昨今、よく耳にする「心理的安全性」とは、具体的にどのようにして守られるものか知っていますか?組織における心理的安全性の作り方を理解して、風通しのいいチームを築いていきましょう。
目次
『心理的安全性』は、良いチームに欠かせない要素です。
自由に意見を言える環境は、チームの生産性や創造性を高める鍵となりますが、その実現は容易ではありません。本記事では心理的安全性の作り方や測定方法、マネジメントのコツを分かりやすく解説します。
組織における心理的安全性の作り方
心理的安全性とは、組織で自分の意見・考えを自由に発言できる状態を指します。誰がどのような発言をしても拒絶される不安がないため、革新的なアイデアが多く生み出されます。心理的安全性はどのように作ればよいのでしょうか?
■質問・相談しやすい環境を目指す
一つ目は、メンバーが自由に質問や相談ができる雰囲気を醸成することです。『愚問はない』という姿勢を明確に示し、どんな質問も歓迎する態度が求められます。
例えば、リーダーが率先して自身の失敗談や学びを共有すれば、メンバーはより自分をオープンにできるでしょう。最後まで傾聴する姿勢を示すことで、安心して自分の考えを表現できるようになります。
チームのコミュニケーションが活発化し、創造性や生産性が向上します。
■メンバーの発言機会を均等にする
特定の人物に発言が偏ると、他のメンバーが意見を言いづらくなる可能性があります。メンバーの発言機会を均等にし、何も発言せずに終わる人がいないようにしましょう。
ミーティングでは、司会者が意識的に発言の少ないメンバーに声を掛けるようにします。
順番に意見を述べる『ラウンドロビン方式』を採用し、全員に発言の機会を設けるのもおすすめです。
オンラインツールを活用すれば、普段あまり発言しないメンバーも気軽に意見を出せるようになります。発言機会の均等化は、多様な視点を取り入れることにつながりますが、メンバーの性格や状況を配慮して、発言を強制しないようにしましょう。
■価値観の共有・受容もポイント
価値観の共有・受容も心理的安全性を高める重要なポイントです。チームの目標や大切にする価値観を全員で共有すれば、メンバー間の理解が深まります。
例えば、ミーティングの際は、『課題を改善するため』『顧客満足度を上げるため』といった目的や価値観を共有することで、チームに一体感が生まれます。
チームの価値観を共有すると同時に、一人一人の価値観を受け入れることも重要です。メンバー同士が受容し合えれば、何でも発言できる雰囲気が育まれるでしょう。
心理的安全性を高めるマネジメント方法
経営者やチームのリーダーには、心理的安全性を高めるためのマネジメントが求められます。ここでは、『1on1ミーティング』『ピアボーナス』『日常的な雑談』という三つの方法を紹介します。
■1on1のミーティング
1対1で行う1on1ミーティングは、多くの企業で実施されている手法です。上司と部下の率直な意見交換を通じて、信頼関係が構築されます。
ポイントは、業務の進捗確認だけでなく、個人の目標や悩みについても話し合うことです。例えば、上司が自分の心の内を伝えた上で、「不安なことはある?」「新しいプロジェクトについてどう思う?」といった質問を投げかければ、本音を引き出せるでしょう。
上司は部下の話を傾聴し、共感的な態度を示すことが大切です。「よく頑張っているね」「一緒に解決策を考えていこう」といった言葉が、部下の安心感につながります。
■ピアボーナス
ピアボーナスは、従業員同士で感謝や称賛を形にする仕組みです。例えば、チーム内で『今週のMVP』を選出し、少額の報酬や感謝のメッセージを贈り合います。
ピアボーナスを取り入れるメリットは、チーム内の貢献が可視化され、互いを認め合う文化が育つことです。メンバーは自分の意見や提案をちゅうちょなく発信できるようになります。
ただし、ピアボーナスばかりに気を取られて業務がおろそかになったり、自分だけボーナスがもらえないことに落ち込んだりする人も出てくるため、管理者やリーダーは運用ルールの構築と目的の周知を徹底しなければなりません。
■たわいない雑談も重要
たわいない雑談も、心理的安全性を高める重要な要素です。「趣味は何?」「週末はどう過ごした?」といった業務以外の話題を共有することで、部下との距離が縮まります。雑談し合える関係性が構築できてこそ、仕事の相談もスムーズに行えるのです。
ただし、自由な雑談を許すと、業務に支障を来す恐れがあるため、管理者やリーダーは、雑談の時間や場所にも配慮する必要があります。
多くの企業では、雑談や交流の機会を意図的に設けています。例えば、会議や面談の前に雑談タイムを設ければ、緊張感が和らぎ、より良い意見交換が可能となるでしょう。ランチ会や飲み会、勉強会を定期的に実施するのもおすすめです。
心理的安全性の程度を確かめるには
心理的安全性は目に見えない概念です。組織の現状を把握するには、どのような方法を用いればよいのでしょうか?心理的安全性を測る具体的方法とポイントを解説します。
■「7つの質問」を試みる
『7つの質問』は、メンバーに匿名で回答してもらうアンケートです。1999年にハーバード大学のエイミー・エドモンドソン教授が論文で提唱しました。
定期的に実施すれば、心理的安全性の変化を追跡できるでしょう。以下が質問内容です。回答は5段階評価で行います。
(1)チーム内で失敗をしても非難されないか?
(2)チームのメンバー達は、課題に対して自由に問題提起や意見ができるか?
(3)チームメンバーは自分との意見の違いを理由に他者を拒絶しないか?
(4)安心してリスクを冒せる環境か?
(5)チームメンバーに助けを求めることはできるか?
(6)他人の仕事や成果を蔑むメンバーはいないか?
(7)チームメンバーと居る時、個人の才能やスキルが尊重され、活躍できるか?
結果を分析することで、チームの強みや改善点が明確になります。例えば、『チームメンバーは自分との意見の違いを理由に他者を拒絶しない』の評価が低ければ、多様性を尊重する文化づくりが必要だと分かるでしょう。
■チーム・職場の雰囲気から確かめる
チーム・職場の雰囲気から判断する方法もあります。会議中の発言の頻度や内容を観察してみましょう。全員が積極的に意見を述べ、建設的な議論が行われているなら、心理的安全性は高いと判断できます。
日常的なコミュニケーションにおいては、メンバー間で自由に質問や相談がなされ、失敗を恐れずにチャレンジする姿勢が見られれば、良好な兆候といえるでしょう。
適度な冗談や笑いが飛び交う職場は、心理的に安全な環境である可能性が高いですが、表面的な和やかさだけでなく、本音で語り合える関係性があるかどうかも見極める必要があります。