どんな仕事でもストレスは付きもの。一生懸命働いていればなおさらだ。しかし、健康を害してしまうほど過度なストレスを恒常的に感じる業種であれば考えものだろう。
ドクタートラストはこのほど、2023年度にストレスチェックの実施を受託した1,390の企業・団体における集団分析データをもとに、[健康リスク][高ストレス者率]の業種別ランキングを算出した。
最も総合健康リスクが高い業種は「運輸業、郵便業」「宿泊業、飲食サービス業」「医療、福祉」
ストレスチェックの結果を部署や、事業場ごとに分析した集団分析では、集団の「健康リスク」が示される。健康リスクとは、企業や団体の中で仕事のストレス要因から起こり得る疾病休業などの健康問題のリスクを、標準集団の平均を「100」として示す指標だ。たとえば、健康リスクが「120」の集団は、その集団で健康問題が起きる可能性が、平均より「20%多い」ことを示している。
総合健康リスクを業種別に算出、リスクの高いものから順に並べたものが「表1 業種別・総合健康リスクランキング」だ。「総合健康リスク」は、「仕事の負担・コントロール」リスク、および「上司・同僚からのサポート」リスクという2つの指標をかけ合わせた数値だ。2つの指標への意味の理解と「現状の数値から何を読み取ることができるのか」が健康リスクを扱ううえでは、非常に重要なポイントだ。
表1のとおり、総合健康リスクが最も高かった業種は「運輸業、郵便業」、「宿泊業、飲食サービス業」で、以下「医療、福祉」が続く。
総合健康リスクが最も高い「運輸業、郵便業」は「上司・同僚からのサポート」において、「宿泊業、飲食サービス業」は「仕事の負担・コントロール」において全業種の中で最も数値が高く、大きな負荷がかかっていることがわかる。さらに、「生活関連サービス業、娯楽業」は総合健康リスクが100と標準ではあるものの、「仕事の負担・コントロール」において「宿泊業、飲食サービス業」同様に最も高い数値となった。
「仕事の負担」で最も健康リスクが高い業種は「宿泊業、飲食サービス業」以下「医療、福祉」
総合健康リスクを算出する1つ目の指標「仕事の負担・コントロール」リスクとは、個人ごとの仕事量の負担と、仕事量をいかにコントロールできているか、そのバランスがストレスに及ぼす影響を示している。
たとえば、仕事の量が多かったり困難な業務内容であったりしても、自分なりのやり方やペース配分で行うことができればストレスは高くならず、リスク値は低く算出される。ところが、仕事の負担はそれほどではなくても、順番ややり方が固定され、自らの裁量が生かせない状況では、ストレスは高まり、リスク値は高く算出される。
「仕事の負担・コントロール」のうち、「仕事の負担」リスクを業種ごとにランキング化したものが、「表2 業種別・仕事の負担ランキング」だ。
表2は、数値が大きいほど「仕事の負担が多い」ことを意味し、ストレスチェック設問のうち、次の3問への回答から導出する。
1. 非常にたくさんの仕事をしなければならない
2. 時間内に仕事が処理しきれない
3. 一生懸命働かなければならない
このように仕事の量・処理速度・熱量などを問う設問から構成されており、数値が大きいほど仕事の負担が大きい、すなわち不良であることを示している。
1位は「宿泊業、飲食サービス業」、2位「医療、福祉」、3位「生活関連サービス業、娯楽業」となった。最も仕事の負担リスクが高かった「宿泊業、飲食サービス業」は、2位の「医療、福祉」より0.43ポイント高い結果となった。