イケアがグローバルで毎年行っている調査「Life at Home Report」によると、世界で55%、日本では51%の人が「眠りは家の中の暮らしにおいて、最も重要かつ健康的な活動である」と回答している。また、成人の二人に一人が現状の睡眠において不満をもっているという。
猛暑の夏が過ぎ、そろそろクーラーなしで眠れるようになった今こそ、質の高い睡眠を生活に取り入れたいもの。イケアが睡眠をテーマに行ったイベント「SLEEP CAMP」に登壇した立命館大学大学院テクノロジー・マネジメント研究科の枝川義邦教授は、本人が自覚していない睡眠不足の状態でも、積み重ねると睡眠負債となり、健康に影響を及ぼす危険が高くなると言う。
「睡眠不足が重なると睡眠時間の借金が重なるような状態となり、睡眠負債となります。負債が重くなって睡眠不足の状態が続くと、認知症やうつ病、高脂血症や糖尿病、ガン、肥満などといった、さまざまな病気や症状の原因となることが、明らかになっています」と教えてくれた。
睡眠不足による経済損失は意外と大きい
「いい明日は、いい寝心地から」を掲げるイケアのイベントで講演を行った枝川義邦教授
枝川教授によると、日本人は睡眠に関して、あまり良い状態では無いと言う。OECD(経済協力開発機構)が行った世界の睡眠時間や厚労省が発表した世界と日本の睡眠時間では、日本人の平均睡眠時間は世界でも短い。特に厚労省の調査では働き盛りの人で、6時間未満の人も多かった。
厚生労働省 「良い目覚めは良い眠りから 知っているようで知らない睡眠のこと」解説書より
OECD, Gender data portal 2021: Time use across the world
枝川教授は、睡眠時間が影響する経済効果にも注目しており、睡眠不足による日中のパフォーマンスの低下は大きく、経済損失となっている点を指摘している。「睡眠という生活習慣自体が、経済に損失を生んでいるのです」としている。
「生活習慣の経済効果というと、例えばお酒を飲み過ぎてしまい、次の日に二日酔いで働けなくなった経験のある人は多いと思います。これはお酒が与える経済損失の一つですが、こうした生活習慣が仕事の効率に与えるダメージはわかりやすいもののひとつです。ほとんどの人は、二日酔いの辛さや次の日のことを考えて、お酒を控えようと考えるでしょう。
経産省商務情報政策局ヘルスケア産業課による企業の「健康経営」ガイドブックより「プレゼンティーイズム損失コストと健康関連指標の関係一覧」より
でも、実はこうしたお酒などより、睡眠休養が十分でない事による損失が一番多いのです。一人当たり約33万円の経済損失となります」と、経済損失の面からも睡眠不足に注意を促している。