小学館IDをお持ちの方はこちらから
ログイン
初めてご利用の方
小学館IDにご登録いただくと限定イベントへの参加や読者プレゼントにお申し込み頂くことができます。また、定期にメールマガジンでお気に入りジャンルの最新情報をお届け致します。
新規登録
人気のタグ
おすすめのサイト
企業ニュース

モバイル通信技術の世界的リーダーQualcomの存在感が増している理由

2024.09.18

アップルとの複雑な関係

【長年のパートナーシップ】

アップルは、クアルコムのモデムチップをiPhoneに採用しており、特にLTEや5Gモデムチップについてはクアルコムの技術に依存してきました。iPhoneの中核をなす通信機能において、クアルコムのチップは欠かせない存在です。クアルコムの技術は、iPhoneが提供する高速かつ安定した通信能力の基盤を支えています。

【法的争いとライセンス契約の問題】

しかし、2017年から2019年にかけて、両社の関係は急激に悪化しました。問題の核心は、クアルコムが課していた特許ライセンス料に対するアップルの不満です。アップルは、クアルコムが不当なライセンス料を請求しているとして、2017年に訴訟を提起しました。クアルコムも対抗訴訟を行い、両社の間で法廷闘争が続きました。この争いは、業界全体に大きな注目を集め、他のスマートフォンメーカーにも波及しました。

【和解と再びの協力関係】

2019年、両社は和解に至り、クアルコムが引き続きアップルに5Gモデムを供給することが決定しました。和解の一環として、アップルはクアルコムに一度の支払いを行い、新たなライセンス契約を締結しました。これにより、クアルコムは引き続きアップルの重要なサプライヤーであり続けることとなり、特に5G通信が普及する現在、クアルコムのモデムチップはiPhoneの通信性能を支える重要な部品となっています。

【アップルの自社開発への移行と未来の展望】

一方で、アップルはクアルコムに依存し続けることなく、将来的には自社で5Gモデムを開発し、独立する計画を進めています。アップルは既に自社製のAシリーズチップを開発し、iPhoneやiPadに搭載していますが、次のステップとしてモデムの自社開発にも取り組んでいます。特に2021年には、アップルがインテルのモデム部門を買収し、自社開発に向けた大きな一歩を踏み出しました。

しかし、5Gモデムの開発は非常に複雑かつコストのかかるプロセスであり、まだ数年はクアルコムの技術に依存すると見られています。クアルコムも、アップルが自社開発のモデムを成功させるまでの間、アップルに対してモデムチップを供給し続けることができるため、現時点では安定した収益源を確保しています。

【クアルコムにとっての影響】

アップルはクアルコムにとって非常に重要な顧客であり、特に5Gモデムの市場では大きな役割を果たしています。アップルとの契約は、クアルコムの売上の約2割を占めるほどの大きな影響があり、iPhoneの販売が好調である限り、クアルコムはその恩恵を受け続けるでしょう。

しかし、アップルの自社モデム開発が進むにつれて、クアルコムはアップル依存から脱却し、新たな収益源や成長分野に注力する必要が出てくる可能性があり、これが懸念材料でもあります。

株価推移と今後の見通し

クアルコムの株価は、過去数年間で大きな成長を遂げてきましたが、特に 5G技術の普及 がその成長を加速させました。2020年から2021年にかけて、5Gスマートフォンの需要が急増し、クアルコムの収益もこれに伴い急増しました。

【株価の動き】

クアルコムの株価は2020年から2021年にかけて急騰し、コロナ禍におけるデジタル化の進展と5G需要の高まりによって新たな高値を更新しました。しかし、2022年以降はインフレの高進と世界的な経済不安により一時的に調整局面を迎えています。それにもかかわらず、長期的な視点では、クアルコムは依然として成長余地が大きいと考えられています。

【今後の展望】

クアルコムの未来は、5Gだけでなく、 IoT(Internet of Things) 、 自動車産業 、 AR/VR などの成長分野にも深く関わっています。クアルコムは、これらの分野に向けたチップセットの開発を進めており、特に自動運転車向けの技術開発においても大きな進展を見せています。また、拡張現実(AR)や仮想現実(VR)向けの技術にも積極的に投資しており、これらの分野の成長がクアルコムの収益をさらに押し上げることが期待されています。

アップル以外にも気になるクアルコムの課題

クアルコムは強力なビジネスモデルを持っていますが、いくつかのリスクも抱えています。

【競合の台頭】

台湾の半導体メーカーMediaTekの急成長は、クアルコムにとって大きな脅威です。低価格帯市場でのシェアを拡大しており、今後もこのトレンドが続く可能性があります。

【技術のライフサイクル】

通信技術の進化は非常に早く、クアルコムは継続的に革新し続けなければなりません。もし新しい通信技術や競合他社の製品がクアルコムの技術を上回ることがあれば、同社の競争力は大きく損なわれる可能性があります。

【地政学的リスク】

クアルコムは世界中のメーカーにチップを供給していますが、米中貿易摩擦やその他の地政学的な緊張が同社のビジネスに影響を与える可能性があります。特に中国市場はクアルコムにとって重要な市場であり、この地域でのリスクは注視する必要があります。

結論

クアルコムは、モバイル通信技術のリーダーとして、特に5G分野で他社をリードする強力な技術基盤を持っています。同社の特許ポートフォリオとライセンスモデルにより、競争優位性を確保し、安定した収益を得ています。今後も、5Gの普及や自動運転技術、IoTの成長とともに、クアルコムはさらなる成長が期待されますが、競争や地政学的リスクにも注意が必要です。

クアルコムは、モバイル通信技術の未来を形作る中心的な企業として、今後もベンチマークされていくと考えられます。

<引用>
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-09-07/S0MPCDT1UM0W01
https://finance.yahoo.com/quote/QCOM/
https://www.nikkei.com/nkd/company/us/QCOM/finance/
https://www.qualcomm.com/

文/鈴木林太郎

@DIMEのSNSアカウントをフォローしよう!

DIME最新号

最新号
2024年9月13日(金) 発売

DIME最新号は「AIスマホ Copilot+ PC 完全攻略ガイド」!SKY-HI、パリ五輪代表Shigekixも登場!

人気のタグ

おすすめのサイト

ページトップへ

ABJマークは、この電子書店・電子書籍配信サービスが、著作権者からコンテンツ使用許諾を得た正規版配信サービスであることを示す登録商標(登録番号 第6091713号)です。詳しくは[ABJマーク]または[電子出版制作・流通協議会]で検索してください。