【古墳王子の早口コラム】
こんにちは、小学生の頃から古墳の魅力に目覚め、訪ねた古墳は3000基以上の高校生、古墳王子です。
このコラムでは皆さんにディープでマニアックな古墳の魅力が伝わるよう、僕が感じた感動や発見をオタク特有の早口でお伝えしていきます。
さて今回は古墳よりもっともっと昔の時代に大注目! 8年前に箸墓古墳に出会い、自ら周濠に飛び込むが如く古墳沼にどっぷり浸かったワタクシ古墳王子が、実はそれと同じ頃に縄文文化とも出会い、今からおよそ1万3千年前の縄文時代の沼にじわじわ足を踏み入れてしまった話の序章です。
歴史の教科書でもお馴染み、縄文時代の2大国宝とは?!
古墳を探すと縄文に出会ってしまう―博物館で異彩を放つ奇妙な土器
そもそも古墳と恋に落ちるずっと前、僕は絵本を読んで狩猟採集文化に興味を持ち、公園で友達とサバイバルごっこに興じるほどに原始時代に夢中であった。
だから古墳が好きになって博物館を訪れたとき、なんとなく古墳時代の展示にたどり着くたびに目にする、旧石器時代や縄文時代の模型、石を削って作った鏃や石皿なんかもサバイバルごっこの参考資料として観察していた。
そうしているうち、だんだん一緒に並んでいる奇妙な縄文土器の存在が気になってくる。しかしそれはあまりに土っぽくて色が暗いし、可愛いようで失礼ながら不気味なような、そして何より「わけわかんない!」
山梨県立考古博物館(山梨県甲府市)
でもそんなとき東京国立博物館で開催された『JOMONー1万年の美の鼓動』という特別展で、運命ともいえる女神様との出会いがあったのだ!
美しいお姿に思わずうっとり!国宝『縄文のビーナス』
忘れもしない2018年。日本で国宝に指定された縄文時代の土偶たちが勢揃いするとのことで、東京国立博物館の平成館はすごい賑わい。
展示室は観覧者でぎゅうぎゅう詰めで、当時小学5年生だったぼくは、大人たちより低い目線から土偶たちを見上げることになった。
暗い館内でスポットライトを浴び、たくさんの人たちの視線を集める土偶たちのなかで中心にいるのは、長野県棚畑遺跡出土の通称『縄文のビーナス』。
展示ケースの中にいる彼女とパッと目が合ったとき、ぼくの耳、いや脳内に直接声が響いた「わたし、恥ずかしい!!」
……これはなかなか信じてもらえないのだが、僕は確かに縄文のビーナスがみんなにジロジロ見られて恥ずかしいと言っているような声を聞いた気がするのだ。
それからというもの、他にも国宝の土偶や縄文土器など全国から集まった縄文時代の逸品が並んでいたにもかかわらず、頭の中は縄文のビーナスでいっぱい。
でもあんな声を聞いた以上ジロジロ見るのは憚られる。見たいのに見れない、そんなジレンマに苛まれたぼくは、いつか彼女の地元・長野に直接会いに行こうと決意してその場を後にした。
特別展示はほぼ撮影禁止で、当時は小学生でお小遣い制もなく図録も買ってもらえなかったぼくは、無料配布されていた子ども向けのカラーパンフを大切に持ち帰り、家でいつまでも眺めていたことを鮮明に覚えている。
ちなみに縄文時代の土偶は、そのほとんどがバラバラに欠けた状態で出土することが多いのだが、この縄文のビーナスは完全な状態で出土した稀にみるケースで、その奇跡とキラキラ輝く雲母を練り込んだ粘土で成形されたなめらかなシルエットも相まってより魅力的に感じたのだろう。
古墳が一番大好きだけど縄文にも少し心が惹かれた、そんな出来事だった。
国立歴史民俗博物館(千葉県佐倉市)
華麗なる競演!雪降る縄文と星降る縄文
縄文のビーナスに出会って以降、ちょっとばかり縄文時代に興味が出てきたぼくは、古墳巡りのついでに各地の縄文遺跡にも足を運ぶようになった。
千葉の加曽利貝塚や長野県の平出遺跡で奇妙な縄文土器と出会い、SNSでも縄文時代のツイートに反応してみたり。
そんなあるとき、『縄文のビーナス』が新潟県の十日町市博物館にやってくるという情報を得たのである。
十日町といえば教科書にも載っている国宝の火焔形土器が出土した笹山遺跡があるところじゃん、うぉぉぉー! 縄文のビーナスと火焔形土器の華麗なる競演、かなり見たい!!
もういても立ってもいられないぐらいの焦燥感でおかしくなりそうだ。
そんなわけで各方面に根回しし、一路新潟を目指したのである。
圧倒的な形式美に悶絶!魅惑の火焔型土器とは?
新潟県中越地方にある十日町市周辺は、世界有数の豪雪地帯として知られ、奥まった地形で人の往来や土地開発が少なかったからこそ、縄文時代の地層が状態良く残っていたと考えられる。
特に、国宝に一括指定された笹山遺跡の出土遺物は総数57点。附(つけたり)と呼ばれる同遺跡の出土品を合わせると918点にも及び、ひと言で火焔型土器といっても、全て縄文人の手でひとつひとつ作られたオリジナル作品。
大きかったり小さかったり、太っていたりスタイリッシュだったりとそれぞれに個性があるのだ!
十日町市博物館(新潟県十日町市)
例えば一番有名な1号と、発掘を担当された石原先生イチオシの6号を見比べてみましょう。
十日町市博物館(新潟県十日町市)
微妙に6号の胴体部のシルエットがくびれてセクシーなのがおわかりいただけるだろうか?
ちなみにちょっと太った指定番号2はこちらです。
十日町市博物館(新潟県十日町市)
文様が炎みたいだから火焔型土器と命名されているけど、実際のところ縄文人は何を考えてこんなにも複雑な文様の土器を作ったのだろう。できることならタイムスリップして彼らと話をしてみたい。
いよいよ感動の再会!はたして縄文のビーナスは何を語るのか?
ドキドキしながら特別展示室に入ると、一番に彼女が迎えてくれた。3年ぶりに会う縄文のビーナスは思ったより小さくて、それはきっとぼくが成長したからなのだろう。
他には誰もいない展示室でじっくり彼女と向き合っていると「ゆっくり見ていってね」と声をかけてもらった気がした。
十日町市博物館(新潟県十日町市)
とても信じてもらえないだろうし、なんておめでたいヤツなんだと笑われるだろう。
しかし、古墳王子であるぼくがもっと昔の縄文時代に心を奪われたのは一体の素晴らしい土偶との出会いがきっかけで、それからというもの夏は古墳と共に縄文時代を追いかけることとなったのである。
そして今まさに、このコラムは世界遺産認定された北の縄文遺跡を巡りながら書いています!
皆さんもぜひ、古墳時代や弥生時代が来る前の日本列島で人々がどんな暮らしをしていたのか思いを馳せてみませんか?
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文/古墳王子
愛知県在住の現役高校生。小学4年生で古墳の魅力に目覚め、西は鹿児島から東は宮城まで延べ3000基以上の古墳を巡りSNSで情報発信中。古墳だけでなく縄文や弥生時代にも目を向け、日々各地の博物館に出没し先史古代の珍しい逸品を探しています。
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