される距離は異なります。
パーソナルスペースは、密接距離・個体距離・社会距離・公衆距離の4つに分類されます。各説明は下記の通りです。
・密接距離(0〜45cm)……スキンシップも可能であり、恋人や親子など親密な人との距離を指す
・個体距離(45〜120cm)……手を伸ばせば届くぐらいの距離。親しい人であれば侵入されても心地よいと感じる
・社会距離(120〜350cm)……テーブルを1つ挟んだぐらいの、身体的接触は難しい距離。仕事相手とはこのぐらいの距離感が望ましいとされる
・公衆距離(350cm以上)……見ず知らずの相手でも不快に感じない距離。この距離では個人的なやり取りは不可能とされている
距離がわからなくなる人は、相手との親密さとパーソナルスペースが合っていないことが多いです。
会話でわかる距離感とは
次に、会話での距離感について触れていきます。会話での距離感は心理的距離が関係しています。
会話の中で、自分のことをどれだけさらけ出すのか、また相手のどこまで踏み込んで聞いていくのかは、相手との親密さが関係しています。
親しくないと感じる人には、天気や時事ネタなど表面的な話題になることが多く、親しくなるにつれてお互いの深い話題へと踏み込んでいくという段階を踏んでいきます。相手と良い関係を保ちつつ距離を縮めていくためには、お互いが同じペースで会話での心理的距離を縮めていく必要があるのです。
会話の相手への踏み込み方が同じペースでないと、相手は不快さを覚えます。不快さを覚えた相手とは一向に親しくなっていかず、距離が離れていく可能性もあります。
他人との適切な距離感を保つ方法
距離感のところでも触れたように、物理的距離と心理的距離は密接に関係しています。ここでは適切な距離感を保つ方法をご紹介します。
1.自分と相手との関係を客観的に見る
あなたがいくら相手との距離を縮めようとしても、相手の気持ちがあなたと同じでなければ、適切な距離感を保つことは難しくなります。このすれ違いをなくすためには、相手との関係を客観的に見ることです。
客観的に見る方法は、相手との中で起こった事実だけに注目しましょう。
相手との予定が合わずにキャンセルになった場合、あなたの主観だけだと自分の感情が事実とセットになってしまい、「もしかして一緒にいるのが嫌でキャンセルになったのかな」というように自分の不安な気持ちが一緒になってしまうことも。
ここでの事実は、“予定がキャンセルになったこと”だけです。相手との距離感がわからなくなったときも自分の感情によることが多いのです。なので、事実だけに注目することを覚えましょう。
次に、距離がわからない相手との間で自分が行動したこと、伝えたことをメモしましょう。自分の言動を可視化することで、客観性を持たすことができ、距離感がわからなくなった原因を見つけることができます。
2.相手に期待しない
距離感がわからなくなる人は、相手が変わってくれることを期待して、相手をコントロールしようとする傾向があります。距離感でいうと、「ここまで相手のことを信頼して自分のことを話したんだから、“相手も自分のことを信頼してくれるはず”」というように、自分の枠に相手を当てはめようとするのです。これをやめてください。
相手との距離感にストレスがあるのであれば、変わらなければいけないのは相手ではなく、あなたです。自分が信頼しているからと距離を縮めようとしても反応がないなら、それはまだ縮める段階ではないということです。
3.自分の気持ちを優先する
距離感がわからない人の中には、相手のペースに合わせて疲れてしまったことで相手との付き合い方自体がわからなくなっている人もいるでしょう。そんなときは、自分の気持ちを後回しにしている可能性があります。例えば、「断ったら嫌われそうだから無理しても行く」、「踏み込んできてくれているのだからそれに応えないといけない」というように。自分より相手の気持ちを優先してしまっては、相手と一緒にいることに疲れるだけです。
疲れないためには、自分の気持ちを優先してください。自分がこうしたいからこうする、そんなシンプルな考え方を持ってください。何かを断ることはあなたの自由です。それによって相手にも適切な距離というものが伝わり、負担のない適切な距離を保つことができます。
文・構成/藤野綾子