「PODCAST AWARDS」ノミネートも果たした人気の秘密
そもそも山本さんと伊藤さんの出会いは和歌山県の若手農家の会だったという。
山本さん
「伊藤さんは先輩なんですが、第一印象は面白いことを話す人、私都合で言えばちょうどいい感性の方だと思いましたね」
「以前ゲストでお越しいただいた時、私が作りたい「楽しい農業ラジオ」のスタンスに最も合う方だと思いました。それを機に『永遠の準レギュラー』に笑」
――なぜ『永遠の準レギュラー』?
山本さん
「ポッドキャストはyoutubeのようにコンテンツで直接的にお金を稼げるものではないので、簡単にモチベーションが途切れやすいデバイスです。「よるののうか」の場合、伊藤さんが冷めてしまったり、しんどさを感じてしまうともう難しい。そんなポッドキャストをいくつも見てきました」
「なので、伊藤さんにとって負荷が少なく、番組に対し都合よく重要人物になれたり他人行儀になれたりというラインが「準レギュラー」ではないかと。余談ですが、昔『内村プロデュース』という大好きだった番組に、さまぁ~ずの大竹さんが毎回出ていたのにいつも「レギュラーゲスト」というポジションだったことがこの発想の起源です笑」
そんな素敵な関係性の2人が生み出した「よるののうか」が評価され、ノミネートされたのが『JAPAN PODCAST AWARDS』。優良なPodcastコンテンツを発掘し応援する日本初のアワードであり、『今、絶対に聴くべきPodcast』がここにあると言っても過言ではない。
わずか数年でこの発信力と認知度は凄まじいものがあるが、なせここまでリスナーの心を捉えることができたのか?2人に聞くと…
伊藤さん
「やはり、こうへい君の話が面白いのが一番かと思いますね。対面して、話を聞いているだけで惹き込まれると思うことが多いです。それにコーナーも独特でパクリやアレンジの具合も絶妙!ときどき全く共感できないこともあるけど、まあそれも御愛嬌ということで笑」
山本さん
「私は若干突飛なズレたことをいきなり言い出すのを求められていますが、伊藤さんはほどよくツッコミながら、ゆるく手綱を握る、その様が面白いんでしょうね笑」
もちろん2人は芸人でもタレントでも喋りのプロでもない。それに番組制作の経験がある訳でもない、所謂ただの農家だ。
当然聴く方のハードルが下がっているとは言え、「素人なのに面白い」という印象ではなく「プロと変わらない安定感」を感じさせる。それも人気の要因かもしれない。
山本さん
「笑える面白いものを目指していますが、僕らは所詮はアマチュアです。でもやるからには、そのポジションの人間が話すからこそ面白くなるものを作らないといけないと思っています」
「芸人は「笑い」をベースにし、ラジオ局は「スポンサー・コンプライアンス」をベースに作らなければなりません。我々は「生々しい農家の価値観」をベースに番組を作っています。ここにマネできないオリジナリティが出ていると思いますね」
ここで、特に反響が大きかった番組企画を紹介しよう。まだ聴いたことがないという方は2人のおすすめを是非一度堪能してほしい。
◆伊藤さんおすすめ!「結婚したい農家に捧ぐ!【Howto農家婚活】前編」
「誰か講師を招いて専門的なことを聞くのが好きなので最近では結婚相談所の回ですね。それと、機械も好きなので農業機械についてのクイズ回は反響があったように思います」
https://podcasts.apple.com/jp/podcast/id1484514700?i=1000544490308
◆山本さんおすすめ!「事実かもしれないけど、真実じゃないんだよ!」
「この回はちょっと真面目な回で、農家とEC業者の価値観の違いに焦点を当てたエピソードトークなのですが、配信後X上で議論を呼び少々恐怖を感じてしまって…」
「でも、先輩配信者さんが「あの回は良かったから自信を持っていい。議論を呼ぶというのは皆んなが真剣に考えたってことでもあるからそれはよいことなんだよ」と励ましてくれたんです。尊敬している先輩からほめられた唯一の回でもあるので印象に残ってます」
https://podcasts.apple.com/jp/podcast/id1484514700?i=1000601535447
――ポッドキャストを始めて良かったことは?
伊藤さん
「見ず知らずの方から「よるののうか」聞いてます!全くおんなじ声で感動しました!みたいなことを言ってもらえたりして距離が近くなったことですね。産直ECでも「ラジオ聴きました!高速代にしてください!」などと指名買いをしていただけることも増えました。ぼくはただ呼ばれて喋っているだけなのに認知してもらえたことが本当に良かったと思ってます」
山本さん
「リスナーさんのおかげでネットでの農産物の売上が伸びました。ポッドキャストで農産物を売るケースは特殊な例だと思いますが、ポッドキャストへの労力が大きすぎるので、他の農家さんには本当にオススメしないです笑」
「また、番組作りのプロの方と出会えたり、メディアで取り上げてもらえたり、ただ片田舎で農業をしているだけでは決して経験できないことをさせていただいたと思いますね。あと私がポッドキャストを始めた理由の一つに、『若手農家が抱える孤独感を和らげたい』というのもありました。私自身、教員から農家になって、畑でひとり自営業者として働くというのは何かレールから外れた感があって孤独だったんです。だからこそ、私たちの番組に助けられているという農家からの声は一番役に立ったと感じて嬉しく思います」
そして、ポッドキャストを始めて最大の“事件”と言えば、『ジェーン・スーと堀井美香の「OVER THE SUN」』で紹介されたことだろう。
山本さん
「堀井美香さんが『よるののうか』を発見してくださいまして、あの時は大変お世話になりまして。今でもスーさんと堀井さんには当園の農産物を楽しんでいただいております。本当にありがとうございます!ポッドキャストドリームです!」