iPhoneに独自AIが搭載され、オンデバイスでのAI処理が可能となる。AIを手軽かつ安全に使えるようになることで、PCやスマホはますます進化し、あなたのビジネスを強力にサポートする存在に。DIME最新号では、「Copilot+PC」や「AIスマホ」といった最新AIデバイスの選び方を徹底ガイドしている。
本記事ではAIがPCやスマホなどのデバイスに搭載されてより身近になっていく時代に、ビジネスパーソンはAIとどう向き合うべきか。AIエンジニアであり、AIをテーマにしたSF作家としても活躍する安野貴博さんに、6つの質問を投げかけた。
AIは共に成長するパートナー。ビジネスを進化させる鍵となる存在です
AIエンジニア・SF作家
安野貴博さん
1990年、東京都生まれ。東京大学工学部卒業後、ボストン・コンサルティング・グループを経てAIスタートアップを2社創業。2024年東京都知事選では15万票以上を獲得した。最新刊『松岡まどか、起業します AIスタートアップ戦記』(早川書房)が発売中。
Q1|一気に身近になったAI。ビジネス環境にどんな影響を与えているのか?
──安野さんの小説『松岡まどか、起業します』では、新入社員の松岡がAIを友人やパートナーのように使い、スタートアップを成長させる様子が描かれています。松岡が仕事にAIを導入しようとすると、上司から「セキュリティ上の理由でNG」と拒否されます。その時、主人公はこう言います。「それならクラウドじゃなくて手元で動くローカルモデルを使えば」と。まさにこの状況が現実で起きています。
「AIが様々なデバイスで使いやすくなることで、ビジネスパーソンの利用も進んでいくと思います。話しかければすぐに応えてくれる頼れる存在です。ワークフローのどこにAIを導入するかを見極め、チームに参加させれば、効率が飛躍的に向上します。AIが成長し、精度が上がるほど、役割も大きくなるでしょう」
Q2|AIは仕事を奪うのか。
──多くのビジネスパーソンは、AIが自分の仕事を奪ってしまうのではないかという不安を抱いています。
「AIに取って代わられる作業が出てくるのは確かです。ただし、日本の労働力は今後、少子高齢化により急速に減少していきます。そのため、AIを活用することで、世の中のサービスレベルを維持することが可能になります。
私は1社目の会社として、2016年にコールセンター向けのAIチャットボット会社を起業しました。AI対話エンジンによって応答を自動化することで、導入企業では業務の約8割をAIが対応しました。
しかし、カバーが難しい領域もありました。AIは人と比べてコミュニケーションが得意ではありません。特に、以前に対応したことがないような、新しい質問に対応する場面では、人間の方が適しています。非常に難しい案件は、やはり人間の判断が必要です。AIが進化しても人の仕事を0から100までリプレースすることはなく、人にしかできない仕事はたくさん残ると考えています」
Q3|AIの進化に伴い、今後仕事をする上でどんなスキルを伸ばすべきか。
──AIの進化は仕事を効率化するチャンスに感じます。この時代に必要なスキルとは何でしょうか。
「特別な技術や高度なITスキルの価値はもしかしたら下がっていくかもしれません。自分のやりたいことを明確に言語化する基本的なコミュニケーション能力があれば、AIは応えてくれます。
次に、どのAIを使うべきか、このAIには何ができるのかを理解し、適切な指示を出すことが大切です。そのために少しずつ新しい情報を学び続けることで、よりAIを効果的に使いこなせます。AIの技術は進化しており、誰でも簡単に使いこなせるようになってきています。むしろITリテラシーが低い人にもプラスになるはずです」
すべてAIで作成した小説のプロモーション動画
デビュー作『サーキット・スイッチャー』刊行時のプロモ動画は、すべて生成AIで制作。こんなことがビジネスパーソンにもできるかも。
Q4|安野さんはどのように仕事に生成AIを活用している?
「都知事選では、私の政策を学習させた、AI応答システム『AIあんの』を作りました。選挙期間中24時間、YouTube Liveと電話で、質問や意見に回答しました。同時に、いただいた意見はGPTで解析、可視化しながら、政策のアップデートの議論に役立てました。また、プログラミングでは、『ChatGPT』や、AIでプログラミングのコーディングをアシストする『GitHub Copilot』を使って、コードの下書きをすることが多いですね。小説を書く際は、人物や風景の描写など、時間がかかる部分をAIに一度書いてもらいます。さらに英語のメール返信のドラフトや、英語でプレゼンをする1時間ほど前に、口慣らしの話し相手になってもらうこともあります」
都知事選の選挙期間中に話題となった「AIあんの」は累計6200件以上を回答。都民の意見80以上を取り入れ、政策をアップデートした。
Q5|AIを使って進化させていきたい分野は?
──AIの可能性をさらに広げるために注力する分野は?
「この1年で大きく2つのテーマに取り組んでいます。一つは、画像や音声、映像を生成するAIをどう活用すれば、人の心を動かせるものを作り出せるかということです。手始めに、著書『サーキット・スイッチャー』の出版にあたって、AIで映画の予告編のような映像作品を作ってみましたが、今まで映像を生成する際の数々の技術的なハードルが突破されていたことに驚きました。もう一つは、都知事選でアプローチしたように、情報の流れをどのように設計すれば、より民意を反映した政治システムが実現できるかということです。この2つのテーマは、今後も精度を高めていきたいと思っています」
Q6|今後AIに期待することは?
──最後に、AIに対する期待や使い方のアドバイスを聞かせてください。
「人だからできることを、AIに置き換えたいとは思っていません。人しかできないことは人がやればいいので、機械がサポートできるのにまだされていない領域を埋めていくことに意義があると感じます。ビジネスパーソンにはAIを活用してビジネスチャンスを広げてほしいですね。私を含めAIの専門家であっても、正直、すべての領域に詳しいわけではありません。多くの人がまだ同じラインに立っているので、AIをスキルとして身につけることで得をすることはたくさんあります。人がAIを上手く使い、両者が良い関係で共存できる未来に期待しています」
DIME最新号は「iPhone 16」に搭載される独自AI「Apple Intelligence」を徹底解説!
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取材・文/安藤政弘 撮影/藤岡雅樹