ファンクショナルブランディングの観点でネーミングを検討
6月に珪藻土を練り込んだ糸を断念した影響はマーケティングにも及んだ。何が起きたのかを、マーケティングを担当するアパレルカンパニー営業MD本部商品企画部マーケティンググループ マネージャーの日和崇さんはこう説明する。
「機能をブランド化するファンクショナルブランディングの考えに基づき消費者が珪藻土をイメージしやすいようなネーミングを開発と並行して話し合っていました。6月頃にはプロモーションの大枠やマーケティングプランを決めるつもりでいたのですが、珪藻土を練り込んだ糸の開発を断念するはこびになったことにより、マーケティングで考えていた内容も全部見直さざるを得なくなりました」
プランを軌道修正し、すべてを変更しなければならなくなったが、ネーミングについてはどういう機能を果たすものか、使うことで得られるメリットは何かをストレートに伝えることにした。『アセドロン』は何をしてくれるのかが直感的にわかりやすいといった理由から、100案以上の中から採用。お化けをイメージしたロゴマークもネーミングとセットで検討されており、親近感があること、覚えやすいこと、老若男女問わず受け入れてもらいやすいことが高く評価された。
ブランド名とロゴマークが決まったのは2023年7月。9月の展示会に間に合わせるべく準備時間を確保するため、仕切り直しから1か月足らずで決めた。
「予想以上期待通り」の売れ行き
『アセドロン』はメンズではTシャツ、ノースリーブシャツ、ボクサーパンツ、ニーレングス(スーツなどの下にはくひざ丈のインナー)、ソックス、パジャマ、レディースではキャミソール、ブラキャミソール、タンクトップ、ブラタンクトップ、2分袖インナー、ソックス、パジャマ、アームカバーを展開している。インナーをメインに展開する同社のアパレルアイテムの中でも汗の不快感を覚えやすいものを揃えた。
現在の売れ行きは当初想定の140%程度で推移。現時点の手応えを日和さんは「予想以上期待通り」と評する。
「春夏シーズンの累計出荷数は50万枚~60万枚で計画していました。計画を超えたいという思いがあった中で80万枚を超えたことについては予想以上の結果が出ていると思っていますが、計画を超えることを期待していたところもありましたのでその意味では期待通りです」
全体的に見るとどれも満遍なく売れているが、一番の売れ筋がレディースのブラキャミソールとブラタンクトップの2つ。その理由を水野さんは次のように話す。
「汗でベタつくといった悩みの解決や、暑いので着るものを減らしたいというニーズに対し、汗を素早く吸放湿する『アセドロン』の特徴がハマり、ブラキャミソールとブラタンクトップが好調に売れています。暑い時はブラキャミソールやブラタンクトップを1枚着るだけで十分です」
このほかにはパジャマもよく売れている。実需期と想定していた6月初頭より前に在庫が切れたほどで、サイズによってはすでに完売になっているものもある。