世界40か国で事業を展開するコンサルティングファームのベイン・アンド・カンパニーでは、アジア太平洋地域の主要日用消費財(FMCG)企業に関する調査を実施。彼らが海外市場進出を加速させており、海外からの収益が国内収益を上回るペースで増加していることなどを明らかにした。
本稿では同社リリースを元に、その概要をお伝えする。
アジア太平洋地域でトップ50位内のFMCG企業の海外収益成長率は年間11%
2022年度の収益データに基づくと、過去10年間(2012/13年度〜2022/23年度)におけるアジア太平洋地域のトップ50のFMCG企業の国内収益成長率は7%だが、海外収益成長率は年間11%と、大幅に上回っている。
そしてこの成長は日本企業の国際市場における成功が牽引している。
トップ50入りした日本企業のうち、約3割の企業が収益の50%以上を海外市場から得ており、韓国企業も同様の傾向を示している。一方、中国企業は主に国内市場に依存しており、国際市場からの収益は限定的だ。
FMCG市場における国際化の進展には、国内市場の成熟度や文化的影響力、拡大のタイミング、政府の支援、外交関係など、複数の要因が影響している。
企業の国際展開状況を業界別に解析すると、家電・電子機器業界が特に成功しており、同社が調査したアジア太平洋地域に本社を置く上場家電・電子機器企業45社すべてが国際的に事業を展開している。
そのうち約6割の企業が収益の半分以上を海外市場から得ていた。家電・電子機器業界が成功している要因として、消費者の好みが市場間で比較的似ていること、政府からの支援、高い製造コストや参入障壁による競争の少なさなどがあげられる。
これに対して、違う業界構造を持つFMCG企業ではまだ14%にとどまっている。
アジア太平洋地域で成功しているFMCG企業は、地域販売をする際、3つの拡大ステップを踏んでいる。まず最初に隣接するアジア太平洋市場へ進出、その後ヨーロッパや北米への進出、そして将来の新興市場として中東、ラテンアメリカ、アフリカに展開するのだ。
■海外展開を成功に導く3つの戦略
また、海外展開の成功には、以下の3つの戦略が効果的であることが判明した。
「コアビジネスから開始する海外展開」
企業は国内市場で競争力のあるコア事業を海外販路拡大に活用している。
「新たなコアビジネスの構築」
自社の主要製品がターゲット市場では競争力が低い場合に新たな製品やブランドを構築する戦略だ。例えば、資生堂は1980年代にフランスで香水事業を新たなコアビジネスとして確立し、その後2000年以降に複数の欧米の美容ブランドを買収。同時に、主要ブランドの浸透を促進した。
「国際市場向けに開発」
国内市場で強力なコア事業を確立できていない新興企業が、自国における製造の強みやデジタル機能を活用。ターゲット市場でまだニーズに対して十分応えられていない製品やブランドを開発する戦略だ。
これらの戦略を巧みに駆使して、特に日本のFMCG企業がアジア太平洋地域におけるグローバル展開を牽引している。
構成/清水眞希