日進月歩の宇宙開発は、民間事業も増えており、いよいよ一般市民が宇宙へ進出する未来が見えてきた。その過程で得られた知見や技術を用い、地上での生活をより豊かにしたい――その思想のもと立ち上がったのが、JAXAやJTらが参画する事業共創プラットフォーム「THINK SPACE LIFE」だ。2つの商品がTHINK SPACE LIFE発として商品化するにあたって開かれたトークイベントから見えてきた、宇宙と地上をつなぐ人たちの思いとは。
宇宙生活で起きる課題は、地上生活の困りごとも解決する
進歩を続ける宇宙開発。日本でも続々と宇宙関連のスタートアップ企業が生まれ、開発競争は激化の一途をたどっている。宇宙開発といえば、宇宙船や宇宙ステーションといったハードウェアに目が行きがちだが、宇宙空間での生活をより快適にするための技術開発も大きな課題だ。そして、宇宙生活で起きる課題を解決するための技術は、地上での生活をより豊かにする可能性を持つ。
「THINK SPACE LIFE」は、宇宙生活の課題をもとに、宇宙と地上双方の暮らしをより良くする研究開発や新規事業創出を目指す事業共創プラットフォームだ。JAXA宇宙イノベーションパートナーシップ(J-SPARC)の事業化促進に資する活動として2020年に発足、現在はNPO法人ミラツクが運営している。
そして今回、THINK SPACE LIFE発として2商品が地上での発売が決定。「『THINK SPACE LIFE』地上実装記念トークイベント」が開催された。
1つ目の商品として紹介されたのは、マウスウォッシュタブレット『Chupica(チュピカ)』。2017年に愛知県で創業した、オーラルケア製品を手掛けるベンチャー企業のTSUYOMIが開発した。
2024年9月10日から16万錠分の先行販売を開始。味はBUBBLE LEMONフレーバーの1種類で、20粒入りと2粒入りで販売される。
1粒を10秒ほど噛み砕くと出てくる泡を口の中で馴染ませ、そのまま吐き出すか水ですすぐことでオーラルケアができる。植物由来成分が配合されており、水資源が少なく、自然と触れ合えない宇宙空間でも口の中をスッキリとでき、気分転換にもつながる。
地上での商品化にあたり、ターゲットを虫歯予防意識の高い10~20代に設定。人と会う前の口臭ケアをはじめ、コーヒーやタバコの後の美白ケアを想定した商品展開を狙う。
続いて紹介されたのは、温感ボディシート『湯るまる』だ。開発したのはルフロ。同社は天然温泉水と温泉鉱石から数十種類のミネラルを抽出・濃縮した特許技術「クラフト温泉」を活用した事業展開を行なう会社だ。
『湯るまる』も『Chupica』と同じく24年9月10日から発売開始。商品ラインナップはゆず、カモミール、無香料の3種類。
香りや温感といった温泉の持つ価値を通じて、宇宙生活という過酷な環境でもストレスを軽減することを目的として開発された。そして、その効果は地上の制約された環境下でも同様に発揮される。例えば長時間狭い密室で拘束される飛行機やキャンプなど自然環境下で過ごす時だ。実際に、キャビンアテンダントから高い評価を受けているそうだ。