宇宙生活でも、日常で得られる幸せを
トークセッションでは、厳しい宇宙空間における「心の豊かさ」について、婚活リアリティ番組『バチェロレッテ・ジャパン』の3代目バチェロレッテとして出演した武井亜樹さんらが語り合った。
宇宙空間で必要なものと言われると、高い機能性さえあれば十分だというイメージを持ちがちだが、閉鎖された宇宙空間では想像以上のストレスに晒される。だからこそ心の豊かさが必要になる。JTとして本プロジェクトに携わった御神村さんは、当たり前が当たり前でなくなる宇宙空間において、心が豊かな状態のために必要なものを開発するうえで、日常生活に潜む窮屈さや生きづらさに改めて気づくきっかけになったという。
地上の生活で当たり前にできていたことが宇宙空間では困難なこともある。そこにストレスを抱えてしまうと考えたのが、3COINSに携わる肥後さんだ。日常生活をちょっと豊かにすることを目指す3COINSとして、宇宙でも地上と同様の日常を送るためのプロダクトを開発したいという。そのひとつとして、現在宇宙空間における収納アイテムを製作し、来年国際宇宙ステーションでの実証試験を検討している。
東京大学で航空宇宙工学を専攻したのち、経済産業省に入省し、現在は一般社団法人宇宙美容機構所属のライターとして活躍する武井さんは、今回作られた2商品を実際に試し、地上での様々な場面で使えそうだと感じたそうだ。例えば海外旅行先では水道水が引用できない場合がある。そんなときに『Chupica』があれば水を使わず口の中をキレイにできる。また、春先のキャンプでは身体をサッと拭きたいと思っても水が冷たいため難しい。そんなときに『湯るまる』があればボディシートとして使える上、温泉のようなリラックス感も得られるのではないかと武井さんは期待している。
将来、宇宙事業が民間にも広がった先の展望について聞かれた際は、健康や美容に気を遣う立場として、少しでも自分が一番綺麗な状態で宇宙にいる思い出を残したいと語った。現在の宇宙飛行士は活動に支障をきたさないために長い髪の毛を切ることがあるという。美容という観点から将来の宇宙事業がより楽しいものであるような活動をしたいと決意を新たにしていた。
ただ生きるだけでなく、より個人らしく、より幸せに――それは地上でも宇宙でも変わらない、社会のなかで生きる人間が求める当然の権利だといえる。それを実現するだけでなく、地上の生活にも役立てることで、すべての人の心を豊かにするべく「THINK SPACE LIFE」は活動している。今回発売される2商品は、宇宙と地上を一つにつなぐ第一歩だろう。
取材・文/桑元康平(すいのこ)
1990年、鹿児島県生まれ。鹿児島大学大学院で焼酎製造学を専攻。卒業後、大手焼酎メーカー勤務などを経て、2019年5月から2022年8月まで、eスポーツのイベント運営等を行うウェルプレイド・ライゼストに所属。現在はフリーエージェントの「大乱闘スマッシュブラザーズ」シリーズのプロ選手として活動中。代表作に『eスポーツ選手はなぜ勉強ができるのか』(小学館新書)。