「仕事のコントロール」で最も健康リスクが高い業種は「運輸業、郵便業」次いで「生活関連サービス業、娯楽業」
次に「仕事の負担・コントロール」のうち、「仕事のコントロール」リスクを業種ごとにランキング化したものが、「表3 業種別・仕事のコントロールランキング」だ。
表3は、数値が小さいほど「仕事のコントロールがしづらい」ことを意味し、ストレスチェック設問のうち、次の3問への回答から導出する。
8. 自分のペースで仕事ができる
9. 自分で仕事の順番・やり方を決めることができる
10. 職場の仕事の方針に自分の意見を反映できる
仕事をする際に個人がどれくらい仕事をコントロールできるか、または、自分で決めた順序や方法でしてよいか、その自由度が問われており、コントロールが困難な業種ほど上位にランキングされている。
1位は「運輸業、郵便業」、2位「生活関連サービス業、娯楽業」、3位「医療、福祉」となった。「運輸業・郵便業」は「仕事のコントロール」リスクは最も不良ではあるものの、「仕事の負担」リスクでは最も良好のため、「仕事の負担・コントロール」リスク値の上昇が抑えられたのではないかと考えられる。
「上司からのサポート」「同僚からのサポート」で最も健康リスクが高い業種は「運輸業、郵便業」
総合健康リスクを算出する2つ目の指標「上司・同僚からのサポート」リスクとは、職場の上司や同僚とのコミュニケーションがストレスに及ぼす影響を示している。仕事量が多く、裁量権が少ない職場であっても上司や同僚からのサポートが得やすい職場はリスク数値が良好傾向にあり、逆に仕事量が少なく、自分のやり方で仕事を進められても、上司や同僚からのサポートが得られにくい職場はリスク数値が不良傾向になる。
「上司・同僚からのサポート」のうち、「上司からのサポート」リスクを業種ごとにランキング化したものが、「表4 業種別・上司からのサポートランキング」だ。
表4は、数値が小さくなるほど「上司からのサポートが少ない」ことを意味し、ストレスチェック設問のうち、次の3問への回答から導出する。
47. 次の人たちはどのくらい気軽に話ができますか?/上司
50. あなたが困った時、次の人たちはどのくらい頼りになりますか?/上司
53. あなたの個人的な問題を相談したら、次の人たちはどのくらいきいてくれますか?/上司
次に「上司・同僚からのサポート」のうち、「同僚からのサポート」リスクを業種ごとにランキング化したものが、「表5 業種別・同僚からのサポートランキング」だ。
表5は、数値が小さいほど「同僚からのサポートが少ない」ことを意味し、ストレスチェック設問のうち、次の3問への回答から導出する。
48. 次の人たちはどのくらい気軽に話ができますか?/同僚
51. あなたが困った時、次の人たちはどのくらい頼りになりますか?/同僚
54. あなたの個人的な問題を相談したら、次の人たちはどのくらいきいてくれますか?/同僚
「上司からのサポート」「同僚からのサポート」ともに1位は「運輸業、郵便業」となった。「運輸業、郵便業」や「製造業」は業務を1人で担うケースが多く、安全面の問題からコミュニケーションを取る機会が少ない傾向にある。
高ストレス者率ランキング
高ストレス者率とは、実際に受検をした人のなかで、高ストレス者と判定された人がどれくらいいるかを示した割合で、2023年度にドクタートラストでストレスチェックを受検した企業・団体の高ストレス者率の平均は13.7%(受検者数479,612人より算出)となった。
<高ストレス者とは>
・ストレスの自覚症状が高い人
・ストレスの自覚症状が一定程度あり、かつ仕事の負担と周囲のサポート状況が著しく悪いと判定された人
表6は高ストレス者率を業種ごとに算出したもので、高ストレス者率が高い順に示している。
高ストレス者率が高い業種は「宿泊業、飲食サービス業」、「運輸業、郵便業」、以下「製造業」と続く。高ストレス者率が最も高かった「宿泊業、飲食サービス業」は、全業種平均と比較すると6.7%高い結果となった。
高ストレス者率が高かった「宿泊業、飲食サービス業」、「運輸業、郵便業」、「製造業」では特に新型コロナウイルスの影響で一時は激減したインバウンド(訪日外国人)の旅行者数が急激に回復したことや夜勤や交代勤務等の勤務形態による生活リズムの乱れが高ストレス者率を引き上げた要因ではないかと推察される。
また、高ストレス者率が低かった「公務」、「学術研究、専門技術サービス業」、「複合サービス事業」では、インバウンド(訪日外国人)の旅行者数の増減によって影響されない業種であるとも考えられる。