2024年も記録的な猛暑が続いており、しばらくは災害級の暑さが続くことが予想される。
帝国データバンクが7月に実施した「TDB景気動向調査」によれば、猛暑による外出控えで商品・サービスの動きが停滞している企業がみられた。一方で、エアコンや飲料などの季節需要の拡大に加え、タクシー利用の増加などによりプラスの影響を受けている企業も複数あり、猛暑による経済効果が出ている。
そこで同社では、猛暑で売り上げが伸びた商品・サービスおよび企業の猛暑対策についてアンケートを実施。結果をグラフと図表にまとめて発表した。
11.4%の企業が「猛暑で売り上げが伸びた商品・サービスがある」
自社が手がける商品・サービスのなかで、2024年の猛暑をきっかけに売り上げが伸びたものはあるか聞いたところ、「ある」が11.4%で、「ない」が80.5%となった。
業界別に売り上げが伸びた商品・サービスが「ある」企業割合をみると、『小売』が30.5%でトップとなり、全体(11.4%)を19.1ポイント上回った。次いで『卸売』(20.1%、全体比+8.7ポイント)が続いた。
■「ガソリン」「オンライン教室」など意外なところにも効果
売り上げが伸びた具体的な商品・サービスは、「エアコン」販売や「空調設備工事」などを含む『エアコン・空調関連』が最も多くあがっていた。
「清涼飲料水」や「アイスクリームの包装資材」などの『食品関連』も、その原料や包装資材から最終製品、さらにスーパーなどで使用される「氷購入専用コイン」まで幅広い商品で売り上げを伸ばした。
また、「空調服」や「タオル」「夏物衣料」などの『衣類関連』のほか、「冷却グッズ」などの『熱中症対策関連』商品の好調や、「熱中症診察」収入が増えたケースもみられた。
加えて、エアコンなどの使用時間・頻度の増加による電気代の上昇や電力需給のひっ迫を受け、「太陽光発電」や「蓄電池」など『省エネ・再エネ関連』が好調。
ほかにも猛暑で車移動が増え、カーエアコン使用時間・頻度の増加による「カーエアコン修理」収入や、燃費の悪化による「ガソリン」売り上げの増加もあげられた。
夏休みを迎え、「プール殺菌消毒剤」や「屋外プール宿泊プラン」など『レジャー・宿泊関連』が好調なケースがみられた。一方、外出控えで「オンラインセミナー」「オンライン教室」収入のほか、「室内遊びのゲーム・ジグソーパズル」の売り上げが伸びた企業もあった。
■企業の約9割が猛暑対策を実施。暑さ対策グッズの支給やクールビズ、設備・備品の充実も上位に
今年の猛暑を受けて、自社で行っている対策(検討含む)について聞いたところ、「健康状態の把握」(47.9%)が5割近くでトップとなった(複数回答、以下同)。
次いで「水分・塩分補給品や冷却商品の支給」(46.1%)、「クールビズの実践(制服や作業服の変更などを含む)」(44.0%)、「扇風機やサーキュレーターの活用」(43.3%)も4割台だった。「熱中症予防、応急処置の学習」(39.0%)が3割台で続き、従業員の健康管理と暑さ対策グッズの支給やクールビズの実践、設備・備品の充実が上位に並ぶ結果となった。
一方で、「休憩時間の追加・延長」(12.3%)や「臨時的な休暇の設定」(4.3%)など稼働時間関連のほか、「時差出勤やフレックスタイム制の導入」(4.7%)および「リモートワークの強化」(3.7%)といった柔軟な働き方の推進を行っている企業の割合は低水準だった。
総じて何らかの対策を行っている企業は89.7%と約9割にのぼった。
調査結果まとめ
本アンケートの結果、2024年の猛暑をきっかけに売り上げが伸びた商品・サービスが「ある」企業は11.4%だった。業界別では川上である『製造』から川下の『サービス』まで幅広く猛暑で売り上げが伸びた企業がみられたが、特に『小売』における割合は3割となり、全体を大きく上回った。
売り上げが伸びた具体的な商品・サービスは『エアコン・空調関連』が最も多く、機器の販売から設置工事まで好調との声が聞かれた。また、清涼飲料水など『食品関連』も目立った。
企業の約9割が何らかの猛暑対策を行っていることも明らかになった。従業員の健康管理と暑さ対策グッズの支給や、クールビズ、設備・備品の充実が上位に並ぶ一方で、稼働時間や働き方の変更に関する項目は低水準だった。
気象庁が8月1日に発表した資料では、「向こう1か月も引き続き全国的に厳しい暑さになる」との見通しが示されている。
今後しばらくは猛暑を商機につなげる動きと、その関連商品・サービスの消費拡大が期待されるとともに、企業における厳格な猛暑対策が求められている。
調査概要
アンケート期間/2024年8月7日~13日
有効回答企業数/1572社
調査方法/インターネット調査
調査機関/株式会社帝国データバンク
構成/清水眞希