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【ヒット商品開発秘話】昭和産業の「もう揚げない!!焼き天ぷらの素」が累計販売数200万個超えを達成した理由

2024.09.27

■連載/ヒット商品開発秘話

 寿司と並ぶ和食の代表といえば天ぷら。衣がサクっとした揚げたてのウマさは格別だが、家庭ではつくりづらい。大量の油を使う上に調理後の油の処理など後片付けが面倒だからだ。

 気軽とはいかない天ぷらづくりを簡単にしたことで好評を博しているのが、昭和産業の『もう揚げない!!焼き天ぷらの素』(以下、焼き天ぷらの素)。2022年9月に発売され、2024年7月末時点での販売数が200万個を超えた。

 水と『焼き天ぷらの素』を混ぜ合わせてつくった生地に具材を絡ませてから、大さじ3杯程度の油を熱したフライパンで焼くだけ。少量の油で焼くので、調理が終わったらキッチンペーパーでフライパンを拭き取るだけで後片付けが完了する。

天ぷらを少量の油で焼いてつくれるようにした昭和産業の『もう揚げない!!焼き天ぷらの素』。1袋の内容量は120グラムで、大さじ3杯程度の油で2~3人前の天ぷらが調理できる。後片付けはキッチンペーパーでフライパンを拭くだけと簡単

家庭用商品で重要なことはお客様の不満解決

 企画・開発されたのは発売の1年ほど前。家庭での天ぷらづくりに関して不満の声が多く聞かれたことが背景にあった。多かった不満は、大量の油を使う、使い終わった油の処理が面倒、キッチンが汚れる、といったものである。

「天ぷらが好きな人は多いと思いますが、その割には家庭であまりつくられません。その理由を調べると、大量の油を使うことから油の処理が面倒になることなどに不満があることがわかりました」

 このように話すのは開発を担当した水島徳大さん(開発センター家庭用グループ)。少ない油で天ぷらがつくることができれば大部分の不満を解消できると考えた。

天ぷらを内食で食べない理由

 ただ、同社にとっては食用油も主力商品である。油の消費量を抑える商品に対し異論は出なかったのであろうか? 当時の心境を水島さんはこのように振り返る。

「当社は油も扱っていますし世界で初めて天ぷら粉を発売した天ぷら粉のパイオニアです。確かに油を減らす天ぷら粉を開発することに不安はありました。ただ、お客様の不満を解決する商品を出すことは家庭用商品でとても重要なことです。上司や当時の社長(新妻一彦前社長)から『新しいことにどんどんチャレンジしてほしい』と声をかけてもらったので自信をもって開発を進めることができました」

 実際、営業部門はどう捉えていたのか? マーケティングを担当する井村まみさん(セールスプランニング部マーケティンググループ)は次のように話す。

「家庭用商品を扱う営業部門は食用油だけではなく小麦粉や天ぷら粉など様々な商品を提案するので、油が売れなくなるから困るといった反応はありませんでした。どちらかといえば、そんなに少ない油で天ぷらがつくれるのは凄いという反応のほうが多かったです」

昭和産業
開発センター家庭用グループ 水島徳大さん
セールスプランニング部マーケティンググループ 井村まみさん

揚げたて同様のサクサク食感を焼いて再現

『焼き天ぷらの素』のパッケージ裏面には原材料がこのように表示されている。

小麦粉(国内製造)、でん粉、食塩、卵黄粉(卵を含む)/乳化剤、ベーキングパウダー、カロテン色素

 特別な原材料は使われていない。それでもわずかな油で天ぷらがつくれるのは原材料の配合を工夫したことと、小麦粉やでん粉、ベーキングパウダーを選定したからであった。

 天ぷら粉のパイオニアとして長年蓄積してきたノウハウと、ホットケーキミックスやお好み焼粉のように焼いてつくる商品のノウハウを生かして開発を進めたが、配合試験は100回以上繰り返し実施した。原材料単体でも小麦粉で約10種類、でん粉で約20種類、ベーキングパウダーで10種類以上を試し最適なものを選んだ。

「たくさんの油を使って揚げる天ぷらと違い具材と油の接している面が小さいので、サクサクした食感を出すのは大変でした」と水島さん。目指した食感を実現するため、火抜け(火が通っていない生のところに熱が伝わること)が良く、硬すぎず柔らかすぎないものにする原材料の配合バランスを実現するのは簡単ではなかった。衣がつきすぎて厚くなると火が通りにくくなり、逆に薄すぎると目指した食感が実現できないことから、具材への衣のつき具合も適度になるよう考慮しなければならかった。

『焼き天ぷらの素』を使った天ぷらの調理イメージ

本来であれば2022年3月に発売する予定だったが、半年延期することになった。「いいものを発売したかったので、発売を遅らせてでも開発を継続することにしました」と水島さん。現在発売されているものの完成度を100とすると、3月に発売しようとした場合の完成度は70か80あたりだった。「開発だけではなく営業などのいろいろな人の意見を聞いて、やる気を高めてもっといいものをつくることにしました」と水島さんは話す。

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