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VTuber事業を手がけるカバーが高い成長率でANYCOLORに肉薄、両社の戦略にみる大きな違いとは?

2024.08.07

高収益体質を維持できる理由

ANYCOLORは市場開拓が巧みな会社。それはファンの属性の変化を見ると明らかです。2022年4月末の段階でANYCOLOR IDは男性が6割に達していました。2024年4月末には女性がおよそ7割を占めるまでになります。ANYCOLOR ID数は126万。2年間で2倍に増加しています。

ANYCOLORは女性ファンを開拓したのです。

にじさんじには葛葉のほか、加賀美ハヤト、剣持刀也、甲斐田晴などの人気タレントが所属しています。2021年にはROF-MAOというユニットを結成してファンの裾野を広げました。

ANYCOLORはグッズの販売などを行うコマースの売上が、全体のおよそ6割を占めています。

利益率が高い所以はここにあります。「ボイス」と呼ばれるデジタルグッズなど、製造原価を抑えた商品で売上を伸ばすことができるためです。

VTuberビギナーをファンとして囲い込み、グッズの販売へと誘導するのがANYCOLORの主要なビジネスモデルだと言えるでしょう。

一時営業利益率が10ポイントも低下

しかし、高すぎる利益率が弱点でもあることが明らかになりつつあります。

2023年12月ににじさんじ最大のイベント「にじさんフェス2023」を開催しました。このとき、イベントチケット単体で見ると大きな赤字に。これは集客に苦戦したというよりも、大型のイベントを実施するコストが膨らんだためでした。

ANYCOLORの2024年4月期3Q単体の営業利益率は32.9%。前年同期間から10.2ポイントもダウンしたのです。

経営側からすると、大型のイベント開催は利益率を落とす主要因となるため、控えたいという意識が働きます。しかし、ファンからすればイベントは大歓迎。ファン育成という視点で見ても、欠かすことができません。

ANYCOLORが顧客の開拓、育成、ファン化のサイクルを増幅させ続けることができれば、成長を維持できるでしょう。しかし、そのサイクルの構築に必要なイベントに、利益率が抑え込まれてしまうという課題が見つかりました。

更に海外展開を進めていたNIJISANJI ENも停滞気味。減収が続いているのです。

ANYCOLORはNIJISANJI ENの成長を今期の計画には織り込んでいないと説明しています。つまり、国内市場に注力するということです。

市場開拓が得意なANYCOLORが、国内でどのような展開を見せるのか注目のポイントとなるでしょう。

カバーが海外市場の開拓に乗り出した意味

カバーの2024年3月期物販の売上比率はおよそ4割。物販比率が低いという弱点がありましたが、小売店での販売強化を図っている最中です。

カバーが展開するホロライブは、宝鐘マリンや兎田ぺこらなどの女性タレントが主体。ファンは男性が中心です。VTuberの黎明期を支えたタレントが多く、コアなファンが多いことが特徴の一つ。そのため、大規模なイベントを定期的に実施してファンサービスを図っています。

ANYCOLORとの利益率の差は、顧客がVTuberビギナーか、コアファンかという違いがベースにあります。

カバーにもホロスターズという男性VTuberグループがありますが、女性ファンを開拓しきることができていません。市場開拓という意味では、ANYCOLORに分があります。

しかし、カバーは海外拠点を設けて市場開拓に乗り出しました。

ホロライブEnglishにはGawr GuraというYouTubeのチャンネル登録数が440万を超える圧倒的な強者がいます。

カバーはマネジメントが得意な会社でもあり、VTuberの不祥事や離脱は少ない会社。海外VTuberでANYCOLORが苦戦した主要因の一つがマネジメント体制でした。

時間はかかるはずですが、丁寧に育てることで市場開拓を進められる可能性はあります。

国内の市場を開拓し続けるのは難しいはずで、市場拡大のペースが緩やかになれば、業績は頭打ちになるかもしれません。

海外展開を成功させられるかどうかは、カバーの行く末を占う上で重要な要素の一つとなります。

文/不破聡

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