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「構いません」という言葉を使ったり、聞いたりしたことはありませんか。とくにかしこまった言葉ではないため、日常生活やビジネスシーンでも耳にすることがあります。
しかし、「構いません」は、相手や状況によっては失礼な表現と受け取られる可能性があるため、注意が必要です。
「構いません」の本来の意味や、敬語として使えるのかなどについて解説します。また、失礼にならない表現もご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
「構いません」とは?意味と使い方をご紹介
「構いません(かまいません)」とは、「構う」という動詞に、丁寧の助動詞「ます」と打ち消しの助動詞「ぬ(ん)」がつながった言葉で、「構う」を丁寧に打ち消すときに使われます。
そもそも「構う」は次の意味を持つ動詞です。
1.気にする、気を遣う
2.他の事柄と関わって、差し支えが生じる
3.世話を焼く、相手をする
4.からかう、ふざける
「構いません」をそれぞれの意味に当てはめると、次のようになります。
1.気にしません、気を遣いません
2.差し支えが生じません
3.世話を焼きません、相手をしません
4.からかいません、ふざけません
それぞれ例文を挙げて、使い方を紹介します。
参考:デジタル大辞泉
■意味1.「気にしません」「気を遣いません」
「気にしません」「気を遣いません」の意味で、「構いません」と表現することが多いです。いくつか会話形式でご紹介します。
A「窓を開けてもいいですか?」
B「構いませんよ」
A「まだ出発の準備ができていないようですね。一緒に待ちましょうか?」
B「先に行ってくださって構いませんよ」
■意味2.他の事柄と関わっても「差し支えが生じません」
他の事柄と関わっても差し支えが生じないときにも、「構いません」と表現することがあります。例文をご紹介します。
・予算がオーバーしそうですが、構いませんか?
・わたしとしては、その案でも構いません。
■意味3.「世話を焼きません」「相手にしません」
世話をすることや相手にすることを、「構う」と表現することがあります。反対に「世話を焼かない」「相手にしない」の意味で、「構わない」や「構いません」と表現することもあります。
・最初は誰彼ともなく世話を焼いていたが、いつの間にか彼女を構わないようになった。
・迷惑ばかりかけられているから、もうあなたのことは構いません。
■意味4.「からかいません」「ふざけません」
自分よりも弱い者や動物などに対して、からかったりふざけたりすることを「構う」と表現することがあります。反対に、弱い者や動物をからかわないときには、「構わない」や「構いません」と表現することもあります。
・足元に猫がじゃれついてきた。本当は一緒に遊びたいが、電車に遅れそうなので構わないでおこう。
・いつもわたしをからかってばかりですよね。もう構わないでください。
「構いません」の「ません」は敬語の一種
「構う」には敬語の意味はありませんが、「ません(ます)」は丁寧の意味を持つ助動詞のため、敬語の一種といえます。なお、敬語には次の種類があります。
・尊敬語(いらっしゃる、おっしゃる、召し上がる、お使いになる など)
・謙譲語(伺う、申し上げる、参る、申す など)
・丁寧語(です、ます、ではありません、ません など)
・美化語(お)
尊敬語とは、相手や第三者の行為や状態、物事などを立てて使う言葉です。たとえば、「召し上がる」や「お使いになる」「お忙しい」などのように使います。
謙譲語には、自分側から相手や第三者に向かう行為や物事に対して、相手や第三者を立てる意味で使う言葉と、単に自分側の行為や物事を丁重に述べる言葉があります。
たとえば、「伺う」や「申し上げる」は相手や第三者がいるときに用いますが、「参る」や「申す」は相手・第三者がいるとは限りません。ただし、いずれの場合も自分側の行為や物事を丁重に述べることで、相対的に相手・第三者を立てるのは同じです。
丁寧語は会話や文章の相手に対して、丁寧に述べるときに用いる表現です。たとえば、「明日は6時に起きる予定だ」というとぞんざいな印象になってしまうかもしれません。日記やメモ、ごく親しい相手なら問題はありませんが、丁寧さが求められる場面では「明日は6時に起きる予定です」というほうがよいでしょう。
美化語は、相手の有無にかかわらず、丁寧な言い回しをするときに用いられる敬語です。酒や名前も間違った表現ではありませんが、「お酒」や「お名前」というほうが、物事が美化されて丁寧な印象になります。
参考:デジタル大辞泉
「構いません」をビジネスで使うときの注意点
「構いません」には丁寧語の「ません」が含まれるため、敬語の一種です。しかし、「構う」には「許可する」といったニュアンスがあり、言葉自体は丁寧でも状況によってはふさわしくない可能性があります。
ビジネスシーンで使うときの注意点をご紹介します。
■目上の人には使わない
あなたの会社の部長が、取引先のAさんと14時に約束をしていたとしましょう。Aさんは約束よりも少し前に来社されましたが、部長はまだ会議中のため、Aさんを少しお待たせすることになったとします。
A「ロビーで座っていても構いませんか?」
あなた「構いませんよ」
これでは、あなたがAさんに座ることを許可したようなニュアンスになり、失礼な印象を与えてしまうかもしれません。「もちろんです。お待たせして申し訳ございません」など、失礼にならない表現を選びましょう。
■メールや手紙には向かない可能性がある
メールや手紙においても同様です。許可をするニュアンスが含まれてしまうことで、読み手に失礼な印象を与えるかもしれません。
たとえば、取引先から明日伺ってよいか打診するメールが来たときは、「明日でも構いません」と返信すると、「(面倒だが)会ってやる」といったニュアンスに受け取られる可能性があります。
「お待ちしております」や「ぜひお越しください」のように、会えるのを楽しみにしているニュアンスを含めるほうがよいでしょう。