中国政府の政策や中国経済への先行き懸念に加え、米中対立によるサプライチェーンへの影響といった観点から、拠点を中国に集中させることへのリスク=「チャイナリスク」が顕在化。日本企業の中国進出が曲がり角を迎えている。
そんな中、帝国データバンクでは日本企業の「中国進出」動向調査(2024年)を実施。その実情を明らかにした。
本稿では同社リリースを元に調査結果の概要をお伝えする。
中国進出の日本企業、2024年は1万3034社、22年比では328社増
中華人民共和国(以下「中国」、香港・マカオ両特別行政区を除く)に進出する日本企業は、2024年6月時点で1万3034社判明した。
2015年(1万3256社)以降の10年間で222社・1.7%の減少となったほか、過去に最も進出社数が多かった2012年(1万4394社)に比べると1360社・9.4%少なく、対中進出意欲はピークアウトの傾向がみられる。
2010年の調査開始以降で最少となった前回調査の2022年(1万2706社)と比較すると、新たに現地法人や工場拠点、駐在事務所などを開設した「新規参入」が1571社、拠点閉鎖など「撤退・所在不明」が1243社判明し、2年間で328社の純増となった。
日本企業で対中投資マインドに悪化の兆しがみられるなか、コロナ禍で中国ビジネスの見直しが急速に進んだ2020~22年に比べると、総じて日本企業の進出数は微増で推移した。
新規参入と撤退・現況不明の企業を業種別にみると、いずれも「製造業」「卸売業」の割合が高かった。2022年に比べると、新規参入で「建設業」の割合が高まった。
■水面下での中国事業の見直し、進出企業数の増減以上に「活発化」している可能性
中国は安価で豊富な労働力を有し、14億人超の人口規模が生み出す世界最大級のマーケットでもあることから、日本企業でも現地生産・販売拠点を積極的に開設し、強固で複雑なサプライチェーンを日中間で構築してきた。
しかし、近年はコロナ禍で中国当局によるロックダウン政策で長期の操業停止や物流・供給網の寸断などを余儀なくされたほか、円安の影響や中国国内の人件費上昇、環境規制の強化などで「輸出基地」としての魅力は低下してきている。
また、「反スパイ法」の施行による現地従業員の安全確保に関する課題、米国による中国への規制強化なども背景に、外資企業が負う中国事業の「予見できないリスク」が近年急速に高まり、欧米企業などを中心に中国ビジネスを嫌気した「脱・中国」の動きが進んでいる。
日本企業でも、直近2年間で中国に進出する企業数には大きな変動がみられなかったものの、現地法人の統合・整理など、積極的な拡大から事業規模の維持・縮小へと事業戦略を転換させる動きや、ベトナムをはじめとする東南アジア諸国や日本国内に拠点を移設・分散させるサプライチェーン再編の動きも目立ち、企業における中国事業の重要度は低下の兆しをみせている。
水面下での中国事業に対する意欲は、進出企業の増減数以上に減退しているとみられる。