アニメの視聴方法がテレビからネット配信へと移行が進むなか、海外で稼げる産業としてアニメなどのコンテンツ産業が注目されている。実際、日本動画協会(AJA)の集計によると、2022年のアニメ配信市場は過去最高の規模となった。
こうしたアニメ産業への追い風を背景に、2023年(1~12月期決算)におけるアニメ制作業界の市場規模(事業者売上高ベース)は、前年(2757億8300万円)を22.9%上回る3390億2000万円となった。2024年も引き続きアニメ制作の引き合いが強く、現状の業績ペースで推移した場合、2024年のアニメ制作市場は23年と同水準となる3400億円前後での着地が予想される。
そこで帝国データバンクは、信用調査報告書ファイル「CCR」(200万社収録)ほか外部情報をもとに、アニメ制作会社を対象とした業界調査を実施。結果をグラフと図表にまとめて発表した。
本稿では同社リリースを元に、その概要をお伝えする。なお、同様の調査は2023年8月に続き9回目。データは2024年7月時点の集計に基づく。
2023年までのアニメ制作業界:主なトピックス
■人気作・話題作が多く放映、1980~2000年代放映の継続作・リメイクなども活発
日本動画協会によると、2022年のTVアニメタイトル数は317本だった。ピークの2016年(361本)に比べると44本(12.2%)減少したものの、2014年以降は9年連続で年間300本を超える水準が続いている。
アニメ市場をみると、2022年における動画配信サービス(VOD)など「アニメ配信市場」が過去最高の1652億円を記録し、過去10年で10倍に拡大した。アニメの視聴媒体が配信プラットフォームに代替され、多様なアクセスを獲得できたことが主な要因とみられる。
2023年のテレビアニメでは、ライトノベル発では中世ヨーロッパ風世界を舞台とした作品が多いなかで珍しい「中世中華風世界」を舞台とした『薬屋のひとりごと』が人気を博したほか、マンガ・コミック発では『葬送のフリーレン』『【推しの子】』が注目を集め、グッズ市場の拡大にも貢献した。
劇場版では、特に『すずめの戸締まり』(22年11月公開)が興行収入140億円を超える大ヒットとなったことが注目されたほか、『君たちはどう生きるか』など話題作も多かった。
2024年は、テレビアニメでは『鬼滅の刃 柱稽古編』をはじめ引き続き話題作が多くみられる。『転生したらスライムだった件』など人気作品、『みなみけ』など放映から長期間経過した作品の続編制作といったニュースも目立つ。
『らんま1/2』『狼と香辛料』など、1980~2000年代に放映された過去作のリメイク放映も話題となった。劇場版では『名探偵コナン 100万ドルの五稜星(みちしるべ)』『ウマ娘 プリティーダービー 新時代の扉』をはじめ、OPテーマ曲などを含めたクロスメディア戦略により観客動員数を伸ばす作品が多くみられる。
■アニメ制作会社の8割がフリーランスと取引、インボイス制度による影響を注視
2023年10月に施行された「インボイス制度」導入により、フリーランスや個人事業主として働く人の割合が高いアニメ制作現場への影響が懸念されている。仕入取引等のデータ分析が可能なアニメ制作会社200社(2024年7月)を対象に調査した結果、約8割にあたる163社で個人アニメーターなど「フリーランス」との取引が判明し、元請・グロス請では9割に達した。
足元では、アニメ制作各社によるフリーランスとの取引解消といった動きは目立っていないものの、収入の低いフリーランスにとって消費税の負担増なども大きく、動向の注視が必要となっている。