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クラフトビールがデザイン学部の教材に!?東京工科大学がオリジナルビール「白蒲田」を開発した理由

2024.08.06

東京大田区の蒲田にある大学が商品開発したビール「白蒲田」が7月にリリースされた。商品開発を担ったのは東京工科大学デザイン学部の教員たち。なぜ教員がクラフトビールを? クラフトビールの教材としてのポテンシャルとは?

デザインプロセス修得のための教材にクラフトビール

「白蒲田」はジャスミン茶やジャスミンの花を副原料に使用したホワイトエール。醸造と販売は大田区でクラフトビールブルワリーを営む株式会社大鵬(たいほう)に委託。出来上がったビールは7月半ば、大鵬が運営するブリューパブRE.beerで限定販売された。RE.beerは東急池上線で蒲田から2駅の、池上駅のすぐ近く。企画から販売までメイド・イン大田区、地元色の濃いクラフトビールになった。

昨今、注目度の高まるクラフトビール。大学生が近隣の生産者や店舗と協力して商品開発する話はちらほらと聞く。しかし、「白蒲田」の商品開発に取り組んだのは学生ではなく、デザイン学部の教員たちだ。

当プロジェクトのディレクションを担当したデザイン学部の小田敬子准教授と、経営企画部の宮本英明さんに話を聞いた。第一の目的は、「デザインプロセス修得のための教育プログラムの構築」だと話す。

宮本さんは元キリンビールの社員で、クラフトビールの製造や販売に関わってきた経歴をもつ。

「オリジナルのビールづくりはパッケージデザインにとどまらず、売り上げまで見据えての販促企画、いわゆる情報デザインまで含む制作物として、学生のいい経験になるのではないか」。そんな宮本さんの提案をもとに、社会で通用するデザイナーの育成を目指している小田准教授ら3人の教員がプロジェクトを開始した。

「学生がリアルなビジネス環境で経験を積み、創造力、実現力、発信力、提案力などの高度なデザインスキルを体験的に身につけられ、また、地元の特産品として新しい製品を開発することは、地域が直面する社会的・環境的な課題と向き合う機会にもなります。実践的なビジネスと教育が協働できるか、その要件をまずは教員が検証し、教育効果を図る必要がありました」と、小田准教授は経緯を説明する。商品コンセプトの立案、味の設計、ネーミングやパッケージのデザインなどに約8ヶ月をかけて販売に至った。

クラフトビールと聞いてイメージしたのは、アメリカ・ニューヨーク州ブルックリン生まれのビールだったと言う。マンハッタンの東南に位置し、かつて治安も決してよくなかったブルックリンに創業したブルックリン・ブルワリーは、世界屈指の人気ブルワリーに成長。それに連動して街の雰囲気が変わり、今では世界から観光客が集まる。町工場が並び、多様な住民が集まる街、そんな特性が蒲田とたしかに重なる。

デザイン学部の教員が作成したクラフトビールづくりのコンセプト。蒲田が発祥とされる羽根つき餃子に注目し、「飲茶的ビール 仲間と語り合う瓶ビール」というコンセプトを抽出。

進取性や多様性を含め、さまざまな要素から導き出されたビールが、副原料にジャスミンの茶と花を使ったホワイトエールだ。ネーミングは街の名前を入れて「白蒲田」とした。クラフトビールのブランディングはデザイン学部を超えて、大学と地元・蒲田とのつながりを深める「大学と地域双方の価値向上を図る試み」でもある。

東京工科大学デザイン学部の小田敬子准教授。醸造元の大鵬とともに何十種類ものビールを試飲しながら商品開発を進めた。

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