今、社会全体が舵を切る時期。オルタナティブな提案こそが“成熟”の証
MICHIRU:改めてシリーズ名でもある「リジェネラティブ グッド」に込めた想いを聞かせていただけますか?
渡邉:「リジェネラティブ」とは再生や回復という意味を持つ言葉です。サステナブルが一定の状態を維持していくのに対して、リジェネラティブはより良くなっていくという意味が含まれている。これまでの社会は人間のために地球の資源を活用することが常識でした。でも今や資源の枯渇によって悪循環すら生まれていますよね。そろそろ回復させないといけない。回復させながら経済を回していくやり方に舵を切って行かないといけないと感じています。
「ジェネラティブ グッド」シリーズが実現する回復と循環のイメージをお客さまにも共有している
今回の下田のクロモジについても「ウカ イズ シャンプー/コンディショナー」を僕らが製造・発売することで、森の再生活動が進んで、海の豊かさが戻ってくる。それとともに地元の経済の活性化にも繋がります。自然も社会も再生・回復しながら循環し続ける、そんなシステムをつくっていきたい。
MICHIRU:ブランドや企業にとって今まで良しとしてきたシステムから、リジェネラティブな方向に舵をきるのはすごく大変なことなのではないかと思うんですけど。
渡邉:上場しているような大企業では急に変わるのは難しいかもしれないですが、うちくらいの規模であればシフトしやすいんです。社会全体としてはかなり息が長い戦いになると思っています。でも、うちが始めることによって関係する会社や人が変わったり、大企業が気にするようになったりして、少しずつ世の中が変わっていくはず。だからこそ社会に対してもお客さまに対してもオルタナティブな提案をし続けていきたいし、オルタナティブであることがこれからの時代の成熟の在り方だと考えています。
実際、今回のプロジェクトもサプライヤーさんをはじめ、OEM企業の方々も相談してみるとみなさん、すごく興味を持ってくださった。お話を聞くと、常々何かできないかと考えていたとおっしゃるんです。もちろんスケールさせて利益を出すことは大前提ですが、みんな同じ想いなんだ、というのを感じました。
MICHIRU:ウカさんがきっかけとなって動き出せた、という会社や人もいらっしゃったんだろうなと想像できます。そうやってウカさんが変わることで、世の中がちょっと良くなっていく。それも循環ですね。
「再生・回復」をテーマにしたストーリーのこれから
MICHIRU:「リジェネラティブ グッド」シリーズはもう第二弾の構想もできているんですか?
渡邉:今は石垣島に「回復」をテーマにしたリトリート施設を作るプロジェクトが進行しています。マインドも含めて自然に人が癒されながら、自然も癒していくような場所をつくっていけたら。そこでは土壌の開拓も始めていて、レモングラスなど熱帯地域の植物を育てていく予定です。その植物を生かして、「ウカ イズ」と同じストーリーラインで第二弾を展開していけたらと考えています。
MICHIRU:マインドも含めて、というところがポイントですね。これからのビューティーは外側を美しくすることを超えて、体の内側、そして心に向けてのケア、癒しも求められているように思います。
渡邉:本当にそう思う。会社として華やかな部分にももちろんチャレンジはしていきます。でもその前提に常にリジェネラティブであるということを持って進んでいくつもりです。
次回、後編では時代に先駆けて舵を切る、渡邉弘幸氏のものづくりの原点を聞く。
<プロフィール>
渡邉弘幸(わたなべ・ひろゆき)
ウカ代表取締役CEO/大学卒業後、博報堂に入社。2009年、夫人でありネイリストとして活躍する渡邉季穂(わたなべ・きほ)の祖父が創業した向原(現・ウカ)に取締役副社長として入社。美容室「エクセル」から「ウカ」へのリブランディングのほか、教育機関「ウカデミー」、オリジナルプロダクトの開発、「ウカフェ」の立ち上げなどに携わる。
MICHIRU(みちる)
メイクアップアーティスト・ビューティーディレクター/渡仏、渡米を経て、国内外のファッション誌や広告、ファッションショーやメイクアイテムのディレクション、女優やアーティストのメイクなどを数多く手がける。また体の内側からきれいになれるインナービューティを提唱するなど幅広く活躍中。本連載ではナビゲーターを務める。
取材・構成/福田真木子 撮影/黒石あみ