期間限定のポップアップ店舗で狙ったクチコミの拡散
現在の売れ行きは『Cook Do』の定番である八宝菜や酢豚よりもいい。置いていない店舗はないほどどこでも見かける八宝菜や酢豚と違い『極麻辣麻婆豆腐用』はまだ置かれていない店舗が見受けられるので、1店舗当たりの売れ行きはなかなか好調ということになる。
特徴的なのが、他の『Cook Do』は7割程度リピーターなのに対し、『極麻辣麻婆豆腐用』の購入者は2人に1人がはじめて『Cook Do』を買った人だということ。とくに若年層が店頭で見かけて気になり購入するケースが目立っている。
発売に当たってはテレビCMの放映や店頭販促物の用意など、これまで通り実施してきたことは取り組んだが、新たなチャレンジとして行なったのが期間限定のポップアップ店舗「極麻辣麻婆豆腐飯店」の開店。『Cook Do』では初となる店舗の開店で、これまで東京と大阪の計2か所で実施した。提供メニューはどちらも、「極麻辣麻婆豆腐定食」(ライス・ザーサイつき/500円)とした。
「極麻辣麻婆豆腐飯店」で提供された「極麻辣麻婆豆腐定食」(商品は含まれない)。ライス・ザーサイつきで500円
東京は2023年9月4日から1週間、新宿の『サナギ新宿』、大阪は2024年3月14日から1週間、梅田の『ヨドバシ梅田』1F南東入り口前に開店。『サナギ新宿』で開催した際は、期間中の来店人数が想定の約1.3倍となる1198人に達した。最初の2日間は『Cook Do』というブランド名を伏せて訴求したことなどもなども相まってSNSで話題になり味わいに好意的な投稿があふれた。
『サナギ新宿』に期間限定オープンした「極麻辣麻婆豆腐飯店」の外観
「テレビCMを見る人ばかりがターゲットではなくSNSをチェックしたりする若年層がターゲットだったので、新宿や梅田に出店しSNSでの拡散を狙いました」と浅生氏。今までの『Cook Do』は全般的に子どもも食べられる本格中華であったが、『極麻辣麻婆豆腐用』は本当に麻婆豆腐が好きな大人のためにつくった商品なので、実際に食べてもらいそれまでと違う本格的な味わいだというクチコミを拡散してもらうことを意識した。新宿に出店した際に最初の2日間は『Cook Do』のブランド名を伏せたのも、純粋に味だけで評価してもらいたかったからであった。
Uber Eatsで想定以上のオーダーを獲得
ポップアップ店舗の出店のほかに、『極麻辣麻婆豆腐用』は販促での新たなチャレンジとしてUber Eatsへの『Cook Do 極麻辣麻婆豆腐飯店』の出店にも取り組んだ。2024年1月24日から1か月ほどの期間限定で出店し、提供エリアは東京のUber Eats高田馬場を起点とした半径3km圏内とした。
メニューは「極麻辣麻婆豆腐定食」(ライス・ザーサイつき/ライス量関係なく780円)のみだが、食べた後の感想をXやInstagramで投稿してくれる人向けの「【SNS投稿限定】極麻辣麻婆豆腐定食」(ライス・ザーサイ・極麻辣麻婆豆腐用[試供品]1個つき/ライス量関係なく780円)も用意。ライス量はいずれも小盛・並盛・大盛・特盛の4つから選べるようにした。
提供エリアを高田馬場にしたのは新宿や池袋といった激辛激戦区にアクセスしやすく激辛のイメージもある麻婆豆腐のニーズが高いと判断されたため。期間中は当初見込みの1400食を超える1500食のオーダーが入った。
取材からわかった『極麻辣麻婆豆腐用』のヒット要因3
1.麻婆豆腐好きにとっての本格的なおいしさだけを徹底して追求
『Cook Do』の合わせ調味料は家族みんなで食べることを想定した味づくりが基本だが、この基本を打破し麻婆豆腐好きな大人が満足することだけを考えて企画・開発。ターゲットを絞り振り切ったので中途半端なものにならなかった。
2.家庭では簡単にできない味わいが手軽にできる
高級四川料理で提供される麻婆豆腐の味わいを、味や香り、辛さの感じられ方が食べた時と食べ終わった時で異なる、と定義。料理店では調理の過程で各種調味料を徐々に投入してつくることで実現できるが、この味わいを合わせ調味料だけで簡単につくれるようにした。
3.クチコミの拡散を狙った販促の重視
いままでの『Cook Do』の麻婆豆腐とは違うことを知ってもらうために、実際に食べた人の生の声が拡散することを重視。話題性のある期間限定のポップアップ店舗やデリバリー店舗を立ち上げてメニューを提供することで、味わいに関するクチコミが生まれやすい環境をつくった。
原材料表示を見るとすぐわかるが『極麻辣麻婆豆腐用』は砂糖を使っていない。甘みがほぼない味わいは辛さを求める麻婆豆腐好きにはたまらないが、これは食べ手を限定することになる。裏を返せば、それだけ大人の満足を考えたということである。
大人を満足させることだけを考えた『極麻辣麻婆豆腐用』は『Cook Do』の新境地を切り開いた。このチャレンジは現時点でうまくいっているといってもいい。同様のコンセプトに基づいた第2弾、第3弾と後に続くものがいろいろ出てきてほしいものである。
製品情報
https://www.ajinomoto.co.jp/cookdo/premiummabo/
文/大沢裕司