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山本一太群馬県知事とJINS田中仁代表取締役CEOが本音でトーク「企業と自治体が地方を元気にするにはどうすればいい?」スペシャル対談動画、配信中!

2024.10.14

一貫してモノ・ヒト・コトに関するトレンドを深堀りして、ヒット商品やトレンドの背景に何があるか取材してきたビジネストレンドマガジン『DIME』とWebメディア『@DIME』は、本誌連載陣や第一線で活躍する著名人・ビジネスパーソンがテーマに合わせてディスカッションするカンファレンス「DIME Business Trend Summit」を開催した。第2回となる今回のテーマは「Well-Working」。

急速に変容する世界で生き残るために、企業も個人もイノベーションが欠かせない時代に何が必要なのかを考えていく。ここでは群馬県知事の山本一太さんとジンズホールディングス代表取締役CEOの田中仁さんに企業と自治体が地方を元気にするための施策についてディスカッションした内容を紹介していく。

 

東京への一極集中は健全ではない

山本一太さんは、国会議員と閣僚を経験後、2019年に地元に凱旋する形で群馬県知事に当選。現在はデジタルクリエイティブ産業を製造業と並ぶ群馬県の新たな主要産業の一つにするべく奔走している。

田中仁さんは、アイウエアブランド「JINS」を展開するジンズホールディングスの代表取締役CEOとして活動するほかに、ライフワークとして出身地である群馬県前橋市の地方活性化のための活動をしている。現在、ジンズホールディングスは東京本社のほかに前橋にも本社も置いており、会社を挙げて前橋市に貢献しようとしている。地域活性化については、田中さんは前橋市で大きな取り組みを行なっている。その理由は、地方の持つ可能性と課題にあったと語る。

「いまは人も物も情報もすべて東京に集まっている。この一極集中は健全ではないと思っていて、日本の良さは地方にあると思っていますが、それが活かされていない。結果として地方にプレーヤーがいなくなっている。これは企業家が地域に入って具体的に活動を起こさないと課題を解決できないという危機感を持って取り組みを始めました」(田中さん)

現在、前橋市では田中さんが中心になって、地域での活動を行なう「田中仁財団」、新しい起業家や企画を発掘するプロジェクト「群馬イノベーションアワード」、次代の起業家のための寺小屋的な学校「群馬イノベーションスクール」などを展開している。さらにジンズホールディングスとしても社内に地域共生事業部を設立し、地域が抱える課題に民間企業として向き合っている。

「スタートアップへの支援は行政もやっていますが、うまくいかないことも多い。田中さんがイノベーションアワードやイノベーションスクールを作ったことで、若い経営者もそこを目指すなどマインドセットが変化した。いわば群馬県にスタートアップの精神を植えつけてくれました」(山本さん)

中途半端な取り組みでは成果はでない

山本さんが田中さんを評価する点は、中途半端なことはせずに常に全力で物事を進めていること。

「物事を進めていく上で、田中さんは前橋市という生まれた場所に愛情を持って元気にしようとする熱が伝わってくる。それが人を呼び込んでいます」(山本さん)

「一番リスクが大きいのは中途半端なことです。本気で振り切らないと中途半端な投資やエネルギーは効果がない。前橋市に企業家仲間がこれまで300人ほど来てくれましたが、彼らはみんな私の取り組みを見てクレイジーだと言います(笑)」(田中さん)

では地方を元気にするには、どこに振り切ってエネルギーを注いでいけばいいのか? 田中さんは、各地域それぞれが特徴を持った街作りをしていくことが重要だと語る。そうやってできた街がピースとしてハマっていくことで多様性のある群馬県になる。今後の前橋市については、田中さん曰く「アートやデザインを核にしたデジタルや教育が、日本における先進的な取り組みとして評価されるような場所」を目指すという。

さまざまな取り組みや事業を展開している田中さんは、民間だけでは限界があり、行政とすり合わせをして手を取り合って進めることの大きな効果に期待する。だが現状として、官民が一体となっている自治体は少ない。

山本さんは、「国も地方も財政が苦しいので大きな予算を投入するためにはリソースを大きくしないといけないが、それなら民間と組んでいくべき」というが、一方の田中さんも「行政は予算も大きいが、ほとんどがうまく活用されていない。民間の知恵やアイデアを入れれば、もっと効果が上がるはずですが、行政の中で閉じた事業にしているものが多い」と問題点を指摘。

「知事になって改めてわかったことですが、公務員は慎重で成功よりも失敗しないことを重視しています。それはリソースに税金が入っているからです。それでも、知事になってずっと「劣化版東京」を作るなと言い続けていたら、やっと職員が起爆していい感じになってきました。知事が言っちゃいけないけど、全部の事業が成功するわけはないです。10やっても9はうまくいかないかもしれないが、バッターボックスに立たないとチャンスはない。こういう精神は、田中さんの前橋市の活動がいい影響を与えていると思っています」(山本さん)

「行政は単年度の予算で考えることが多いですが、長期的に目指すべきこともあるわけです。それを考えた時に、短期で予算を使うことと長期で価値を作ることをどうやってミックスするかは、官民の連携にとって今後の課題だと思います」(田中さん)

デジタルクリエイティブを群馬県の主要産業に

群馬県の主要産業は製造業だと言われているが、山本さんは、製造業と並ぶ主要産業として、デジタルクリエイティブ産業というコンセプトで新しい産業創出の推進をしている。

「デジタル産業に、エンターテインメントを含めたクリエイティブ産業を掛け合わせ、デジタルクリエイティブ産業というものを創出する。さらに、そこにしっかり人材を供給できる仕組みをつくりたい。デジタルクリエイティブ産業によってほかの産業の生産性や付加価値の向上にもつなげていきたい」(山本さん)

そのために、令和4年3月には、小中高生を対象としたデジタルクリエイティブ人材育成施設「tsukurun」を開設したほか、国際的に認められたデジタルクリエイティブ人材育成プログラム「TUMO」のアジア初の導入を進めている。他県にはないデジタルクリエイティブ人材育成のための施策も積極的に行なっているという。働く場については、東京への一極集中を解消していくべきという。

「地方のほうが人間らしい生活ができると思いますが、残念なのは職場がない。東京に集まっている企業がもっと地方に散らばって、クリエイティビティやデジタルなどを生かして働ける場をもっと作らないと若い世代が東京に流出し続けます。企業が東京から地方に出てきて新しい空気を入れる役割を担っていかないといけないと思います」(田中さん)

「いまの仕組みでは、地方自治体は政府にお願いしなくてはいけない。税源移譲は難しい問題だと思うけど、もっと地方に裁量を持たせていろいろと任せてもらいたい。そこで自治体も健全に競争していく必要があります。この5年間で群馬県の財政はかなり良くなったけど、そういうところにはもっと裁量を与えてほしいですね」(山本さん)

田中さんも地方自治体が努力することで企業を呼べるような環境作りが必要だという。そのためにも選択と集中が必要で、その例として草津温泉湯畑周辺への投資や群馬県の水力発電の事業展開といった事例が紹介された。どこに力を入れてそこから効果を波及させるかといった戦略的な税金投入は地方自治に重要な要素となる。地方を元気にするためには、官民の連携と適正な集中と選択ができる人材と環境も必要になってくるはずだ。その参考例として群馬県の事例は今後も注目すべき取り組みだろう。

プロフィール

山本一太(やまもと・いちた)
群馬県知事。外務政務次官、外務副大臣、内閣府特命担当大臣、情報通信技術担当大臣、海洋政策・領土問題担当大臣などを歴任し、2019年より群馬県知事。

田中仁(たなか・ひとし)
株式会社ジンズホールディングス代表取締役CEO。1963年、群馬県生まれ。2014年に群馬県の地域活性化支援のために「田中仁財団」を設立。現在は前橋市中心街の活性化にも携わっている。

文/久村竜二 撮影/小倉雄一郎

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