2022年度と比較して高ストレス者率が増減した業種
表7は、2022年度と2023年度の高ストレス者率を比較したグラフだ。2022年度とくらべて高ストレス者率が増加した業種(6業種)を赤枠、減少した業種(9業種)を青枠で示している。
高ストレス者率が大きく増加した業種は「金融業、保険業」次いで、「教育、学習支援業」「運輸業、郵便業」、高ストレス者率が大きく減少した業種は「建設業」、次いで「医療、福祉」となった。
まとめ
以上のように、「運輸業、郵便業」は「仕事のコントロール」、「上司・同僚サポート」において最も不良であるため、総合健康リスクが最も高い結果になった。
2023年度の高ストレス者率は、「宿泊業、飲食サービス業」、「運輸業、郵便業」、「製造業」が不良傾向であることがわかった。これらの業種は、2023年度からインバウンド(訪日外国人)の旅行者数が急増し、業務過多によるストレスの影響を大きく受けたのではないかと考えられる。
また、2022年度と2023年度の高ストレス者率を比較して、高ストレス者率が大きく増加した業種は「金融業、保険業」、「教育、学習支援業」「運輸業、郵便業」、高ストレス者率が大きく減少した業種は「建設業」、「医療、福祉」となった。
高ストレス者率が前年度より増加した「金融業、保険業」では2021年の改正銀行法によって業務範囲が拡大したことを皮切りに、デジタルを活用した変革であるDXの推進が求められるなかで、実現できる人材を確保するための採用活動による業務量増加、既存社員にとっては慣れないデジタル化に対してストレス負荷がかかっていることが要因であるのではないかと推察する。
これに対して高ストレス者率が前年度より減少した「建設業」、「医療、福祉」では2024年4月から時間外労働の上限規制が適用された。こうした制度変更を見越して、2023年度から長時間労働に対する意識変革や残業しなくてもよい環境づくりなどに力を入れた結果が表れているのではないかと考えられる。
業務の特性上、どうしてもリスク値が不良に出やすい業種があるが、その時々の社会情勢に応じて結果は変動していく。業務特性や社会情勢を理解したうえで、自社の状況や課題に合わせた臨機応変な対応が必要となってくるだろう。
文責:押切愛里氏(ストレスチェック研究所 アナリスト)
<調査対象>
調査期間:2023年4月1日~2024年3月31日
調査対象:ドクタートラスト・ストレスチェック実施サービス 2023年度契約企業・団体の一部
企業・団体数:1,390
有効受検者数:479,612人
※ 本件の業種分類は「日本標準産業分類」に準拠している。受検法人数が一定数に満たない業種は評価していない。
出典元:株式会社ドクタートラスト
構成/こじへい