ジョブ型雇用とは、職務内容と求めるスキルを限定して採用する雇用形態のことで、欧米では主流とされている。日本企業に根付く「メンバーシップ型雇用」との対比で良く使われる概念だが、その普及に肯定的な人はどれくらいいるのだろうか?
世界11カ国で人材紹介事業を展開するジェイ エイ シー リクルートメント(JAC)はこのほど、中途採用権者(採用側)600人、会社員(人材側)1,000人を対象とした「ジョブ型雇用の今」に関する調査を実施し、その結果を発表した。また、調査結果について同社コンサルタント2名による解説も併せて紹介する。
日本の「ジョブ型雇用」の実態と評価
2020年3月の経団連の発表では、ジョブ型雇用について「特定のポストに空きが生じた際にその職務(ジョブ)・役割を遂行できる能力や資格のある人材を社外から獲得、あるいは社内で公募する雇用形態のこと」としている。
欧米では主流のジョブ型雇用だが、日本では長年、採用後に職務を割り当てる「メンバーシップ型雇用」を選択していた。しかし、専門性の高い職種が増えたことやコロナ禍の影響でリモートワークが普及したことなどから、日本でもジョブ型雇用への注目が高まりつつある。そこで今回は、ジョブ型雇用の企業への導入実態、および普及への中途採用権者(採用側)と会社員(人材側)の評価について調査した。
■日本でのジョブ型雇用の普及に「賛成」の人は、中途採用権者(採用側)73.7%、会社員(人材側)63.8%
日本におけるジョブ型雇用の普及について賛成か反対か意見を聞いたところ、中途採用権者(以下、採用側)の73.7%、会社員(以下、人材側)でも63.8%が「賛成」と回答している[グラフ1]。採用側も人材側も、ジョブ型雇用の普及に賛成する人が大多数を占めている。
■ジョブ型雇用を導入・検討している会社は53.5%
採用側600人に自社でのジョブ型雇用の導入予定を聞くと、19.8%が「既に導入」、33.7%が「導入を検討」と答え、合わせて53.5%がジョブ型雇用を導入・検討している。中でも、従業員数1,000人以上の大企業では、29.5%が「既に導入」、45.0%が「導入を検討」としており、74.5%が導入・検討を行っている[グラフ2]。
■一方で、採用側の69.5%、人材側の67.0%が「日本においてはジョブ型雇用へシフトという号令だけで、実態が伴っていない」(69.5%)と課題も感じている
ジョブ型雇用についての見解を聞くと、採用側は「ジョブ型雇用の推進がグローバル社会では必要」(69.8%)と推進を肯定する姿勢を示す一方で、「日本においてはジョブ型雇用へシフトという号令だけで実態が伴っていない」(69.5%)と感じている。人材側も「日本においてはジョブ型雇用へシフトという号令だけで実態が伴っていない」(67.0%)と感じ、「ジョブ型雇用を適用する場合、人材育成方針を見直す必要がある」(66.9%)と考えている。