売上高1兆円未満なのに日本の時価総額ランキングで第5位、営業利益率は55%を超え、社員の平均年収が2200万円のキーエンス。私が就職活動をしている頃、教授から「仕事で死ぬ覚悟があれば、推薦してやる」と言われたが、恐ろしがって誰もエントリーしなかった。他の日系企業が苦戦している中、キーエンスは直近20年来、年平均20%を超える高成長を続けている。これほど高い成果を、なぜ実現させることができたのか。キーエンスで約10年、勤務した経験をもつ岩田圭弘さんに分析してもらおう。
キーエンスはなぜすごいのか
岩田さんは2009年に慶応大学を卒業後、キーエンスに入社。翌年、新人ランキング1位となり、2012年下期から3 期連続で事業部営業ランキング1位を獲得した。そんな実績をもつ岩田さんだからこそ知ることができたキーエンスの強さの秘密をまとめたのが、「仕組み化がすべて “最強企業”で学んだチームで成果を出すためのマネジメントの本質」(SBクリエイティブ発刊、定価1760円)である。
岩田さんによると、キーエンスは人ではなく仕組みを育てることで、驚異的な成長率を実現させていると言う。「決して人には依存せず、仕組みで人を動かし、仕組みですべてを解決する」会社だった。
確かに一人のスタープレイヤーがいくら頑張っても、30人分の仕事を一人で成し遂げることは不可能である。たとえスタープレイヤーが突出した実力の持ち主であっても、せいぜい社員5人分の働きをカバーするのが限度だろう。30人分の仕事を、たった一人でカバーすることはできない。組織が大きくなればなるほど、仕組みを作って全員がスタープレイヤーに近づく努力が必要となってくる。
岩田さんによると、キーエンスでは一人のスタープレイヤーに依存するのではなく、チーム全体で成果を出せる仕組みを作って、それを浸透・定着させ、実行し、絶えず改善させていると言う。そして、特に成果が出る行動を促す「仕組み化」ができているのが最大のポイントであると分析してくれた。
仕組み化が企業を救う
キーエンスは誰が社長になっても会社が成長し続けることが可能だと岩田さんは言う。「決して人には依存せず、仕組みで人を動かし、仕組みですべてを解決する。『仕組みづくり』こそが、マネジメントの本質でありリーダーの仕事はこの『仕組みを作ること』こそがすべてである」と教えてくれた。
こうした仕組みが社内で確立できたら、企業の課題の多くは解決できるはず。ありがちな「リーダーばっかり忙しい」や「人を育てる時間がない」といった悩みは仕組み化で解決できる。特に後継者難に悩む創業者にとって、トップが変わっても維持できるマネジメントの構築は、必須の課題となっている。もう少し掘り下げて「仕組み化」を実行するための手法について具体的に教えてもらおう。