自宅にもサウナを持つフィンランド人にとってサウナはもはや生活の一部。ビジネスにおいてはどのような好影響を与えているのだろうか。
駐日フィンランド大使
タンヤ・ヤースケライネンさん
1995年、フィンランド外務省に入省後、世界各地に赴任。2022年9月、駐日大使に着任する。ヘルシンキで勤務していた際は、朝に外務省のサウナに入り、リフレッシュして仕事に臨んでいたという。
サウナはウェルビーイングを支える、平等な場所
約550万人の人口に対し、300万ものサウナがあるフィンランド。ビジネスにおけるサウナの役割について、大使に聞いた。
「まず前提としてサウナとは、心身ともにリラックスできる空間です。仕事の悩みがあったとしても、それを洗い流してくれます。五感が解放されるような場所であり、ウェルビーイングの中心です。加えて、社交の場でもあります。友人や同僚とサウナに入ることで、お互いをより身近に感じることができます。そういった要素が、ビジネス環境においても大切な役割を果たしているのでしょう。例えば、職場の人たちと一緒にサウナに入った後、カジュアルなディナーを食べながら親睦を深めることもあります。また、仕事上のお客様をお招きし、一緒にサウナに入り、夕食を共にすることもあります。これは、フィンランドホスピタリティの文化です。サウナの中で仕事の話をする人もいますが、そこにはパワーポイントもアジェンダもありません。仕事の話が禁止されているわけではありませんが、交流を深める意味合いが強いんです」
自宅にサウナがあるにもかかわらず、オフィスにサウナを設置する企業が多い理由をこう続ける。
「オフィスサウナは、『スタッフのウェルビーイングのため』という側面が大きいです。そして何より、サウナの空間は『平等』。フィンランドでは元々、上司に話しかけやすいフラットな環境がありますが、サウナの中ではより平等になります。普段の肩書を脱ぎ捨て、互いにリラックスする。サウナの中にボスがいないんです。唯一ボスと言えるのは、『ロウリュをする人』かもしれませんね(笑)」
サウナは社内のチームビルディングの機能も果たしている。同僚や上司との関係構築、勤務前後のリフレッシュにも欠かせない場所だ。
フィンランド大使館内では2つのサウナが稼働中!
世界各国にあるフィンランド大使館の中にもサウナがある。働くスタッフ同士や、各界を代表する人たちと親睦を深める(「サウナ外交」と言われる)ことも。
このフィンランド企業にもサウナあり!
フィンエアー(フィンランド航空)
アメアスポーツ
フィンランドでは、オフィスの中にサウナが併設されていることも珍しくない。幸福度や生産性の高さは、サウナにあり。
取材・文/久我裕紀 撮影/浦 将志