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【ヒット商品開発秘話】累計出荷枚数80万枚を突破したグンゼ「アセドロン」が目指す機能のブランド化

2024.09.30

■連載/ヒット商品開発秘話

残暑が厳しく9月も暑い日が続いた。少しでも快適に過ごしたいものだが、ベタつきやジメジメといった汗が原因の不快感をなくすことができるアイテムが現在売れている。グンゼの『アセドロン』のことである。

 2024年4月に発売された『アセドロン』は、インナーを中心にしたアイテムをメンズ/レディースの両方で展開。グンゼ史上最高クラスの吸湿速乾性を実現し、今まで難しかった汗による不快感を解消する。これまでの累計出荷枚数は80万枚を超えている。

ベタつき、ジメジメなど汗が原因の不快感を生じさせない機能性アパレルブランド『アセドロン』。独自開発した素材をインナー、ソックス、パジャマなどの各種ウェア類に活用し商品展開を図っている。写真はメンズのVネックTシャツ

失敗に終わった珪藻土を練り込んだ糸

『アセドロン』が企画されたのは発売の1年ほど前。その経緯をアパレルカンパニー営業MD本部商品企画部インナーウェアグループ マネージャーの藤本和彦さんは次のように話す。

「機能系の商品は企画する前に消費者調査を実施するのですが、満足してもらえているかを問うと、様々な商品を出しているものの十分に満足していない声が目立ちます。しかし、機能系の商品にニーズがないわけではなく、1年を通じて汗に関する不満は多いため、汗対策で満足いただける商品をつくることにしました」

 消費者調査は年2回定例で実施。汗対策のニーズが確認できたのは2023年3月に実施した時だった。この時の調査で、汗対策に未充足のニーズがあることが判明。4月以降、他社商品も参考にしながら汗対策で充足されていないニーズが何かを調べたところ、ベタつきやジメジメといった不快感の解消であることがわかった。

 汗の不快感をなくすには特別な糸が不可欠。企画の半年ほど前から研究が始まっていた2種類のオリジナル糸の採用を検討した。

 2種類のオリジナル糸のうちの1つが、珪藻土(けいそうど)を練り込んだもの。まず、この糸を使うことを前提に開発を進めることにした。藤本さんは次のように話す。

「水分をしっかり吸収・放出することができているもので一番インパクトがあったのが、珪藻土のバスマットです。珪藻土を汗の吸放湿に使うことができればベタつかず不快感がないことを体感できるはずなので糸に使うことを考えました」

 珪藻土を混ぜた糸はイケると思っていたが、あまり水分を吸収してくれず拡散も不十分で、ベタつかないことを体感するまでには至らなかった。結局失敗に終わり、2023年6月に珪藻土を使うアイデアは断念することになった。

 落ち込んでいる暇はなかった。毎年9月に小売店のバイヤーなどを集めて開催される翌年の春夏シーズン向け新商品を紹介する展示会に間に合わせなければならなかったからだ。

 失敗に終わった珪藻土を練り込んだ糸の代わりとしたのが、もう1つのオリジナル糸である珪藻土の機能を模倣した糸だった。「ポイントになる要素は、これまでの研究からわかっていました」と藤本さん。その要素を実現するに当たり、長年の糸づくりや生地づくりの経験から培ったノウハウや技術力を活用した。

既存技術の組み合わせで珪藻土の機能を糸で再現

『アセドロン』に採用された珪藻土の機能を模倣した糸は、吸湿性が高くなめらかなレーヨンとドライ感の強いポリエステルを混紡し、珪藻土の機能を再現することに成功したものである。

 糸は芯部と鞘(さや)部で構成されている。芯部のレーヨンに吸放湿性を高める物質を吸着させており従来と比べて持続的な湿気の吸放湿を実現。鞘部に水分の通り道となる空隙を無数に設けた多孔質構造とし、汗が素早く効果的に拡散できるようにした。この糸でつくった生地は素早く汗を吸ってベタつかず、肌離れの良い着心地になる。

珪藻土の機能を模倣した糸の構造。芯の周りに無数の空隙がある多孔質構造とした

糸の芯部に使われているレーヨンには吸放湿性を高める物質を分子レベルで強固に結合させている

 多孔質構造の糸は合わせる糸の組み合わせを変えて芯となるレーヨンの性能をさらに上げることができれば、珪藻土に近い構造ができるかもしれないと推測されていた。ただ、素早く水分を吸放湿し汗のベタつきなどを感じないかどうかは、つくってみるまでわからず未知数だった。藤本さんはこう振り返る。

「検証データとしては、ある程度の効果を見込むことができましたが、生地にした時に本当に汗のベタつきがないことなどが実感できるまでは安心できませんでした」

 約10タイプのサンプルをつくり、延べ人数100名を超えるモニターの協力を得て特定の環境下での試着評価を実施。アパレルカンパニー営業MD本部商品企画部インナーウェアグループの水野しおりさんは、「9月の展示会直前でようやく、狙った通りの機能を発揮するものができました」と話す。

従来品の生地と『アセドロン』の生地の吸水速乾性を比較。同じ環境下ある両方の生地それぞれに同量の水を垂らし生地が乾くまでに時間を計測したところ、計測開始16分で『アセドロン』に採用した生地から水分がなくなった(YouTubeグンゼ公式チャンネル「グンゼ史上最高クラスの汗解消テクノロジー『アセドロン』吸水性速乾 実証動画」より)

従来品の生地と『アセドロン』の生地の吸放湿性を比較。高湿度を再現した2つの環境(湿度は同一)にそれぞれの生地を置き湿気がなくなるまでの時間を計測したところ、計測開始45秒足らずで『アセドロン』に採用した生地は湿気を吸収しきってしまった(YouTubeグンゼ公式チャンネル「グンゼ史上最高クラスの汗解消テクノロジー『アセドロン』ムレを抑える吸放湿性 実証動画」より)

従来品の生地と『アセドロン』の生地の肌離れ性を比較。それぞれの生地に同量の水を垂らしすべり落ちるまでに時間を計測したところ、計測開始から2分30秒足らずで『アセドロン』に採用した生地はすべり落ちた(YouTubeグンゼ公式チャンネル「グンゼ史上最高クラスの汗解消テクノロジー『アセドロン』さらさらの肌離れ性 実証動画」より)

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