辞めることを検討し始めた新入社員に対する向き合い方
適当な声かけでは逆効果になってしまう。では、適切に対応するにはどうすれば良いか。漆沢氏は次のようにアドバイスする。
「まずは新入社員の気持ちや問題を真摯に受け止め、具体的なサポートを提供することが重要です。
内定承諾は学生時代までの最後の『正解のある承認』ですが、そこから会社で働くということは、ある意味『正解のない承認』が続くことを意味します。その事実と、先ほどお伝えした前提条件『キャリアショック』もあわせて、マネジメントする側も『正解のない可能性』というものを良い意味づけとして部下に示し、部下はそれを認識することが大切です」
部下のモチベーションを向上させるコツ
漆沢氏は、部下のモチベーションを向上させるための具体的なコツとして、次のことがあるという。
●承認の頻度を増やす
「まずは、承認の頻度を増やすこと。承認は『質ではなく数』が大切ですが、新入社員や若手社員は、自分の仕事に対するフィードバックや評価を求めています。よって承認は質よりもまずは数を重視することが重要です。小さな成功や努力に対しても積極的に承認を行うことで、自己肯定感を高め、モチベーションを向上させることができます」
●可能性を認める
「次に、可能性を認めること。可能性も基本は『質ではなく数』ですが、若手社員には、自分の可能性を認識させることが大切です。こちらも最初は質よりも数を重視し、さまざまな場面で彼ら彼女らの潜在能力や成長の可能性を認める声かけをしましょう。これにより、自分が成長できる環境にいると感じることができます」
●部下と関わる時間を増やす
「部下と関わる時間を意識的に増やすことも今の時代には重要です。昔と違い、会社だけの世界で生きていることが少なく、スマホやパソコンで誰でも多くの出会いや環境に関わることができます。だからこそ、会社以外からの影響も多く、一時的にモチベーションが上がったように見えても数日で変動しやすい傾向にあります。
そのため上司は忙しい中でも、部下と関わる時間を増やす努力が求められます。定期的な面談やカジュアルなコミュニケーションを通じて、部下の悩みや疑問に耳を傾けることが大切です」
●内的動機づけに触れる
「これらのコツも、慣れてしまうと効果は薄れます。上司とのコミュニケーションでモチベーションが上がるということは、単なる外的動機づけに過ぎないからです。将来的に質の高いモチベーションを持たせるためには、部下の内的動機づけに触れる必要があります。内的動機づけを高めるには、個々の価値観や興味に根付いていることを本質から理解し、共感することが重要です。例えば、2-3年目の社員の場合には、部下が興味を持っているプロジェクトや分野について話し合い、それに関連する仕事を任せることで、彼らの自主性を引き出すことができます」