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「会社のサーバー潰すわ」チャットのやり取りがバレて自主退職に追い込まれた社員の末路

2024.08.12

こんにちは。

弁護士の林 孝匡です。

宇宙イチわかりやすい法律解説を目指しています。

提出した退職届を取り消せるのか?という事件を解説します(東京地裁 R4.11.2)

―― 社長、何をブチギレているんですか?

社長
「社員同士でこんなチャットをやりとりしてたんですよ!」


社員A
「会社のサーバー潰すわ」
X1さん
「社内共通から徐々に行なってください」
社員A
「数年で会社が潰れてほしい」
X1さん
「とりあえずオミクロン?ばら撒いてくださいw」


うぉっ。おだやかじゃないですね。ほかにも不適切なチャットがあったため、社長は自主退職を促しました。

社長の求めに応じて社員は退職届を提出したんですが、その後、気持ちが変わったんでしょう。「退職届の提出を強要された」などとして提訴。

裁判で社員は「強迫されたので退職を取り消せるはずだ」などと主張しました。

果たして、退職を取り消せるのか?裁判の行方を見ていきましょう。

※ 実際の判決を基に構成
※ 判決の本質を損なわないようフランクな会話に変換
※ 争いを一部抜粋して簡略化

登場人物

▼ 会社

バッグ・帽子・手袋等の製造および輸出入販売業

退職届を提出したのは以下の2名。

▼ X1さん

商品企画、デザインなどの業務を行なっていた。

▼ X2さん

ECサイトのデザイン・店舗のポップアップ広告の作成などの業務を行なっていた。

チャットでおしゃべり

不適切なおしゃべりが、わんさかでてきました。以下のとおり。

・X1さんとX2さんの会話 A4印刷で559ページ
・X1さんと社員A 131ページ
・X2さんと社員B 407ページ
・X2さんと社員C 454ページ

これは約2か月間でのおしゃべりの量です。しゃべりすぎです。

以下、一部抜粋します。

■ X1さんの場合

以下は、社員Aが辞めようとしていた時にX1さんとチャットでやりとりした内容。

社員A
「会社のサーバー潰すわ」
「あ、それやと他の人もこまるな」
「●●のパソコン潰すわ」
「後、●●家も全部」

X1さん
「社内共通から徐々に行なってください」

社員A
「数年で会社が潰れてほしい」

X1さん
「Aさんが潰してください」
「とりあえずオミクロン? ばら撒いてくださいw」

■ X2さんの場合

自分の部署に配属されることになった同僚にムカついていた模様。なぜならその同僚が転職のための準備をしていると感じたから。

するとX2さんは社員Bへ、同僚への当てつけとして「macブッ壊しとく」「イラレ(画像処理ソフトの略称)消しとくわ」と送信。また、「週次の時、脛蹴っとくわ」「脛けってとんこ(太ももの方言)に踵落とししとく!」と送信。

仕事に無関係なサイトを閲覧

不適切なチャットだけではありません。以下の問題行動も明らかになりました。

■ X1さん

飲食店のウェブサイトやプライベート旅行のための宿泊先候補のウェブサイトを閲覧

■ X2さん

初詣の屋台情報やプライベートな東京ディズニーランド旅行の予約に関するウェブサイトを閲覧。これらのウェブサイトを閲覧する際には、閲覧履歴が確認しづらいシークレットモードを利用していた。

社長がブチギレる

―― 社長、なんでチャットのやりとりに気づいたんですか?

社長
「社員Aが使っているPCで異常なデータ処理を検知したからです」

(社員Aは「会社のサーバー潰すわ」とX1さんにチャットしていた人物)

会社が調査したところ、出てくるわ出てくるわ。上述した大量のプライベートチャットがでてきました。

社員Aはすでに退職届を出しており、2か月後に退職することに決まっていましたが、会社からこの件を指摘され即日退職しました。サヨナラ。

退職届の提出

Xさんたちが退職届を提出した時の様子は、以下のとおりです。

■ X1さん

社長は社会保険労務士とともにX1さんと面談

社長
「会社のサーバーにウイルスを撒くとか、そういったことを言うてる人をデスクに座らすっていうのは、会社としてリスクが高すぎる」

社労士
「自主退職しないのであれば、私的チャットや私的メールを1個1個全部調査して処分することになりますがどうしますか」

最終的にX1さんは、自主退職に応じる旨返答。そして退職届を作成して提出しました。

■ X2さん

X2さんについては、係長・主任が面談。

係長
「問題行動の発覚を受け、X1さんとAさんが退職した。あなたについても同様の問題行為が発覚していると聞いている。あなたが調査対象となって懲戒処分を受ける可能性がある」

主任
「あなたは社長からの信頼を失っている」

最終的にX2さんは退職に応じ、退職届を作成・提出しました。

提訴

X1さんとX2さんは、退職届を提出することになった経緯に納得できなかったのでしょう。裁判を起こしました。両者の主張の概要は「退職届は私たちの自由な意思に基づいて提出されたものではないから退職の意思表示を取り消す。退職の意思表示は錯誤にあたる。退職するよう強迫された」等です。

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