Green(グリーン)とDigital(デジタル)を活用した中小企業の変革を目指すフォーバル GDXリサーチ研究所は、中小企業のESG経営について調査をした「研究レポート」を2024年8月23日に発行した。本稿では同社リリースを元に、その概要をお伝えする。
ESGとはEnvironment(環境)、Social(社会)、Governance(ガバナンス=企業統治)の頭文字から作られたワード。企業がESGに配慮した経営を行なうことは、社会に対する責任を果たす存在として投資家や金融機関からの注目され、さらに市場からの企業評価も高まるとして期待されている。
前回の研究レポートに続いて、今回は中小企業のESG経営について、G(企業統治)に着目して調査が行なわれた。
企業の存在意義を示す経営理念を策定している企業は41.5%
■経営理念の有無について
まずは、経営理念の有無についての結果から。企業統治を進めるうえで最も重要なことの一つが経営理念の有無だと考えられ、経営理念に基づき企業統治に関する取り組みが決まり、実行される部分も多々ある。
本設問について経営理念を策定している、と回答した企業は41.5%と半分に満たない状況だ。2022年2月にも同様の調査を行なっており、それと比較すると、前回調査も今回同様に約4割という結果だった。
従業員が企業の方針を理解して、それに適した活動を行なうためにも非常に重要な概念であるため、経営理念を策定する企業がさらに増えることが期待される。
■コンプライアンス・倫理に関する方針の開示
次はコンプライアンス・倫理に関する方針を従業員へ開示しているかどうかについての調査結果だ。「開示している」が約2割と少ない状況であり、また、そもそも「コンプライアンス・倫理に関する自社の方針を作成していない」という回答が最も多く、54.7%だと判明した。
コンプライアンスや倫理に関する問題が起こった際に企業の考えや方針が明確になっていないと、業員により異なったり、会社として統一性のない対応となってしまう可能性が考えられる。
税の透明性確保のためのリスク管理についてはできていない企業が31.9%
■税の透明性確保のためのリスク管理と不正行為に対する対応方針の従業員への開示
続いて税の透明性確保のためのリスク管理についての調査結果だ。ガバナンスの観点でいうと税の透明性をしっかり確保し、処理をすることが重要。
税の透明性確保のためのリスク管理については、できている企業が68.1%、できていない企業が31.9%でした。中小企業の場合、税務・会計に関わる人材が社内に不足していることや、税理士・会計士に丸投げしていて自社で管理できておらず、状況が把握できていないことが推察できる。
不正行為に対する対応方針の従業員への開示についての調査では、「不正行為に関する自社の方針を定めていない」企業が最も多く42.5%だった。
「開示している」企業が最も少なく23.1%、方針はあるが「開示していない企業」は34.4%という結果だ。不正行為に対する対応方針の従業員への開示については、まだまだ進んでいない傾向と言えるだろう。
不正行為発生の事態に備え、対応方針を定め、それを従業員に周知する必要があると考えられる。
■第三者認証や認定の取得
世の中やマーケットから求められている経営活動ができているかどうかを客観的に証明する、第三者認証や認定の取得の重要性は増加傾向にある。
ただし調査から各第三者認証・認定について、1つも取得できていない企業が最も多く、回答企業990社のうち673社(回答総数の68.0%)という結果になった。
取得が多い第三者認証や認定については、最も多かったのが健康経営に関する認定・認証(健康優良法人認定等)で180社、続いてDXに関する認定・認証(DX認定,DXマーク認証等)が99社、 GXに関する認定・認証(ISO 14001、KES等)が42社に。
一方で、 今回のテーマであるESGに関する認定・認証(ESGマーク認証等)については8社と少ない状況だった。ESGの促進を証明する第三者認証・認定については、特に中小企業向けのものが世の中に登場してまだ間もないことも関連していると推察される。