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こんにちは。
弁護士の林 孝匡です。
宇宙イチわかりやすい法律解説を目指しています。
カナ~リ仕事のできない社員が解雇された事件です(以下「Xさん」)。
――会社さん、 仕事できねぇエピソードを1つ教えてください。
会社
「Xさんは、英語の【2】をインターネットで検索していたんです……」
Two!
Xさんは、システムエンジニアの経験者として採用されたのですが、会社は「仕事できなさすぎ……」と判断し解雇しました。Xさんは、解雇に納得できず、訴訟を提起。
英語の「2」を検索していたXさんの運命や、いかに!?
(東京地裁 R5.7.28)
※ 実際の判決を基に構成
※ 判決の本質を損なわないようフランクな会話に変換
※ 争いを一部抜粋して簡略化
登場人物
▼ 会社
とある病院(東京都)
▼ Xさん
・正社員
・SEの経験者として採用される
病院がSEを募集
―― どんな人材を求めていたんですか?
院長
「社内のSEが欲しかったんです。経験者がほしかったので、応募資格の欄には『システム開発経験(目安2年以上)」と書いていました」
―― Xさんが提出した職務経歴書には何と書かれていましたか?
院長
「【現在、社内SEとして解析、基本設計、詳細設計などの業務を担当している】などと書かれていました。私はこれを信用してXさんを採用しました」
採用後、Xさんは、管理部システム開発室に配属されました。
チミ、解雇!
Xさんが働き始めておよそ1か月半後、院長は解雇を言い渡します。
―― 解雇の理由は何ですか?
院長
「明らかなる能力不足です。Xさんに対して『3か月の試用期間が終了した後は本採用しない』と伝えました」
その後、上司は、Xさんに対して「7月末まではJavaの課題を与えるなどして研修の形で勤務していただく」旨を伝えました。
―― Xさん、納得できましたか?
Xさん
「いいえ。その日の夜、上司にメールで『これは事実上の解雇通知であると存じます。ついては本日(6月25日)を最終出社として、以後、7月31日までの給与を規定どおり支給していただきたいと思います』と送信しました」
無断欠勤(15日間)
Xさんは、次の出勤日に職場に行ったのですが、仕事にとりかかることなく、私物を持って帰ろうとしました。これを見た上司は「このまま帰ってしまうと無断欠勤になります」旨伝えましたが、Xさんは聞かずに退社。
―― 翌日は来ましたか?
院長
「いいえ……。Xさんは、それから15日間、無断欠勤を続けました」
上司とのメールのやりとり
Xさんが帰った日の2日後、上司がXさんにメール。「7月31日までは就労の義務があり、現在無断欠勤している状況となっています。欠勤なので、もちろんその分の給与は発生しません。出勤しづらい気持ちは理解できますが、ご自身のスキルアップのためにも残りの期間出勤することをお勧めしますがいかがでしょうか」という内容を送りました。
これに対して、Xさんは「7月のシフトに関して文書での通知もないまま無断欠勤であると主張されることは承服いたしかねます」と返信した。
出勤停止処分
7月21日、会社はXさんを【7日間の出勤停止の懲戒処分】としました。
解雇
7月31日、会社は試用期間が満了したと同時にXさんを解雇。
その後、Xさんが提訴。「解雇は無効」「7日間の出勤停止処分も無効。賃金を支払うべき」と主張しました。