スムーズな入金などを実現するには銀行の機能は必須
パートナー企業と相談しながらユーザーの選択肢を増やす
――決済をベースに、スマートライフ領域の事業を、どのように広げていきたいと考えていますか? 銀行業へ参入するという報道もありますが、考えを聞かせてください。
今、拡大しているのは、決済に関連する金融サービスの分野です。オリックス・クレジット様にグループに入っていただき、ローンや融資のサービスを提供していますし、資産形成のための投資というところでは、マネックス証券様にも弊社グループに参画してもらいました。金融サービスでほかの領域との連携を作ろうと取り組んでいて、成果も上がってきています。こうしたサービスの広がりの中で、やはり銀行の機能は必要だと考えています。
例えば、現在の「d払い」は「dカード」のほか、電話料金に合算するかたちでも、事前にチャージをするかたちでもお使いいただけます。その「チャージ」を行なう場合は、銀行の口座から入金することになります。マネックス証券の投資信託に入金する場合においても銀行の口座が必要です。つまり、こうした入金をいかにシームレスにできるようにするのかと考えると、利便性を増す意味も含めて、銀行の機能が必要なのです。
ほかにも、例えばお客様から通信サービスの料金を支払いいただく際、ほかの金融機関で収納する場合には、我々としてもそこに対するコストがかかります。また、決済の加盟店やパートナー企業様などに対する入金のサイクルも短い方がいいとはいえ、これもほかの金融機関へ入金するには時間やコストがかかります。ならば、そういうコストはできるだけ抑えて、その分、お客様に還元するほうがいい。そのためにも、銀行の必要性は高いのです。
――今、NTTドコモでは、三菱UFJ銀行と提携して「dスマートバンク」を展開されています。NTTドコモで銀行業務を担う場合に、どこかと提携してやっていくのか? それとも傘下に入ってもらうのか? ブランディングも含めて、どういうふうに考えていますか。
そこは、時と場合によりけりで、両者がトレードオフの関係でもないだろうと思っています。例えば「dスマートバンク」は三菱UFJ銀行様とコラボレーションというか、アライアンスでやらせていただいているサービスです。我々としては銀行の機能が必要だと考えていますが、何千万人というお客様全員がそれを使うかというと、そうではありません。自社で銀行を運営する場合と、三菱UFJ銀行様と提携しているやり方と、どっちかしか生き残れない……という話では、もちろんないと思っています。
また、ブランディングの観点でいえば、一緒に提携して業務を遂行する時、別々のブランドが存在したら、利用者にとってわかりにくいかもしれません。
例えば今、マネックス証券様と話しているのは、既存のユーザーにはマネックスブランドが浸透しているということ。一方、これから投資をやってみようというライトなユーザーには、ブランディングも含めて新しいサービスの作り方をすべきなのではないか、ということです。あくまでもお客様のニーズに合わせたサービスの作り方をすること、そして、お客様の選択肢をちゃんと作っておくことが大切で、どちらかでないとダメという話ではありません。
お客様に対して価値を持続的に提供できて、企業全体の成長に資するというような取り組み方なのであれば、その方法は問わないですし、どちらかでないといけないというような、トレードオフで考えるべき話ではないと思っています。