帝国データバンクは、全国2万7191社を対象とした2024年7月の国内景気動向を調査・集計。結果をグラフや図表にまとめ、景気DIとして発表した。
2024年7月の動向:4か月ぶりに改善
2024年7月の景気DIは前月比0.5ポイント増の43.8となり、4か月ぶりに改善。国内景気は、猛暑の効果やインバウンド消費などがけん引してプラス方向に転じた。
7月は、外国為替レートが1ドル=161円台から149円台まで変動したほか、株価も5000円近く上下するなど、金融市場は大きく揺れた。
しかし、猛暑によるエアコンの特需やアルコール消費の増加など季節需要が急拡大したほか、好調なインバウンド消費もプラス材料となった。さらに、自動車生産の復調や旺盛なDX需要、都市の再開発事業なども好材料。
一方で、消費者の節約志向の高まりが個人消費を抑制したほか、仕入単価の上昇によるコスト負担の増加、人手不足などはマイナス要因だった。
■今後の見通し:横ばいで推移
今後は、インフレ率を上回る賃上げや、政策金利の追加利上げとそれにともなう市場金利の上昇、設備投資への動きなどが注目される。
インバウンド消費のほか、自動車の生産拡大、生成AIの発展を受けたグローバルな半導体需要の増加、さらに人手不足に対するロボットの導入などはプラス材料となる。
一方で、エネルギー価格の高騰や物流コストの増加、家計の節約志向、新型コロナの再拡大、地政学的リスクなどはマイナス材料となる。今後の景気は、総じて回復傾向のみられる企業業績がプラスとなる一方で不確実な要因も多く、横ばいで推移すると見込まれる。
業界別:10業界中7業界で改善、猛暑のなか季節需要が押し上げ
『サービス』や『建設』など10業界中7業界で改善し、悪化は2業界だった。暑さが厳しくなるなか、エアコン特需やアルコール消費など季節需要が押し上げ要因となった。他方、消費者の節約志向や仕入れコストの高騰、人手不足などは悪材料だった。
■『サービス』(50.0)〜前月比0.8ポイント増、4か月ぶりに改善
「飲食店」(同1.3ポイント増)は、堅調なインバウンド需要に加えて、暑い日が続くなかビアホールなどの景況感が大幅に上向いた。
夏休みを迎え4か月ぶりに「娯楽サービス」(同2.9ポイント増)や「旅館・ホテル」(同1.7ポイント増)が改善したほか、夏期講習や自動車教習所などが活況だった「教育サービス」(同3.5ポイント増)は2か月連続で改善となった。
旺盛なDX需要が続いている声の多い「情報サービス」(同横ばい)は2年10カ月連続で50台を維持した。消費者の節約志向、新型コロナの再拡大などマイナス材料もあるが、15業種中11業種が改善した。
■『建設』(46.9)〜前月比0.5ポイント増、2か月連続で改善
「エアコン特需」(電気配線工事)など各地で空調設備の引き合いがあるといった声が寄せられた。
また、大都市圏での再開発工事、再エネ工事などがプラス材料だった。さらに、災害復旧工事や防災工事、老朽化対策なども押し上げ要因となった。
他方、2024年問題に起因する技術者不足や建設コストの上昇などは下押し材料となっている。
■『製造』(39.8)〜前月比4ポイント増、2か月連続で改善
「大手自動車メーカーを中心に堅調」という声が聞かれた「輸送用機械・器具製造」(同2.1ポイント増)は3カ月連続で改善した。
「機械製造」(同1.4ポイント増)は自動車関連の復調が押し上げ要因となり5か月ぶりに40台となった。金型や電子部品の受注に回復の兆しがみえる「鉄鋼・非鉄・鉱業」(同1.0ポイント増)は7か月ぶりに改善した。
他方、低調な国内消費や原材料価格の高止まりなどが悪材料となり、「繊維・繊維製品・服飾品製造」(同1.2ポイント減)は4か月連続で落ち込んだ。
■『小売』(40.3)〜前月比横ばい
同横ばい。猛暑の影響でエアコン商戦が活況な「家電・情報機器小売」(同2.9ポイント増)は2か月連続で改善。
総合スーパーや百貨店などを含む「各種商品小売」(同1.1ポイント増)は2カ月ぶりに上向いた。新規のテナント増やインバウンドを筆頭に人流の増加といった声が聞かれた。
他方、価格の高騰で消費者離れが危惧される「自動車・同部品小売」(同4.2ポイント減)は7か月ぶりに30台へ下落。節約志向による来店頻度や購入点数の減少、嗜好品の消費減退などから「飲食料品小売」(同1.3ポイント減)は4か月連続で悪化となった。