ティーチングやコーチングに続き、重要な人材育成の方法とされるメンタリング。人材を育てる上でどのような効果をもたらすのか?定義と共に解説します。
目次
メンタリングとは、対話によって人材を育成する手法のことをいいます。
しかし、効果やメリット、具体的な実施方法などについて知らない人もいるのではないでしょうか。メンタリングのメリットや実施方法、注意点などについて詳しく解説します。
メンタリングとは?
メンタリングとは、人材育成方法の一つで、先輩社員が後輩社員の相談を受けながら成長をサポートする方法です。まず、メンタリングの基本的な定義や、コーチングとの違いについて詳しく見ていきましょう。
■1対1で対話する人材育成方法
メンタリングとは、社歴の長い社員がメンターとなり、メンティーである後輩の成長を1対1でサポートする人材育成方法です。単なる業務指導にとどまらず、キャリア相談やメンタル面のケアまで幅広くサポートします。
メンタリングの特徴は、メンターがメンティーに一方的に教えるのではなく、対話を通じてメンティーの主体性を引き出す点にあります。例えば、新入社員が業務に行き詰まった際、メンターは『こうすべき』と指示するのではなく、「どうしたらうまくいくと思う?」と問いかけてメンティーの気付きを促します。
■メンタリングとコーチングの違い
1対1の対話によって、悩みを解決する方法には『コーチング』もあります。一見メンタリングと似ているように思えますが、その手法には大きな違いがあります。
コーチングは、プロジェクトの進め方や目標達成に向けたスキルや技術の習得など、具体的な実務に焦点を当てることが多いです。例えば、時間管理やコミュニケーション能力の向上など、実務に直結するテーマの質問を行い、相談者が自ら答えを導き出すサポートを行います。課題や悩みに対してコーチが直接アドバイスをすることはありません。相談者自身が自分で答えを導き出すのです。
一方、メンタリングはキャリア全般の相談や人間関係の悩みなど、より広範なテーマに対応します。メンターは自身の経験を基に具体的なアドバイスを提供し、メンティーの成長を促します。
メンタリングの効果
メンタリングは、組織と個人の双方に大きな効果をもたらす可能性があります。特に注目すべき効果は『主体的な行動の促進』『離職率の低下』『社員同士の信頼関係構築』の三つです。メンタリングがもたらすこれら3つの主要な効果について、具体的に解説していきます。
■主体的な行動を促す
メンタリングは、メンティーの主体性を引き出す効果的な人材育成手法です。従来の一方的な指導とは異なり、メンターとの対話を重ねることでメンティー自身が課題解決の糸口を見つけ出します。
例えば、新入社員が業務上の問題に直面した際、メンターは具体的な解決策を提示するのではなく、「この状況でどのような選択肢があると思いますか?」といった質問を投げかけます。これにより、メンティーは自分で考える習慣を身に付けていけるでしょう。
メンタリングを通じて、自ら解決策を模索する姿勢を身に付けていけば、主体的に行動できるようになります。
■離職率の悪化を防ぐ
メンタリングは、若手社員の離職率低下にもつながるとされています。新入社員や若手社員は、自分に向いている仕事なのか・上司や先輩とうまくコミュニケーションが取れないといったさまざまな悩みを抱えがちです。
これらの悩みを一人で抱え込むと、最悪の場合、離職につながる可能性もあるでしょう。しかし、メンタリングを通じて気軽に相談できれば、心理的な負担が大幅に軽減されます。
不安や悩みが解消されれば、仕事に対するモチベーションが高まりやすく、定着率の向上へとつながるでしょう。
■社員同士の信頼関係を構築できる
メンタリングは、社員同士の信頼関係構築にも影響を及ぼします。メンターとメンティーが定期的に対話を重ねることで、相互理解が深まる可能性があるためです。
信頼関係が構築されると、メンティーはより安心して悩みや課題を相談できるようになるという、相乗効果も期待できます。さらに、この信頼関係は当事者だけでなく、周囲の社員にも波及効果をもたらします。
オープンで誠実なコミュニケーションの文化が醸成され、組織全体の人間関係が良好になっていけば、結果としてチームワークの向上や生産性の改善にもつながるでしょう。
効果的なメンタリングの進め方
メンタリングを効果的に進めるには、事前準備が不可欠です。適切なステップを踏むことによって、人材育成の効果も得られます。それぞれのポイントを押さえ、効果的なメンタリングプログラムを構築しましょう。
■目的やガイドラインを決める
メンタリングを効果的に進めるには、明確な目的とガイドラインの設定が不可欠です。まず、組織が抱える課題を分析し、メンタリングを通じて達成したい目標を具体化しましょう。
例えば、若手社員の育成や女性社員の活躍推進など、自社の状況に応じた目的を設定することが大切です。次に、面談の頻度や形式、使用するツールの選定など、円滑な運用のためのガイドラインを策定します。
頻度は月に1回程度とし、一度の面談にかける時間は60分ほどを目安にするとよいでしょう。メンティーの年齢やメンタリングの目的によって、頻度や時間は異なります。
■メンターとメンティーをマッチングする
メンターとメンティーのマッチングを決める際は、双方の特性や目標を考慮し、相性の良い組み合わせを見つけることが重要です。一般的には、同じ部署の先輩社員や、年齢の近い他部署の社員をメンターとして選ぶことが多いでしょう。
ただし、メンティーによって目指している姿やキャリアは異なります。単に社歴が長かったり、実績を上げたりしている人がメンターとしてふさわしい人物とは限りません。相性を重視する場合は、どのようなメンターを望むのか本人に聞くのも一つの方法です。
■メンタリングを実施する
メンタリングを効果的に実施するには、具体的な手順を踏まえて進めていきましょう。まず、メンターとメンティーの双方に事前研修を行い、制度の目的や心構えを理解してもらいます。
半年から1年の間に、信頼関係の構築状況に応じて「初期段階」「深化段階」「解消段階」といった3段階のフェーズに分けて実施するとよいでしょう。お互いを知る初期の段階では、メンタリングの目的やメンティーの悩みや困り事などを確認します。
何度か面談を繰り返して信頼関係が築けてきたら、新たな心配や懸念事項が出てきていないか確認してみましょう。メンタリングが終盤に差し掛かったら、どの程度目的が達成したか振り返ることも大切です。