自身の円形脱毛症体験から起業を発起 髪の状態が“自己肯定感”につながる
D:Faviewを立ち上げようと思ったきっかけは。
鈴木:もともと私は、美容室専売品のシャンプーやトリートメント、パーマ材を作るヘアケアのメーカーで商品開発をしていました。キャリアのスタートから「ヘアケアとスキンケア」という形でやってきましたが、その時に、自分自身が円形脱毛症になってしまったのです。
自分が毎日、「何千人・何万人の女性のために!」と思って仕事をしていたにもかかわらず、「自分のことを全然分かっていなかったな」とすごくショックで。ヘアケア商材を作っている私でさえ自分の頭皮や髪の毛のことが分かっていなかった。ということは、一般の方はもっと分からないでしょうし、「トラブルが起きた時に何をしたらいいかも分からないのではないか」と思いました。それが、サービスを始めようと思ったきっかけのひとつです。
D:ご自身の経験から思い立ったのですね。
鈴木:もうひとつ、脱毛症になった時に初めて、髪の毛や頭皮を“美容以外の視点”、つまり“健康”という視点から研究するようになりました。そうすると、女性ホルモンやストレスホルモンが関係していることが分かりました。そういった問題は、化粧品でどうにかなるかというと、ならない。もちろんシャンプーも大事だけれど、「“体の中から、生活の中から何ができるか”ということを、“頭皮や髪の毛から提案する”のは、私にしかできないな」と思い、始めました。
D:オンライン診断を打ち出した時のお客さまの反応は。
鈴木:現在、約700人のお客さまに利用していただいています。メインの年齢層は30代です。お客様によっては、「ずっとこういうのが欲しかった!」という声もいただいています。「病院に行くほどではないけど、美容室に行って相談していいのかわからない」「美容師さんが男性の場合は恥ずかしい」という意見があり、「手軽に相談できるのがうれしい」という声が多いです。
それからFaviewの特徴は、「“このシャンプーを買うため”という動線」ではないところです。例えば肌診断などでもよくあるのが、「診断をしたらこのアイテムを使ってください」と、特定の商品を勧められること。診断が“プロモーションツール”になっていて、「本当に状態を見てもらえているのか」が分からず、お客様にとってはネガティブに感じる方もいらっしゃいます。
Faviewは特定の商品を勧めるのではなく、フラットに診断します。その後、「化粧品の成分だったらあなたにはこれが合う」「あなたの栄養素で足りてないものはこれ」「レシピはこういうものがオススメ」と、ライフスタイルを変えるための提案をするのです。
例えばお客様がスーパーに行った時に、「あ、髪の毛のためにこの食材をプラスしてみよう」と考えられる。ちょっとライフスタイルを変えて、「自分のことを考える時間」を作ってもらうことができる。その点も、「ケア自体が日常の中に取り入れやすい」とお客さまから褒めていただいています。
D:商品そのものを提案するのではなく、「合う成分」や「ライフスタイル」を提案するので、日常生活で応用がきくのですね。
鈴木:そうですね。例えば、ポーラさん、ファンケルさんなど提携している企業の商品をダイレクトにオススメするというのではなく、その前段階で、“その方に合う成分名”をお伝えし、「この成分が入っている商品はこれですよ」とお知らせしています。もしオススメされた商品が合わなかったとしても、ドラッグストアやインターネットで「その成分が入ったもの」を検索できる。そういった知識をつけてもらうことが目的です。
D:頭皮やヘアケアという点だけでなく、「髪を通して自分を知る」ことにつながっていますね。
鈴木:実は、「髪の毛の状態が幸福度に関係している」「髪がいい状態であることが人々の幸せにつながる」「自己肯定感があがる」という論文が実際に出ています。髪の毛がきれいな状態だと、女性のスポーツ選手のパフォーマンスも上がったという論文もあります。髪の毛の状態が「自己肯定感や自己効力感」につながる、「幸福論や仕事の生産性にもつながる」というエビデンスが取れているのです。
髪の毛は体全体で見ても範囲が広いので、化粧を変えるよりも髪の毛を変える方が雰囲気も変わりますよね。美容室でヘアチェンジすると新しい服やリップを買いたくなるように、髪の毛は印象の9割を占めると言われています。
それでも、ほとんどの女性が「ヘアケアで何したらいいか分からない」と言っている。スキンケアに関しては、「この商品とこの商品、どっちがいいかな」と迷うことはあっても「何したらいいのか分からない人」はいません。でも、ヘアケアは漠然とした質問しか届かないので、そもそも知識がないんだろうなと。「自分がどういう状況なのか」をお伝えするだけで著しく変わる人も出てくるので、その変化が見たいというのもあります。
D:頭皮や髪の毛を、ヘアケアプロダクトのみでなく“内側からケア”するというのは、珍しい気もします。