ビジネスシーンでよく使うストラテジーの意味をちゃんと理解していますか?混同しやすい言葉や似た言葉を知って、正しい使い方をマスターしましょう。
目次
ビジネスの世界でよく耳にする言葉に『ストラテジー』があります。
しかし、正確な意味や使い方を理解している人は、意外に少ないのではないでしょうか?言葉の定義やよく使われるシーン、混同されがちな『タクティクス』との違いなどを解説します。
「意味」ストラテジーとは
『ストラテジー』はビジネスシーンをはじめ、さまざまな分野で使われている言葉です。まずは言葉の定義や由来、一般的な使用例などを解説します。
■日本語で戦略を意味する
ストラテジーとは、日本語で『戦略』を意味する言葉で、基本的には目的を達成するために必要になる計画や立案を指します。チェスの試合に例えるならば、個別の駒の動かし方ではなく、ゲーム全体を通じて、勝利するための大局的な作戦がストラテジーです。
ビジネスにおいても、日々の業務や個別の戦術ではなく、会社全体の方向性や長期的な成功を見据えた計画がストラテジーに当たります。組織の資源を最適に活用し、競争優位性を確立するための重要な要素です。
■もともとの由来はギリシャ語
ストラテジーという言葉は、英語の『strategy』をそのまま日本語読みしたものですが、古代ギリシャ語の「στρατηγία(stratēgía)」に由来し、「将軍の職務」や「指揮」を意味します。元々は「στρατηγός(stratēgós)」という言葉から派生しており、これは「軍の指揮官」や「将軍」を指しました。
さらに、「στρατός(stratós)」は「軍隊」、「ἄγω(ágō)」は「導く」という意味を持っており、古代ギリシャにおいて将軍は単に兵士を指揮するだけではなく、戦争全体の計画を立て、敵の動きを予測し、味方の強みを最大限に生かす役割がありました。
この概念が時代とともに進化し、現代のビジネスや多くの分野で使われる『ストラテジー』という言葉になったわけです。
■ストラテジーの使い方・例文
ストラテジーの使い方は多岐にわたります。ビジネスの世界では『マーケティングストラテジー』や『成長ストラテジー』といった表現が使われるケースが多く、『戦略』の意味で使われるケースも目立ちます。
- あの企業の顧客獲得ストラテジーは、SNSを活用した情報発信を軸に考えられているようです
- 当社のグローバルストラテジーは、アジア市場への進出を加速することです
このように、ビジネスシーンにおけるストラテジーとは、主に組織の強みを生かし、弱みを補いながら市場環境の変化に適応する道筋を示すものといえるでしょう。
ストラテジーが使われるシーン
ストラテジーの言葉や考え方は、以下のようにIT分野やリハビリ・ゲーム・FXなど、さまざまな分野で日常的に使用されています。それぞれの分野における位置付けや、ストラテジーの重要性を解説します。
■IT
ITの世界でストラテジーといえば、多くの人が『ITストラテジスト』を思い浮かべるでしょう。企業のデジタル戦略や、新しいソフトウエア開発のアプローチを立案する専門家で、近年特に注目されている国家資格です。
企業のIT戦略の策定から、システム開発の統括や運用、システム全体のモニタリングなどを担当する仕事で、DXの担い手としても重宝されています。
ITストラテジストは、経済産業省が管轄する情報処理技術者試験のうち、最も高度な知識が必要とされるレベル4に属する試験です。合格することでIT技術はもちろん、ITを用いたストラテジーの専門家として活躍できるため、多くの人が資格の取得を目指しています。
■リハビリ
リハビリの分野でも、ストラテジーは重要な概念です。主にバランス感覚をトレーニングするため、必要な下半身の機能を高める戦略として、ストラテジーの言葉が使われています。『ankle strategy』や『hip strategy』『stepping strategy』などが代表例です。
効果的なリハビリのストラテジーは、患者のモチベーション維持に寄与し、効率的でスピーディーな回復につながります。患者の回復を最大限に支援するため、個々の状況に応じた長期的な計画が立てられるのが特徴です。
■ゲーム
ゲームの世界でも、ストラテジーが作品のタイトルやジャンルの一つとして、よく使われています。特に、シミュレーションゲームやRPGなどでは、プレイヤーの戦略的思考がゲームクリアに必要な要素となる場合が多く、ストラテジーの概念を全面に出したゲームが少なくありません。
例えば、リアルタイムストラテジーゲームの最高峰とも称される『スタークラフト』や、歴史的な年代や架空世界を舞台とした『トータルウォー』シリーズなどが有名です。
さらに都市の配置や外交政策、技術開発の順序など、長期的な視点で戦略的な意思決定が必要な『シヴィライゼーション』シリーズも、世界中で人気があります。
■FX
FX(外国為替証拠金取引)の世界でも、ストラテジーの考え方は重要です。為替相場の変動を予測し、利益を最大化するためには、多角的な視点からストラテジックな意思決定が必須であり、さまざまな戦略が考案されています。
例えば、トレンドフォロー戦略は、相場の大きな流れに乗って利益を得る方法です。一方、レンジ相場戦略は、相場が一定の範囲内で動く際に有効とされています。
また、リスク管理もFXにおいて重要なストラテジーの一つです。損切りラインの設定や、ポジションサイズの調整など、資金管理を含めた包括的な計画が必要です。
さらに、経済指標の発表に合わせたニュース取引戦略など、市場環境に応じた柔軟な対応も求められます。FXのストラテジーは、個人の資金力やリスク許容度に合わせて、うまく最適化することが重要です。
ストラテジーとタクティクスの違い
ストラテジーと混同されがちな言葉に『タクティクス』があります。いずれも目標の達成に必要な概念ですが、その性質や役割には違いがあるので、ここで押さえておきましょう。
■ストラテジーは大局的
ストラテジーは、大局的な視点から全体の方向性を決定する、重要な概念です。例えば、チェスの試合においてストラテジーとは、相手のキングを取るという最終目標に向けて、個々の駒の動きではなく、ゲーム全体を見渡して計画を立てることに相当します。
また企業経営の場合では、5年後・10年後のビジョンを描き、そこに至るための道筋を考えるのがストラテジーといえるでしょう。新規市場への参入や、競合他社との差別化などが含まれます。
ストラテジーは長期的で包括的な性質を持ち、組織全体に影響を与えます。そのため、経営者や上級管理職が主に担当し、組織の方向性を決定する重要な役割を果たすのが一般的です。
■タクティクスは局所的
タクティクスは局所的な戦術を指す言葉です。ストラテジーが大きな目標を設定するのに対し、タクティクスは、主に目標達成のための具体的な行動計画を指します。
例えば、営業活動において、新規顧客の獲得という大きな目標(ストラテジー)があるとしましょう。その中で、特定の顧客へのアプローチ方法や、商談での交渉術などがタクティクスに当たります。
タクティクスは状況に応じて柔軟に変更が可能で、短期的な成果を重視するのが特徴です。競合他社の動きに、即座に対応するための価格戦略の変更などは、タクティクスの領域といえるでしょう。
ストラテジーとタクティクスは、車の運転に例えると理解しやすくなります。目的地(大きな目標)を決めるのがストラテジーであり、その道中での細かな操作や判断に当たるものが、タクティクスです。多くの分野において、両者をうまく噛み合わせることで、最終的な目標を達成できるようになります。