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睡眠、運動、食事、3つの要素を見直してワーキングメモリーを拡張する方法

2024.09.03

今回は、ワーキングメモリー(作業記憶)と呼ばれる自らのキャパシティーを拡張し、脳の処理能力を向上させる方法を紹介します。

ワーキングメモリーとは、コンピューターでいうところのメモリ(RAM)に相当します。コンピューターの場合、メモリー容量が小さいと処理がカクつきますが、16GBや32GBといった大容量メモリーを積むと、快適に動作します。人間の脳も同じで、ワーキングメモリーの容量を増やすことで、より多くの情報を同時に処理できるようになるのです。

ノーベル経済学賞受賞者のダニエル・カーネマン博士は、著書『ファスト&スロー』の中で、ワーキングメモリーの容量と合理的思考の関係性について言及しています。ワーキングメモリーが大きいほど、直感的な判断に惑わされず、論理的に考えられ、仕事におけるタイパ(タイムパフォーマンス)の向上につながるのです。

ワーキングメモリーを鍛えるためには、以下の3つの要素が重要だと言われています。

(1)十分な睡眠(1日7時間以上)
(2)有酸素運動の習慣化
(3)糖質を抑えた食事

脳科学の研究によると、神経細胞は使うことで死滅してしまうことがわかっています。この神経細胞の死滅を防ぎ、回復を促進するためには、上記の3要素が欠かせません。

ワーキングメモリーの拡張には特により良い睡眠が重要

特に睡眠不足は、記憶領域を縮小させる大きな要因です。徹夜作業をした翌日、前日の作業内容を忘れてしまった経験はありませんか? これは神経細胞が死滅し、回復できていない状態なのです。

睡眠とワーキングメモリーの関係については、多くの研究が重ねられ、様々なことが解明されています。例えば、カリフォルニア大学バークレー校の研究では、睡眠中に脳内で記憶の整理が行なわれることが明らかになりました。十分な睡眠を取ることは、ワーキングメモリーの維持に不可欠なのです。

ある中堅の製造業では、社員の睡眠時間を7時間以上に義務づけることで、生産性と創造性の向上を実現しました。十分な睡眠が、ワーキングメモリーを拡張させた結果といえるでしょう。

マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究チームでは、26時間の睡眠不足が認知機能に及ぼす影響を調査したことがあります。睡眠不足がワーキングメモリーの容量を大幅に低下させ、脳の処理能力を著しく低下させてしまうことがわかったのです。

ウオーキングによる有酸素運動もワーキングメモリーの拡張に効果的

ワーキングメモリーの強化に欠かせないのが、運動です。ここで注意したいのは、筋トレなどの無酸素運動ではなく、ウオーキングやジョギングといった有酸素運動のほうが効果的だということです。

通勤時に1駅分歩いてみるなど、日常生活の中で有酸素運動を取り入れることをおすすめします。ある研究では、1日30分の有酸素運動を週5日行なうことで、ワーキングメモリーが向上したという結果が出ています。

また、有酸素運動が脳に及ぼす影響については、神経科学の分野で多くの研究がなされています。運動により、脳の海馬や前頭前野の容積が増加することが明らかになっているのです。これらの脳領域は、記憶や認知機能に深く関わっています。

大手物流会社では、社内にジムを設置し、社員の運動を奨励しています。社員の健康増進だけでなく、創造性の向上も図ろうとしているのです。脳科学の知見を施策に生かした好例といえるでしょう。

イリノイ大学の研究チームは、高齢者を対象に有酸素運動の効果を検証しました。その結果、ウオーキングを1日1時間、週3回行なうことにより、前頭前野の活性化とワーキングメモリーの向上が見られたといいます。運動は、加齢に伴う認知機能の低下を防ぐ効果もあるのです。

ワーキングメモリーの強化には食事の取り方にも工夫を

脳の活動を鈍らせない食事を心がけることも重要です。例えば、昼食の際は、糖質の大量摂取は控えましょう。そうすることで、血糖値が急激に変動することがなく、昼食後の眠気を抑えることができます。

ブリティッシュコロンビア大学の研究チームは、高血糖が認知機能の低下を招くことを明らかにしました。糖質の取りすぎは、脳の健康に悪影響を及ぼすのです。

ある大手商社では、社員食堂のメニューを糖質制限食に変更したところ、社員の集中力とパフォーマンスが向上したそうです。脳に良い食事は、仕事の効率アップにもつながります。

ハーバード大学の研究では、地中海式ダイエットが認知機能の維持に効果的であることが示されました。オリーブオイルや魚、野菜を中心とした食事は、ワーキングメモリーの強化にも役立つのです。

右脳と左脳の働きを意識すればタイパのさらなる向上を図れる

脳科学の知識として知られているとおり、脳の左右で得意なことは異なります。左脳は集中力と記憶力に関わる論理的思考を司り、右脳は感性や創造性を司ります。

ワーキングメモリーは左脳の機能と関連が深く、起床から7時間程度は集中力と記憶力のピークだと言えます。この時間帯は、重要な企画書の確認や、英語学習、プログラミング、読書など、高い集中力を要する作業に適しています。

逆に、起床から14時間以上経過すると、左脳の疲労に伴って、右脳の活動が活発になります。そのため、この時間帯は、新規事業のアイデア出しやデザイン、企画立案など、創造性が求められる作業に適しているのです。

このような脳の特性は〝人間の進化の過程〟で獲得されたものだと考えられています。右脳と左脳を効率的に使い分けることで、生存確率を高めてきたのでしょう。現代人もまた、脳のメカニズムを理解し、上手に活用することが求められます。

私たちにとって、脳をトレーニングすることは容易ではありません。しかし、睡眠・運動・食事という3つの要素に注目すれば、脳の健康を維持できるはずです。ワーキングメモリーを鍛えることは、仕事の効率や創造性を高めるための第一歩なのです。

集中力と記憶力が求められる作業は午前中に、創造性と発想力が必要な仕事は午後に行なう。そんなふうに、脳のリズムに合わせた〝仕事の棲み分け〟を実践してみてはいかがでしょうか。そのような心がけによってワーキングメモリーが強化された脳は、きっとあなたの仕事力を高めてくれるはずです。

文/越川 慎司
全員が専業禁止、週休3日の株式会社クロスリバーの代表取締役社長。800社超の働き方改革を支援している。仕事のタイパを上げるオンライン講座の実施は年間400件以上。自著29冊、最新刊『最速で結果を出す超タイパ仕事術』(小学館)が好評発売中。

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