目次
MVVの策定は、一貫性の担保やブランドイメージの強化など多くのメリットがあるものです。また、医療や三菱におけるMVVには異なる意味があります。会話のなかで何を指しているのか、もしくは実際にビジネスでどう策定すればいいのかと不安になることがあるでしょう。
この記事では、詳しい意味や重要視される理由、似た概念との違い、メリット、策定時のポイントを解説します。さらに呼吸器系の医療や三菱・自動車関連での意味もあわせて確認しておきましょう。
「MVV」とは?簡単に基礎知識を解説
ビジネスシーンにおける「MVV」は、持続的な企業の成長に向けて注目されている概念です。組織の存在意義や方向性などを示すものであり、多くの企業で組織の基盤として取り入れられ重要視されています。
はじめに、MVVとはどのような概念なのか、簡単に基礎知識を解説します。一つひとつの要素の意味やMVVが重要視されている理由、似た表現である企業理念・経営理念・行動指針・パーパスとの違いを確認しておきましょう。
■MVVはピーター・F・ドラッカーが重要性を提唱した概念
MVVとは、「ミッション(Mission)」「ビジョン(Vision)」「バリュー(Value)」の3つの単語から頭文字を取った略語です。経営学者であったピーター・F・ドラッカー氏が重要性を提唱した概念で、企業経営の中核に置くべき経営方針だといえます。
それぞれの意味は以下のとおりです。
・ミッション(Mission)……企業が果たすべき使命。存在意義。
・ビジョン(Vision)……企業が目指す理想像。
・バリュー(Value)……それらの実現を目的とした行動指針や行動基準。
これら3つの単語が意図するものを、それぞれ確認しておきましょう。
・ミッション(Mission)
MVVにおける「ミッション(Mission)」とは、企業が果たすべき使命・存在意義を明文化したものです。日本語では「使命」と訳されます。
社会に対して企業がどのようなことをなんのためにやるのか、どのような価値を提供したいのか、企業がやるべきことはなにかなどを表します。「企業理念」「経営理念」などと似たような概念です。
ミッションを明文化し、組織のメンバーが理解することで、実現に向けてやるべきことを理解して仕事を進められるようになります。
・ビジョン(Vision)
MVVにおける「ビジョン(Vision)」とは、企業が目指す理想像・中長期的な目指すべきゴールのことです。この場合のビジョンは、ミッションと関係性の深い概念です。
ビジョンの決定によって、企業としてミッションを達成するにはどのような状態であるべきか、ミッションを実現できた組織の将来像はどのようなものかが明文化できます。企業の未来の具体化により、組織のメンバーが同じ方向性を目指せるような企業風土が作られていきます。
・バリュー(Value)
MVVにおける「バリュー(Value)」とは、ミッション・ビジョンの実現を目的とした行動指針や行動基準のことです。企業が目指す将来像であるビジョンの実現に向けて、組織のメンバーがどのような行動をすべきか、何を大切にしなければならないのかという価値観を言語化します。
バリューは、それぞれの社員の行動や判断の基準となるものです。明確なミッションやビジョンがあっても、バリューがはっきりしていないと実現が難しいでしょう。そのため、これらミッション・ビジョン・バリューの3つの要素はすべてが重要です。
■MVVが重要視されている理由
MVVの策定は、多くの企業や組織が力を入れています。なぜ重要視されているのかというと、従業員にとっての羅針盤となるため、また企業の存在価値の明確化につながるためです。
多くの社員がいても、方向性が揃っていなければ烏合の衆になって、組織の生産性が大きく低下してしまうかもしれません。MVVが明確になっていれば、全従業員が自社のあるべき未来をイメージできるようになり、ブレない組織作りにつながります。
MVVの策定によって、顧客や求職者などに企業の価値を伝えられることも理由のひとつです。近年、企業に対する判断基準として社会的な貢献が重要視されるようになりました。MVVがあることで企業の社会的な貢献や存在意義を対外的に発信でき、自社のイメージアップにつながります。
■MVVと似た企業理念・経営理念・行動指針・パーパスとの違い
MVVと似た概念に、企業理念・経営理念・行動指針・パーパスなどがあります。これらの意味やMVVとの違いも確認しておきましょう。
企業理念は、企業の存在意義や価値観、考え方を明文化したものです。MVVのうち、ミッションに似ています。基本的に企業理念は設立以降も変化しないのに対し、ミッションは情勢に応じて変化する可能性があります。
経営理念は、経営方針や具体的な手段を明文化したものです。MVVのうち、ビジョンに似ています。
行動指針は、企業理念や経営理念の実現に必要となる行動を明確にしたものです。MVVのうち、バリューに似ています。
パーパスは、目的や意図のことです。ミッションと混同されやすいものの、ミッションやビジョンの根幹となるものがパーパスです。
ビジネスでMVVを策定するメリット
ビジネスでMVVを策定するメリットは、以下のとおりです。
1.企業としての一貫性の担保
2.ブランドイメージの強化
3.採用活動での魅力発信と自社にマッチする人材の確保
4.従業員エンゲージメントの向上
それぞれのメリットを詳しく解説します。
■1.企業としての一貫性の担保
MVVの策定によって組織の「芯」となるものができ、企業としての一貫性の担保につながります。
もしもメンバーがバラバラな方向性でいては、意思疎通を図るのが難しいでしょう。全員が共有するぶれない軸を持つことで、やるべきことが明確になり、変化に柔軟に対応しつつもスピーディーな意思決定ができるようになります。
また、広報活動においても企業としての一貫性を担保しやすくなるでしょう。
■2.ブランドイメージの強化
ブランドイメージの強化も、MVVの策定によるメリットです。MVVの策定によって、商品やサービスの独自のストーリーや価値観が強調できます。
また、企業としての方向性の言語化によって一貫性のある社外的なPRがしやすくなるため、認知度の向上やファン獲得につなげられるでしょう。ブランドイメージが強化できれば、顧客だけではなくパートナー企業や従業員からの信頼感も高められます。
■3.採用活動での魅力発信と自社にマッチする人材の確保
「どのような会社なのか」が言語化されているため、採用活動でも自社の魅力が伝えやすくなることもメリットです。
また、明確なMVVを発信することで、それに共感する自社にマッチしやすい人材を集められます。
MVVの策定は、採用活動の合否の判断基準にもいい影響を与えます。MVVによって社内共通の価値観が醸成されることで、採用担当者の個人的な価値観や考えで合否が左右されにくくなるのです。企業の価値観と合うかどうかを判断しやすくなり、採用のミスマッチ防止にもつながります。
■4.従業員エンゲージメントの向上
従業員エンゲージメントの向上も、明確なMVVの策定によるメリットです。目指す方向性などが共有できることで、組織内で一体感が生まれます。これにより、社内コミュニケーションが円滑になり、会社の居心地がよくなるなどの効果も期待できるでしょう。
また、各々の作業が組織共有の目的を達成するためだと理解することで、仕事に対するモチベーションを上げる効果があります。
MVVを策定する際のポイント
先述のとおり、MVVの策定にはさまざまなメリットがあります。これらのメリットを引き出すためには、具体的かつ客観的で的確なMVVを策定し、浸透させることが大切です。
それでは、MVVを策定するタイミングや方法、気をつけるべきポイントなどを確認していきましょう。
■MVVを策定するタイミング
MVVを策定する理想的なタイミングは創業時です。とはいえ、MVVは情勢に応じて変化する可能性があるものです。
創業時に策定したMVVに固執せず、社会や経営状況の変化に応じて見直すといいでしょう。多くの場合、企業にとって大きな転換点となるタイミングで策定します。
たとえば社長が代替わりしたり、グループ傘下の子会社が増えたり、株式上場したり、組織の体制や企業方針が大きく変わったりしたタイミングなどです。また、創業から長い期間が経ったときにも、MVVを策定し直すことがあります。
■MVVを策定する方法
MVVを策定する際は、以下のような手順でおこないます。
1.事業や根本的な思想を整理する
2.市場ニーズや社会環境、ステークホルダーを分析する
3.MVVを設定する
4.社内の人の合意を得る
5.理解促進を図る
MVV策定時は、まず経営にかかわるメンバーで事業の主目的や事業内容、想い、将来像などを話し合って整理します。3C(顧客・競合・自社)分析などで市場ニーズや社会環境を分析し、企業に求められている価値や責任への理解を深めましょう。
分析した情報にもとづいてシンプルかつ具体的にまとめ、ミッションやビジョンなどを決めます。さらに、その内容が社内の人の共感を得られるか、社外への影響はポジティブかなどを考慮します。
そのうえで、実際に表彰・評価制度へ反映させたり経営者から発信したりなどして、策定したMVVを広めて理解促進を図りましょう。
■MVV策定時に気をつけるべきポイント
MVV策定時には、以下のようなポイントに気をつけてください。
・社会情勢や時代を考慮して策定する
・端的で理解しやすい言葉を用いる
・MVVに一貫性を持たせる
MVVは、社会情勢や時代によって共感を得にくくなることがあります。現在の社会情勢に合う言葉を選ぶとともに、時代の変化によってMVVが合わなくなった場合には表現を見直すといいでしょう。
端的で理解しやすい言葉を用いることも大切です。社内外の人から共感を得るMVVを策定することで支持を得やすくなるため、端的でわかりやすくて共感しやすい言葉を用いましょう。
ミッションやビジョン、バリューの一貫性も重要です。また、MVVの共通イメージを持てるように、日ごろからイメージしやすいような情報を発信しましょう。