1.企業理念
勝てる組織の仕組みを作るために、企業理念の在り方を見直しましょう。
企業理念とは会社の目的です。そして会社を存続させ続けていくには社会性のある目的が必要です。ビジネスモデルなどによって一時的には成長が出来ても、会社を運営する目的がただの利己的なお金儲けであれば、時間の経過とともに社会から求められる有益性とのズレが生じてしまうことで会社は衰退していきます。
また、会社の企業理念が「従業員を幸せにする」という内容になっている場合も注意が必要です。従業員を幸せにしたいという考え自体は素晴らしいと思いますが、それを企業理念として掲げてしまうことで、「従業員からもっと給料を上げてもらえないと幸せになれない」「もっと休みを増やしてくれないと幸せになれない」「自分が幸せになるために仕事の配置転換をして欲しい」等、自分の幸せに会社が合わせるべきだという意識が生まれてしまうことがあるのです。そうすると、会社が社会から必要とされているのか、有益性を発揮できているのか、というポイントからズレた意思決定をしてしまう危険性があります。
会社が社会に必要とされ、有益性を発揮し続けていく事で、それが結果的に従業員を幸せにすることにつながるという考えを持つことが重要です。
2.目標の設定
企業理念を実現させるためには目標を明確に設定する必要があります。
経営理念(目的)は会社運営を方向付けるもの、目的は設定された期限に到達すべき的です。例えば売上は言い換えると社会からどれだけ支持を得られているかを表わす「一つの」指標となります。利益は事業を継続する上で、必要な投資や環境変化の危機に備えるための蓄えです。先ほども述べたように利己的になりお金儲けだけが目的になってはいけませんが、理念を実現させるための目標(売上や利益)は明確に設定する必要があります。そして、従業員にも目標を設定し、全員がそれをクリアすることが会社の目的でもある企業理念に近づいていることを認識できるように運営していく事が重要です。
3.ルール
企業理念を実現させるために従業員が守るべきルールを設定しましょう。
その中でも特に重要なのが姿勢のルールです。姿勢のルールとは、能力や経験等の違いがあっても「できる/できない」が存在しないルールのことであり、企業理念を実現するために設定した最低限のルールを、所属する従業員が合わせる意思があるかどうかを見定めるルールになります。
姿勢のルールの内容は会社によって異なりますが、よく目にするのは「挨拶をする」「時間を守る」「整理整頓する」などです。
姿勢のルールは、理念を実現する組織になる為に所属する従業員が間も得るべき最低限のルールになる為、守れていない従業員へは年齢、経験問わず必ず指摘をして修正させる必要があります。守れない人がいても「まあいいか」「仕方ないか」ではなく根負けせずに言い続けることが重要です。何度指摘をしても守る姿勢が無いようであれば始末書を提出させるなどの毅然とした対応も必要になります。
また、姿勢のルールを守るというのは、所属している従業員がチームに合わせるかどうかを示すバロメーターでもあります。強い組織は戦略を実行する力がある組織です。姿勢のルールを守らずチームに合わせる前提が無ければ、トップや上司が会社を成長させるためにいくら戦略を立てても、自分の価値観で実行するしないを勝手に変えてしまうメンバーになっているという状況であり、戦略の実行力は低下します。
トップであっても時には戦略を間違えることもあります、メンバー全員が実行し結果が悪いのであれば、トップが反省して戦略を変えて軌道修正を繰り返すことで正解に近づいていきます。
4.組織図と役割・責任
組織図は目標にたどり着くためのフォーメーションを決めるものです。
スポーツでも一緒ですが、相手に勝つためにどのようなフォーメーションで挑むかを監督は考えていくのと同様、会社が競合に勝つために、市場に有益性を発揮するためにどのようなフォーメーションで行くかを考えましょう。
そのためには、まず1年間の目標をクリアするにはどんな組織図でどんな役割が必要かを決める必要があります。会社の成長を見据えて人事部門やマーケティング部門も必要になるのか、資金調達を強化するための部門も必要なのか、お客様の声など効果的に情報収集して対策を打てるような品質管理部門も必要なのかなど、いままでこの組織でやってきたから・・・ではなく、目標をクリアするために本当に組織に必要な機能は何かを洗い出してみてください。そして、チームごとの責任者を決め、いつの期限にどのような状態になったら責任者としての役割を果たせたか、そのためにどのような権限が必要なのかも決めていきましょう。
任せるというのは、ただ「任せたぞ」と声をかけるだけではありません。
責任と権限を明確にし、どのタイミングでどんな報告と改善策を実施するのかを約束して実行させることが「任せる」ということなのです。
設定する責任は曖昧ではいけません。「上手く部署をまとめ上げてくれ」「皆を同じ方向に導いて力を発揮できるようにモチベーションを上げてくれ」などという表現では、責任を果たせたかは判定できません。
例えば、「10kmをなるべく早く走れ」という設定があったとき、何分で走ったら早いのかというのは人によってばらつきが出ます。人によって結果に対する評価が分かれてしまうことを、識学では「不完全結果」と呼んでいます。
責任者へは期限と状態を明確に設定しましょう。例えば、〇年〇月〇日までに部署全体の改善実行数を〇件以上にする。結果としてお客様からのクレーム数を〇%減少させるなど、明確な設定をしましょう。
5.評価制度
最後に評価制度です、強い組織は評価が明確です。
何の目標をいつまでにクリアすれば自分が評価されて給与が上がっていくのかが明確なため、会社のメリットと自分自身のメリットを一致させながら工夫し仕事をすることができるからです。評価制度が曖昧になればなるほど、自分なりに頑張っているのになぜ上司は分かってくれないのか?どうやったら給与が上がるのか?迷っている従業員が増えていく危険性があります。これまでは評価が曖昧でも維持できた経験はあるかもしれません、しかし労働人口が減少し、優秀な人はこれまで以上に取り合いになってきます。評価を明確にして優秀な人材が会社で活躍できるような制度があることが強い組織です。
文/株式会社識学 城間 弘二