絶好調だった釣り具メーカーに変化が訪れています。コロナ禍のアウトドアブームで拡大していたフィッシング市場が一服。過熱感が沈静化したことで、各メーカーが反動に見舞われているのです。
国内の釣り人口は緩やかな下降線を描いています。その要因はどこにあるのでしょうか?
数字を見ると釣りブームの終焉は明らか
減収に見舞われた巨大メーカーたち
釣り具のトップメーカーであるダイワ。このブランドを展開しているのが、グローブライドです。2024年3月期のフィッシング事業の売上高は、前期比6.1%減の1127億円。2023年3月期は1割もの増収でした。
ダイワと人気を二分するシマノも、2023年12月期の釣具の売上高は前期比1.6%減の1092億円でした。シマノは2021年12月期に700億円台だった釣具の売上高が、1000億円台まで急伸。しかし、2024年12月期も減収を見込んでおり、1000億円を早くも割り込みそうな勢いで下降しています。
※決算説明資料より筆者作成
シマノは2024年12月期の日本での売上高を310億円と予想しています。これはコロナ禍を迎える前の2019年12月期の322億円を下回るもの。国内は急速に勢いが失われているのがわかります。
市場の一服感も鮮明に
日本釣用品工業会によると、2023年の国内の釣具店などから消費者に販売された見込額は2050億円。2019年の2090億円を下回りました。
※釣用品の国内需要動向調査報告書より筆者作成
コロナ禍でキャンプが人気となったものの、市場が急速に冷え込んでギアを販売するスノーピークやワークマンの業績に打撃を与えたことが世間で騒がれました。大々的に取り上げられることはほとんどありませんが、釣りブームも一過性のもので収束を迎えてしまったのです。
一時は2000万人を超えていたと言われる日本の釣り人口は、520万人ほどにまで縮小しています。
近年、釣りが趣味として定着しない要因は大きく2つあると考えられます。
1つは釣る難易度が高いこと。もう1つは釣り場が少なくなっていることです。
ブラックバスの聖地だった霞ヶ浦も今や「デスレイク」に
釣りに親しんだ人の中には、90年代に起こった空前のブラックバスフィッシングブームを覚えているかもしれません。
木村拓哉さんや反町隆史さんが釣り好きを公言。ブームをけん引した立役者として知られています。
90年代後半には人気テレビ番組「ダウンタウンのガキの使いやあらへんで」において、芸能人釣り選手権という企画が始まり、糸井重里さんや江口洋介さん、奥田民生さんなどがブラックバスフィッシングを楽しむ姿が放送されていました。
この企画で使われていたのが河口湖と山中湖。番組内では比較的簡単に魚を釣り上げていました。90年代前半から中盤にかけては、ブラックバスは釣りやすい魚として知られており、岸からでも十分に狙うことができました。
しかし、釣り人口が増えると、対象となる魚は賢くなってルアーを追わなくなります。傷つき、荒らされることで魚の数そのものも減少します。
現在、ブラックバスを釣るには釣り場の研究を徹底的に行い、魚が多いポイントや釣りやすい道具を揃えなければなりません。初心者が行うにはあまりにもハードルが高いのです。
なお、河口湖や山中湖はブラックバスの放流が認められています。放流したての魚は釣りやすいと有名ですが、放流量は削減しており、山中湖はブラックバス漁協権の返上を表明しました。つまり、将来的に放流をしなくなることを示しています。今後は更に釣りづらくなるでしょう。
かつて関東では人気の釣り場だった霞ヶ浦も、今では「デスレイク」と言われる始末。魚の数そのものが減っていると言われています。
魚が釣れなくなっているのは、何も湖だけの話ではありません。海でもその傾向があります。