会社から退職を求められても、すんなり応じる必要はありません。労働者としての権利を主張して退職を拒否するか、仮に退職を受け入れるとしても何らかの条件を提示しましょう。
本記事では、会社から退職勧奨を受けた場合の対処法を解説します。
1. 会社から退職勧奨を受けたら、応じる必要はあるのか?
「退職勧奨」とは、使用者が労働者に対して任意に退職するよう求めることをいいます。
退職勧奨を受け入れるかどうかは、労働者の任意です。したがって、退職勧奨を受けたとしても、退職する必要はありません。
日本の法律上、使用者が労働者を解雇することは非常に難しくなっています。使用者が高度の経営危機に陥っている場合や、労働者が悪質な就業規則違反を犯した場合などでなければ、使用者による一方的な解雇は認められません。
言い換えれば、労働者にはほとんどの場合、会社に残って賃金を貰い続ける権利があります。
もちろん、転職によって賃金が上がり、働きがいも得られるなどの事情があれば、退職勧奨を受け入れてもよいでしょう。
いずれにしても、退職するかどうかの選択肢は労働者側にあることを踏まえて、退職勧奨へどのように対処するかを決めるべきです。
2. 会社から退職勧奨を受けた際に、提示すべき退職の条件
退職勧奨をすんなり受け入れるのではなく、退職の条件を提示して会社と交渉すれば、有利な条件で退職できる可能性があります。
たとえば、以下のような退職条件を提示することが考えられます。
・退職金の上乗せ
・有給休暇の買い取り
・退職時期の後ろ倒し
・再就職先のあっせん
など
特に退職金の上乗せは、退職勧奨に際して交渉の題材となるケースがよく見られます。
標準的には賃金の3か月分から6か月分程度、多ければ賃金の1年分から2年分程度の退職金が上乗せされる傾向にあります。
具体的な金額は会社との交渉によって決まるので、希望する額への引き上げを目指して粘り強く交渉しましょう。
上乗せされた退職金を得ることができれば、仮にすぐ転職先が見つからなくても、退職金と雇用保険の基本手当で十分生活が成り立ちます。
退職勧奨を受け入れるつもりであっても、すんなり受け入れるのではなく、上乗せ退職金などを求めて交渉してみましょう。
3. 退職勧奨が違法となるケース
退職勧奨は、あくまでも労働者に対して任意に退職することを求めるものです。
退職勧奨が強制に及ぶ場合は、実質的な解雇に当たるものとして、退職が無効と判断されることがあります。
たとえば、以下のような退職勧奨は強制的な側面が強いため、退職が無効と判断される可能性が高いです。
・労働者を長時間にわたって部屋に閉じ込め、複数人が圧迫面談をする形で退職勧奨を行った。
・労働者が拒否しているにもかかわらず、何度もしつこく退職勧奨を行った。
・退職勧奨を拒否した労働者を仕事がない部署に異動させて、全く仕事を与えなかった。
・「退職勧奨を拒否したら解雇する」などと言って、労働者に退職を迫った。
など
このような退職勧奨を受けたら、労働基準監督署などに相談しましょう。
4. まとめ
会社から退職勧奨を受けても、それを受け入れるかどうかは任意です。
現在の職場の待遇、良い転職先が見つかるかどうか、上乗せ退職金などの好条件による退職が認められるかどうかなどを総合的に考慮して、自分にとって最善の選択をしてください。
取材・文/阿部由羅(弁護士)
ゆら総合法律事務所・代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。ベンチャー企業のサポート・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。東京大学法学部卒業・東京大学法科大学院修了。趣味はオセロ(全国大会優勝経験あり)、囲碁、将棋。
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