ベストセラー著者が解説!今こそ読書で情報収集を―知識と教養を深める読書法―
ここまで多様な情報収集方法を見てきたが、古くから身近なメディアといえば、やはり「本」だ。文芸評論家の三宅香帆さんに読書の長所を聞いた。
大事なのは、自分から離れたところにあるものにいかに触れるか
文芸評論家
三宅香帆さん
京都市立芸術大学非常勤講師。京都大学人間・環境学研究科博士前期課程修了。小説をはじめ幅広い書籍の批評・解説を手掛ける。近著『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』が電子書籍含め15万部突破。
自分の知らない〝文脈〟を得られるのが読書の良さ
ネットで自由に情報が得られる昨今、「仕事に忙殺されて、気づけば昔ほど本を読まなくなった」と感じる人も多いはず。だが、「効率化の時代だからこそ、読書が必要」と語るのは、ベストセラー『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』の著者・三宅香帆さんだ。
「欲しい情報だけを即座に得られるSNSやネットニュースに比べると、本は字数が多くて読むのに時間がかかるので、非効率に感じるかもしれません。でも、本には自分がほしい情報に関する周辺情報を得られるメリットがあります。例えば、ビジネスマンの方が注目の起業家について調べる際に、ネットニュースやSNSでは直接的で細切れな情報しか手に入りません。でも、本なら、その人の経歴や業界の歴史、会社が急成長した要因などの周辺情報が盛り込まれた、ひとつの〝文脈〟が描かれます。そして、これら文脈を知ることこそが重要だと私は思います」
なぜ、明日すぐに役に立つ情報ではなく、文脈を知る必要があるのか。
「まず、周辺知識があれば物事の理解が立体的になります。また、アイデアのヒントを生んだり、異なる背景を持つ人との交流を助けたりなど、教養として人生のどこかできっと役立ちます。『仕事で必要な情報以外はノイズだ』と切り捨てるのではなく、あえて読書を通じて他人の文脈を受け入れることで、新たな視点が生まれるはずです」
4つの悩みを解決!読書を楽しむコツ
読みたい本が見つからない……
→SNSで、自分と趣味の合う読書アカウントをフォロー
「好きな作家や作品名でSNSやブログを検索し、好みが似ている読書アカウントをフォローしておくのがおすすめです。読みたい本の情報を自動的にインプットできる環境を作りましょう」
読書をする時間がない……
→通勤中や隙間時間に電子書籍で読む
スマホやタブレットで開ける電子書籍は、隙間時間に読書するにはうってつけ。「私は、移動中は電子書籍、自宅では紙の本で読みます。旅先やちょっとした待ち時間にも電子書籍は便利です」
手に取るのはビジネス書ばかり……
→書店で普段見ない棚から本を選んでみる
「ビジネス書の棚から少し離れて、例えば、入り口近くの売れ筋コーナーから小説やエッセイ、科学書など、普段手に取らない本を選ぶと、今の時代性と新しい知識に触れることができます」
読んでも知識が定着しない……
→感想を言い合える人を見つける
内容について誰かと語り合うのも、読書の醍醐味。「アウトプットすることで知識も定着するし、『ここがおもしろかった』と伝え合うことで新たな視点が生まれ、より一層読書を楽しめます」
取材・文/河原塚英信、藤村はるな イラスト/伊藤健介
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