着実に結果を重ねてきたブレイキン人生、そして大きすぎる周囲の期待。負けられない重圧を抱えて挑んだパリ五輪の舞台で、彼は笑顔を崩さなかった。その知られざる真意とは──?
パリ五輪ブレイキン日本代表 Shigekix
しげきっくす/2002年3月11日生まれ、大阪府出身。本名は半井重幸(なからい・しげゆき)。7歳からブレイキンを始め、ダンサーネーム「Shigekix」として世界中で活躍する。2018年ブエノスアイレスユースオリンピックで銅メダル、世界選手権では2022年に銀メダル、2023年には銅メダルに輝いた。2024年パリ五輪では4位を獲得。日本選手団の旗手も務め、注目を集めた。
悔しさはないのか?笑顔を見せた3位決定戦の真実
この夏、たくさんのドラマを生んだパリ五輪。中でも今大会唯一の新競技として大きな注目を集めたのがストリート発祥のダンススポーツ・ブレイキンだ。DJが選曲するヒップホップミュージックの流れるフロアで戦うBボーイ、Bガール(ブレイキンの選手はこう呼ばれる)たちのダイナミックかつアクロバティックなダンスに目を奪われた人も多いだろう。
ブレイキン日本代表・Shigekix。パリ五輪の開会式と閉会式では日本選手団の旗手も務めた。彼がブレイキンの世界を知ったのは7歳の頃。現在もブレイキン選手として活躍中である姉のAYANE、そしてその仲間たちの影響が大きかった。
「姉のほうが先にブレイキンを始めていて、僕は練習や大会についていったんですが、そこで姉の周りにいた人たちにすごくかわいがってもらいました。普段は優しいお兄さんお姉さんが、カッコいいダンスをするギャップに衝撃を受けて、自分でもやってみたくなったのがきっかけ。最初は父親からタオルを借りて、それを巻いた頭を床につけて、見よう見まねで練習を始めましたね」
ひとつの技ができるようになったら、また次。そしてさらに難易度の高い技を……。まるでゲーム攻略のように夢中になっていったという。
「もっともっとうまくなりたい。1日でも早く新しいことができるようになりたい。その繰り返しで、気づけば今に至るって感じです」
10歳で海外の大会にも出場し、そこから着実に結果を出してきた。そして、22歳でつかんだパリ五輪への切符。ブレイキンの会場であるコンコルド広場に立った彼はまさに自然体。この瞬間、この空間を心から楽しんでいるようだった。
「もちろん、プレッシャーはありました。よく五輪は他の大会と違うというけれど、まさにそう。油断すると呼吸すら忘れてしまいそうなプレッシャーの中で、それをどう自分のエネルギーに変えるかが大事だと思いました。だって、期待を寄せて応援してくださっている方々が求めているのは、プレッシャーで潰れる僕ではなくて、自分らしく戦っている僕の姿ですよね」
彼が〝自分らしさ〟を表現するうえで最も大事にしていることはなんだろう? そう尋ねると、少し間を置いて「楽しむこと」と答えてくれた。
「だって、楽しんでない人が誰かのことを楽しませることはできないはずなんで。自分も楽しそうな人からエネルギーをもらえる経験のほうが多かったから」
パリ五輪の3位決定戦ではアメリカ代表のVictorに惜しくも敗れたものの、終始〝楽しそう〟で、その表情はずっと笑顔だった。彼の中に、悔しいという感情は存在しないのか。
「そりゃあ悔しいですよ。プレイヤーとして挑む以上は、優勝する以外は満足できない。今回は自分自身の成果は出せたけれど、結果につなげることができなかった。でも、『悔しい』と言ってても始まらない。それより『次の勝負で証明してやろう』って思うんです。だから、前を向く以外の選択肢は本当にないです」
「悔しい」と言ってても始まらない。
それより「次の勝負で証明してやろう」と思う
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