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休暇を取れない若者たちの不安、職場文化の不健全さを露呈させる「Quiet vacationing」って何?

2024.08.30

Quiet vacationing

 咋今、アメリカのビジネス界にてトレンドとして話題を集めているのが〝quiet vacationing〟(静かな休暇)という概念だ。リモートワークが普及したことで、オフィスや自宅で仕事をしなくとも、たとえばカフェや海外で仕事をすることが会社によっては可能になった。これにより、上司から直接的に仕事の成果をチェックされるような「監視」の文化は薄れた。かつてはオフィスで常に誰かに見られていないか気をつけなければならなかったし、誰が仕事を「サボっている」のかも一目で分かった。しかしリモートワークの場合、Slackなどで社員が「アクティブ」かどうかをログイン状態でチェックしたり、オンラインミーティングへの参加や具体的な仕事のアウトプットで仕事の進捗を測ったりすることが多い。〝Quiet vacationing〟というフレーズにはっきりとした定義はないが、これらの状況を利用して、例えば普段の仕事をこなしながら内緒で海外に旅行したり、何も仕事を進められていなくてもマウスだけは動かして「アクティブ」であるかのように見せかけたりと、要は「働いているふりをしながら、ひっそりと仕事を休む」行為全般を指す。

 この現象の言語化に対して、様々な意見が飛び交っている。「仕事の生産性が落ちていないのであればどこにいようが、何をしていようが関係ないじゃないか」という生産性至上主義の人もいれば、「仕事に対して不誠実だ、率直に有給休暇などを申請して思い切ってバケーションに出かければいいじゃないか」という人もいる。しかし彼らに共通しているのは、アメリカにおけるオフィスカルチャーの「限界」を問題視している点だ。なぜなら、上司に「休みを取りたい」と言い出せないミレニアル世代・Z世代などの若者世代が感じている「恐怖や不安」こそが〝quiet vacationing〟を生みだす根本的問題だからである。有給休暇が用意されているような会社に就職できたとしても、大量解雇が問題になっている今、少しでも休みをとったら周りから遅れてしまう、自分が知らない間にプロジェクトが進行してしまう、怠けていると思われてしまう、このようなことを心配して正式に休暇を申請できないという深刻な問題*が浮き彫りになってきているわけだ。

 本来、どこでも仕事ができるというのは働き方の多様性や柔軟性の高まりという意味で、ポジティブな側面も多くあるはずだ。しかし、テクノロジーによって常につながれるということが労働者を「常に仕事モードであるべき」というプレッシャーに縛りつけていることも現実だ。自分の経験からすると、日本の人や会社と仕事をしていると、深夜や週末でもメールやLINEの返事が返ってくることは多々ある。しかしアメリカでは、そのような「時間外労働」は大変忌み嫌われ、基本的に本来休みの時間に仕事をすることは一般的ではない。だからこそ、このように「堂々と休めない」という風潮が多くの議論を呼び、問題視されているのではないだろうか。上司に嫌われることが怖い、遅れをとることが怖い、印象が悪くなることが怖い、そしてその解決策として隠し事や嘘をつくような労働環境は、はっきり言って健康的ではない。

 しかし、そもそものアメリカの労働文化が決して健康的ではない以上、そのシステムに対抗する労働者の手段として、自分たちのプライベートは自分たちで守り、上司や同僚とはそれをシェアしない、というムーブメントが生まれてしまうのも無理はないのかもしれない。

文/竹田ダニエル

*1170人の米国労働者を対象とした2024年5月の調査によると、アメリカの労働者の78%が有給休暇をすべて取得していないと回答しており、中でもZ世代とミレニアル世代の労働者で最も高い。(出典:Out of Office Culture Report/The Harris Poll Thought Leadership Practice)

竹田ダニエル●竹田ダニエル|竹田ダニエル│1997年生まれ、カリフォルニア出身、在住。「音楽と社会」を結びつける活動を行ない、日本と海外のアーティストをつなげるエージェントとしても活躍する。2022年11月には、文芸誌『群像』での連載をまとめた初の著書『世界と私のA to Z』(講談社)を上梓。そのほか、多くのメディアで執筆している。

Z世代とミレニアル世代の「ウェルワーキング」とは?「DIME Business Trend Summit」で竹田ダニエルとキニマンス塚本ニキが対談!

「DIME Business Trend Summit」 は雑誌『DIME』、WEBメディア『@DIME』が開催するビジネスカンファレンスです。

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様々な業種・職種で活躍する皆様にとって、ビジネストレンドをいち早くキャッチする絶好の場になるはずです。

DIME連載でおなじみの竹田ダニエル×キニマンス塚本ニキが対談!

第2回となる「DIME Business Trend Summit」は、8月30日(金)のリアルイベントと、8月26日(月)~9月8日(日)の開催期間中に視聴できるオンライン配信のハイブリット開催となります。

8月26日(月)から配信予定のオンラインセッションには、DIMEで「Z世代の〈はたらく〉再定義」を連載中のカリフォルニア在住ライター・竹田ダニエルさん、同じく「NIKKIのKINIなる世界」を連載中のラジオパーソナリティ/翻訳家・キニマンス塚本ニキさんの出演が決定!

「Z世代とミレニアル世代のウェルワーキング再定義」をテーマに、各世代のリアルな仕事観を2人が代弁しながら、楽しく働ける社会や職場について熱くディスカッションします。

【竹田ダニエルプロフィール】

1997年生まれ、カリフォルニア出身、在住。「音楽と社会」を結びつける活動を行ない、日本と海外のアーティストをつなげるエージェントとしても活躍する。2022年11月には、文芸誌『群像』での連載をまとめた初の著書『世界と私のA to Z』(講談社)を上梓。そのほか、多くのメディアで執筆している。

【キニマンス塚本ニキプロフィール】

東京都生まれ。9歳まで日本で過ごし、その後15年間ニュージーランドで生活。通訳、翻訳、エッセイ執筆のほか、TBSラジオ『アシタノカレッジ』でパーソナリティーを3年間務めるなど、マルチに活躍する。

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