子世代就業者の介護は外部サポート利⽤意向が低く、抱え込みやすい
20~50 代の⼦世代は、現役で仕事に就いている人が多い世代だ。
今回の調査対象者のうち、⼦世代の就業者(公務員・会社員・⾃営業・⾃由業を選択した629 人)に、親が要介護になったと仮定して不安を感じることを聞くと、介護を行う家族の「精神面」(55.6%)や「体⼒面」(51.0%)の不安と並んで、「仕事を調整しないといけない」(50.1%)を挙げた人が過半数いた。
⼦世代の就業者にとって、親が介護状態になることは、精神面や肉体面の不安だけでなく、「仕事」に関する不安が大きくなっている。
Q. 子世代の就業者に聞く、親が要介護になったとき不安を感じること(複数回答)
介護経験がない親世代・⼦世代1,000 人に介護に対する考え方を聞くと、全体では53.5%が「外部介護サービスを利⽤するべきだと思う」と答えたのに対し、⼦世代の就業者では47.8%と5.7 ポイント低い結果に。
また、「早めに医師や⾃治体に相談するべきだと思う」も、⼦世代の就業者は31.2%と全体結果(43.3%)より12.1 ポイントも低くなっている。⼦世代の就業者は、デイケアなどの外部サービスのサポートを望む声が少ないようだ。
次に、⼦世代に親が要介護となったときに望むサポートについて聞き、就業者と専業主婦・主夫を比較した。
すると、「デイケアなど短時間でも依頼できるサービス」(就業者57.6%:専業主婦・主夫75.4% 17.8 ポイント差)、「⾏政の⽀援」(就業者54.8%:専業主婦・主夫69.4% 14.6 ポイント差)など、就業者は専業主婦・主夫に比べ外部サポートに頼らない・頼りたくない傾向が見られ、わずかとはいえ4.0%は「サポートは必要がない」と答えていた。
また、「介護休業制度などの職場のサポート」を望むと答えた就業者も35.1%と少なく、周りのサポートやサービスを受けない・受けたくない傾向がうかがえる。
Q. 子世代の仕事別、親が要介護になったときに望む介護サポート (複数回答)
親世代と⼦世代の就業者に、⼦どもは親の暮らしをサポートすべきかと聞くと、「そう思う」と答えた親世代は45.0% だが、⼦世代の就業者では67.1%と高くなっていた。
外部サービスのサポートを望まず、親の暮らしをサポートすべきという意識が高い⼦世代の就業者。もしも親の介護が必要になったとき、一人で抱え込んでしまうことが心配される。
Q.子どもは親の暮らしをサポートすべきだと思う
■調査概要
調査名:ダスキン ヘルスレント 「親子で向き合う介護レポート 2024」
調査時期:2024 年6 月19 日(水)~6 月21 日(⾦)
調査対象:親世代=⾃⾝の年齢が60~80 代で別居の⼦どもがいる男⼥1,000 人(介護経験あり500 人・なし500 人)
⼦世代=⾃⾝の年齢が20~50 代で60~80 代の別居する親がいる男⼥1,000 人(介護経験あり500 人・なし500 人)
調査方法:インターネット調査
調査委託先:マクロミル
※構成比(%)は小数第2 位以下を四捨五入しているため、合計が100%にならない場合がある。
あなたの介護は誰のため?NPO 法人となりのかいご 代表理事・川内 潤さんに聞く 介護の視点のずらし方
介護マインドを変えるため、“介護は誰のためにするのか”という部分を⾒直してみてはいかがでしょうか。
「親のための介護」とおっしゃる方が多いと思うのですが、⾃分の不安を解消するために手厚い介護をされている方も中にはいるようです。
例えば、脳梗塞で倒れた親御さんの介護をしている方で、起き上がって転ぶことを心配するあまり、「転んだら危ないから」と親御さんが動き回ることを止めてしまう。親としても、⼦どもに心配はかけたくないので、本当は動きたくても、動かないようにする。
親孝⾏だと思ってやっている“手厚い介護”が、親御さんが何をしたいかという考えではなく、⾃分の不安を解消するための“リスク管理”になってしまい、親御さんを寝たきりにしてしまうケースもあるのです。
■「⽬が離せない」のはあなたのマインドが原因︖ “⾒ない・知らない”スタンスも必要です
「うちの親は目が離せなくて」とおっしゃる方も多いのですが、目が離せない状態なのではなく、あなたが目を離せないというマインドになってはいないでしょうか︖ 親が転んでけがをした。そんなシーンを⾒たら、ますます“リスク管理”を強めてしまいます。
あなたがどんなに介護を頑張っても、親の⽼いが改善するわけではありません。それであれば、介護はプロに任せて、普段は“⾒ない・知らない”というスタンスで、冷静になることも必要です。
⾃分の不安解消のための介護になっているかどうかは、介護が始まってしまうと⾃分では気付けないものです。
介護が始まる前に、“⾒ない・知らない”というスタンスが家族の関係性を良好に保つこともあるという、そういったスタンスも必要であることを頭に入れておいておくことも⼤切です。
■「Cool Heads but Warm Hearts」 介護には優しさと冷静さの両方が必要です
「Cool Heads but Warm Hearts」は経済学者の⾔葉ですが、「心は温かく共感性を持って、でも頭の中は常に冷静に」というのは、介護の極意としても引⽤される⾔葉です。
日本人は、介護は家族でやるべきだと潜在的に刷り込まれていますが、介護職は⾃分の家族の介護はやるものじゃないと教わります。「Warm Hearts」に頼る家族だけの介護は本当に難しい。
「Cool Heads」のために外部のサービスを利⽤してみてください。例えば地域の掲⽰板を⾒ると、⾃治体主催の介護予防に関する講座や体験会が開催されています。
ちょっとだけ意識を外に向けてみると、頼れる情報がたくさんあります。一人で抱え込まずに「Cool Heads」に頼ってみましょう。
■介護におけるKPI は「良好な家族関係の維持」 家族の価値観で全然違います
ビジネスではKPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)という⾔葉をよく使いますが、介護におけるKPI は「良好な家族関係の維持」に尽きます。ですが、どれだけ⾃分が頑張ったかを重視する人が少なくないのです。
KPI の設定を間違うとビジネスが破綻するように、介護もうまくいきません。家族にはさまざまな形があり価値観も異なります。
介護の方法もこれが正解というものはありません。⾃分の親⼦関係を棚卸しして、うちの家族には何が最適なのか⾒直してみると良いのではないでしょうか。
関連情報
https://healthrent.duskin.jp/
構成/Ara