業績良好でイノベーションを起こし続ける企業に共通する特長は何か? 技術力、資本力など様々だが、人である社員に注目した『ビロンギング』という新しい概念が、人手不足とデジタル化の両方が加速する現代社会では重要だという。
なぜ重要なのだろうか。ビロンギングを理解するために必要な「人的資本経営」や「ダイバーシティ」「インクルージョン」などのキーワードと共に本記事で解説する。
「従業員を大切にする」自体は古くからあるが…
本題に入る前に、まず、人的資本経営について理解したい。人的資本経営とは、企業の経営資源の「ヒト・モノ・カネ」のうちヒト、つまり従業員を、企業価値を生み出す資本として捉える経営の考え方である。
■経済産業省での「人的資本経営」の定義
“人材を「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる経営のあり方”
引用元:経済産業省
従業員に教育投資を行なったり、社内制度を充実なものにしたりして、仕事へのモチベーションも従業員の満足度も高めることで、上手に働いてもらった結果、業績が向上し、様々なイノベーションが起きることが期待できる。
一方、人に注目した経営の在り方は、目新しいものではない。日本を代表する電器メーカー「パナソニック」を一代で築き上げ、『経営の神様』の異名を持つ松下幸之助氏が、従業員一人一人を大切にしていたのは有名な話である。雇用を守り人材を育成してこそ企業の持続的な成長や様々な社会課題の解決につながっているのは、当たり前なのである。
■人的資本経営の状況は、有価証券報告書への開示義務がある
引用元:パナソニックホールディングス有価証券報告書(2023年度)
例えばパナソニックホールディングスの開示資料では、“「人的資本経営」の考え方として、(中略)付加価値を高める重要な4つの要素”として、ケイパビリティ、社員エンゲージメント、社員を活かす環境、多様な人材を掲げている。
人的資本経営の実践例としてわかりやすい「リスキリング」
近年、「リスキリング」という言葉が流行っている。@DIME読者の皆さんも職場で一度は聞いたことがある言葉ではないだろうか。企業がわざわざコストをかけて従業員を再教育するのは、経営資源の「ヒト・モノ・カネ」のうち「ヒト」の価値を高めることにより企業価値向上につなげたいといった意図がある。現代日本における人材は「売り手市場」であり、企業が求める人材要件にぴったりはまる人がなかなか採用できない。採用できたとしても1人あたり数百万円のコストがかかってしまう。このような状態が慢性化しつつあるのが、リスキリングに目が向いた背景であろう。
つまり、経営陣が「スキルを持つ人を採用するより、スキルが足りない社員を教育する方が合理的だ」と判断を下すのならば、管理職は従業員に適切な教育を行ない、上手に働いてもらうしかないのだ。